- リカバリー詐欺とは、詐欺被害に遭った人に被害金を取り戻すと持ちかけ、着手金や手数料の名目で二度目の金を奪う二次被害型の詐欺だ。
- 狙われるのは取り返したいという焦りであり、弁護士・調査会社・公的機関の職員を名乗る人物が回収の前払い費用を要求して被害が発生する。
- 先に金を求める救済話は存在しないと知っておけば、一度目の被害額を上回る二度目の損失を止められる。
この4コマで起きているのは、投資詐欺の被害者が回収業者を装う相手に再び金を渡すという典型的な二次被害です。男性が疑いを持たなかった理由は単純で、相手が被害の金額も送金先も正確に把握していたからでしょう。自分の被害を詳細に知っている相手は味方に見えるという錯覚こそが、リカバリー詐欺の入口になります。
法的に見ると、報酬を得る目的で他人の債権回収や示談交渉を業として行えるのは弁護士等に限られ、無資格者が被害金回収を請け負う行為は弁護士法に触れる可能性があります。加えて、回収できる見込みがないと分かっていながら着手金を受け取れば詐欺罪の問題にもなります。そもそも正規の窓口が先に大金を求める場面はまずありません。
防ぐ手立ては地味です。連絡が来た時点で相手の氏名と事務所名を控え、日弁連の弁護士検索や消費者ホットライン188で裏を取りましょう。供託金や着手金という名目が出たら、その場で返事をせず一度電話を切ってください。確認に使った数分が、二度目の百万円を守ります。
なぜリカバリー詐欺は一度騙された人を正確に狙い撃ちできるのか?
リカバリー詐欺を理解する近道は、正規の被害回復と並べて見ることでしょう。正規のルートでは、まず警察への被害申告と金融機関への口座凍結依頼があり、そこから振り込め詐欺救済法による分配手続や、弁護士への正式な委任へ進みます。いずれも入口は相手からの連絡ではなく、被害者側からの申し出です。ところがリカバリー詐欺は逆向きに始まります。ある日突然、電話やSNSのダイレクトメッセージが届き、あなたの被害を把握している、回収の目処が立っている、と告げてくるのです。
この逆流こそが最大の異常点になります。金融庁も、被害を回復してあげるので別の商品を買ってほしいという勧誘や、公的機関の職員を名乗る電話を詐欺的な投資勧誘の典型例として挙げています。SNS投資詐欺で資金を失った人ほど、口座番号や送金履歴という決定的な情報を相手側に渡してしまっているため、名簿としての価値が高い。犯罪グループの間で売買される標的情報は、住所氏名だけの古い名簿から、いくら失ったかまで記載された精密なリストへと変質しています。
実行役の肩書きも進化しています。日本弁護士連合会は2026年3月、SNS上で偽造した身分証明書を示して実在の弁護士になりすまし、被害救済の名目で接触する手口について注意を呼びかけました。画像は加工できるため、身分証の写真が本物に見えても本人とは限りません。弁護士なりすましは示談金詐欺の道具でしたが、いまや被害者救済の看板としても使われているわけです。同じ構図は公的機関装いにも現れます。国民生活センターは、相談者以外に同センターから電話をかけることはなく、返金手続きに費用を求めることもないと明言しています。
被害の規模も背景として押さえておきたいところです。警察庁の暫定値によると、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274億7,000万円に上りました。前年から件数で約48.7%、被害額で約46.3%の増加です。これだけの人数が短期間で生まれれば、回収希望者という巨大な市場ができあがります。二次被害は感情の問題ではなく、需要と供給の構造として発生していると言えます。
正規の被害回復とリカバリー詐欺はどこが違うのか
リカバリー詐欺と正規の手続を分ける決定的な差は、金の流れる向きと順序にあります。次の表で列を見比べてください。
| 比較項目 | 正規の被害回復手続 | リカバリー詐欺 |
|---|---|---|
| 最初の接触 | 被害者から警察・消費生活センター・弁護士へ相談する | 相手から電話やSNSで突然連絡が来る |
| 相手の特定 | 事務所の住所・登録番号・固定電話が明示され、検索で確認できる | 連絡先が携帯番号やメッセージアプリのみで、住所が曖昧 |
| 費用の説明 | 委任契約書と報酬基準を書面で交付し、内訳を説明する | 着手金・供託金などの名目で即日入金を求める |
| 回収の見通し | 相手方の資力次第で回収不能もあり得ると事前に説明する | 全額返ってくる、確実に取り戻せると言い切る |
| 公的機関の関与 | 職員が金銭を要求することはない | 金融庁や国民生活センターの職員を名乗って費用を求める |
| 判断の時間 | 持ち帰って検討することを認める | 今日中、枠が埋まる、といった期限を切る |
リカバリー詐欺の自己診断チェックリスト
リカバリー詐欺かどうかは、次の5問で粗く判定できます。1つでも当てはまるなら、その場での送金と個人情報の追加提供をやめてください。
| 質問 | 該当したら意味すること |
|---|---|
| 相談していないのに、過去の被害額を正確に言い当てられた | 被害者名簿が流通している可能性が高い |
| 回収の前に費用を払うよう求められた | 先払い型の二次被害の典型パターン |
| やり取りがメッセージアプリだけで完結している | 事務所の実在確認を避けるための設計 |
| 身分証や委任状の画像は届くが、原本や書面が来ない | 画像は加工が容易で本人確認の根拠にならない |
| 家族や公的窓口に相談しないよう言われた | 第三者の確認を封じる誘導が入っている |
正規の相談にいくらかかるのかという目安
リカバリー詐欺に流れてしまう人の多くは、正規の相談が高いと思い込んでいます。実際の入口はもっと安く、無料の窓口も用意されています。
| 制度・窓口 | 費用の目安 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン188 | 通話料のみ(相談自体は無料) | 契約トラブルか詐欺かの切り分け、初動の助言 |
| 警察相談専用電話#9110 | 通話料のみ(相談自体は無料) | 被害申告の前段階の相談、緊急性の判断 |
| 法テラスの民事法律扶助 | 資力要件を満たせば法律相談が無料、弁護士費用は立替払いの対象 | 弁護士に正式依頼したいが手持ちがない場合 |
| 金融機関への口座凍結依頼 | 手数料なし | 振込先が国内口座の場合の初動 |
| 被害回復給付金の支給申請 | 申請自体に費用はかからない | 犯人側の財産が刑事手続で没収された場合 |
典型的なフレーズ・文脈

あなたが3月に送金した248万円、送金先の口座を凍結できました。返還手続きに入れますが、裁判所への供託金として先に30万円だけご用意いただく必要があります。
投資詐欺の被害から数か月が過ぎ、警察の捜査も進展が見えない時期に、被害額と送金月を正確に言い当てる形でかけられる電話です。数字が合っていることで信用させ、供託金という耳慣れない名目で前払いを引き出します。

続いて注意喚起です。日本弁護士連合会は、SNS上で偽造した身分証を示し、実在の弁護士になりすまして被害救済を持ちかける事例が報告されているとして、画像だけで本人と判断しないよう呼びかけています。
夕方のニュース番組で、業界団体が公表した注意喚起をそのまま伝える場面です。事件の続報ではなく、被害が起きる前の予防情報として短く扱われる形をとっています。

もう払ってしまったなら、まず振込明細とやり取りの画面を消さずに保存してください。送金直後であれば金融機関に組戻しを依頼できる場合がありますし、警察への申告と188への相談は同時に進めて構いません。
消費生活センターの相談員が、二次被害に気づいた直後の来談者に対して伝える初動の助言です。予防ではなく発覚後の被害拡大防止に焦点を当て、証拠の保全と窓口の並行利用を促しています。
この用語と一緒に知っておきたい用語
| 用語 | この記事との関連 |
|---|---|
| SNS投資詐欺 | リカバリー詐欺が標的にする一次被害の最大の供給源になっている |
| 返金保証詐欺 | 返金という言葉を使う点は共通するが、狙う相手と発生する場面が異なる |
| 弁護士なりすまし | 被害回復を持ちかける実行役が最も多く名乗る肩書きである |
| 標的情報 | 被害者の氏名と被害額が記載された名簿が二次被害の起点になる |
| 振り込め詐欺救済法 | 費用を払わずに被害金の分配を受けられる正規のルートを定めている |
困ったときの相談窓口
被害に遭った場合や不安を感じた場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188(局番なし) | 最寄りの消費生活センター等の受付時間に準じる(年末年始を除き土日祝も対応窓口あり) | 契約トラブル・悪質商法全般、二次被害の相談 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日8時30分〜17時15分(各都道府県警により異なる/緊急時は110番) | 詐欺被害の相談、被害申告の進め方 |
| 法テラス・サポートダイヤル | 0570-078374 | 平日9時〜21時、土曜9時〜17時(祝日・年末年始を除く) | 法制度の情報提供、無料法律相談や弁護士費用立替の案内 |
| 金融サービス利用者相談室 | 0570-016811 | 平日10時〜17時(祝日・年末年始を除く) | 投資・金融商品に関する詐欺的勧誘の相談 |
【まとめ】3つのポイント
- 被害届は名簿に化ける:一次被害で相手に渡った送金記録が、そのまま二度目の標的リストとして再利用される構造がリカバリー詐欺の土台です
- 取り返したい気持ちが判断力を奪う:損を取り戻したいという心理は、通常なら疑うはずの前払い要求を合理的な投資に見せかけてしまいます
- 先に金を求める救済は存在しない:着手金・供託金・手数料といった言葉が出た時点で電話を切り、188と#9110、日弁連の弁護士検索で裏を取ってください
よくある質問
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Qリカバリー詐欺で払ってしまったお金は取り戻せますか?
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A
送金から時間が経っていなければ、可能性は残ります。振込先が国内の銀行口座であれば、金融機関に連絡して組戻しや口座凍結を依頼でき、凍結が間に合えば振り込め詐欺救済法に基づく分配手続の対象になり得ます。ただし暗号資産や海外送金、コード決済を使わされた場合は追跡が難しく、回収率は大きく下がるのが実情です。まずは振込明細とやり取りの記録を残したまま、警察と消費生活センターの双方に相談してください。
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Q被害金を取り戻せると連絡してきた相手が本物か、どう確認すればいいですか?
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A
相手から送られてきた番号には、絶対にかけ直さないでください。弁護士を名乗るなら、日本弁護士連合会のサイトの弁護士検索で氏名と所属会を照合し、事務所の公式サイトに載っている代表電話へ自分から連絡します。日弁連は、偽造した身分証の画像を示す手口が報告されているとして、画像だけで本人と判断しないよう注意を呼びかけています。公的機関を名乗る場合も同様で、国民生活センターは相談者以外に電話をかけることはなく、返金手続きに費用を求めることもないと明示しています。
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Qなぜ相手は自分が詐欺に遭ったことを知っているのですか?
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A
情報源は、一次被害のときにあなた自身が渡した情報です。氏名・住所・電話番号に加え、送金額や振込日まで犯行グループの手元に残っており、それが被害者名簿として同種のグループへ渡ることで、二度目の接触が可能になります。捜査機関が把握しているはずだから本物だろう、という推測は成り立ちません。むしろ、あなたの被害を詳しく知っている相手ほど、一次被害と地続きの関係者である疑いが濃いと考えるべきでしょう。
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Qリカバリー詐欺と返金保証詐欺との違いは何ですか?
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A
分かれ目は、被害者がどの時点で狙われるかにあります。返金保証詐欺は、商品やサービスを売る場面で全額返金保証などの安心材料を掲げ、実際には条件を盾に返金しない商法トラブルであり、標的はこれから買う人です。対してリカバリー詐欺は、すでに詐欺被害に遭った人だけを選んで接触し、被害金の回収を口実に着手金や手数料を追加で奪う二次被害型にあたります。前者は購入前の勧誘、後者は被害後の救済話という違いを押さえておけば、混同することはありません。
【出典】参考URL
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/attention.html :金融庁による詐欺的な投資勧誘への注意喚起。被害を回復してあげるという勧誘、および公的機関の職員を名乗る勧誘への警告の根拠
https://www.nichibenren.or.jp/news/year/2026/260318.html :日本弁護士連合会による、偽造身分証を用いて実在の弁護士をかたる詐欺への注意喚起。被害救済名目で行われる場合があるという記述の根拠
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/kokusen_katari.html :国民生活センターをかたる電話・メールへの注意喚起。相談者以外に電話しない、返金手続きに費用を求めないという記述の根拠
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260213/03.html :警察庁による令和7年の特殊詐欺およびSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況(暫定値)。SNS型投資詐欺の認知件数9,538件・被害額1,274.7億円の根拠
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180125_1.html :国民生活センターによる原野商法の二次被害トラブルの公表資料。被害後に再び狙われる二次被害という類型の根拠


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