- 令和7年(2025年)の予兆電話は331,653件で前年比71.4%増という異常な伸びを記録した
- 背景にあるのはニセ警察詐欺で、令和7年の認知件数11,014件・被害額1,005.0億円を叩き出している
- 金が動く前の探りの電話が鳴っている以上、気づくチャンスは被害の手前に存在するということだ
この4コマで最も重要なのは、1コマ目の電話がまだ何の被害も生んでいないという点です。住所や家族構成、利用している金融機関を聞き出すだけの電話は、その時点では犯罪の実害として数えられません。しかし警察庁はこれを予兆電話という統計項目として把握しており、特殊詐欺の直前に発生する下調べ行為として位置づけています。
被害者が騙されるのは、2本目の電話で相手が自分の情報を握っているからです。家族構成や口座の話が通じる相手を、人はつい本物だと錯覚してしまいます。実際には1本目で答えた内容が2本目の説得力を作っているだけで、この構造を知っていれば最初の電話で名乗らないという一手だけで連鎖は途切れます。
法的にも、この段階でお金を渡してしまうと取り返しがつきにくくなります。振り込め詐欺救済法による被害回復の手続きはありますが、口座から資金が抜かれた後では戻る保証はありません。だからこそ、統計に表れた予兆電話の急増は、被害の前に立ち止まる機会が増えているという読み方もできる数字なのです。
知らない番号から電話がかかってきて、住所や家族の話を聞かれた経験はありませんか。名乗るほどのことでもないと思って答えてしまった、というのはよくある話です。
実はその電話、警察庁の統計にきちんと数えられています。令和7年(2025年)だけで331,653件です。
この記事では、特殊詐欺の前触れとして記録される予兆電話の最新データを整理し、電話が鳴った瞬間に何をすればいいのかまで落とし込みます。自分だけでなく、実家の親に何と伝えるべきかを考える材料にもなるはずです。
予兆電話とは何か|令和7年は331,653件で急増
予兆電話とは、特殊詐欺の犯人が下調べのためにかける不審な電話です。令和7年(2025年)は331,653件で前年比71.4%増でした。
この数字は確定値で、前年からの増加は138,178件です。警察庁の定義では、電話の相手方に対して住所や氏名、資産、利用金融機関等を探るなどの特殊詐欺が疑われる電話を予兆電話としています。
ポイントは、この段階ではまだ金銭被害が発生していないことです。詐欺グループが本番の電話に向けて対象者を品定めしている状態を、統計として可視化した指標だと考えると分かりやすくなります。
| 項目 | 令和7年(確定値) | 前年比 |
|---|---|---|
| 予兆電話 件数 | 331,653件 | +138,178件(+71.4%) |
| 1か月当たり平均 | 27,638件 | +11,515件(+71.4%) |
1か月当たり27,638件という数字は、それ自体では実感が湧きにくいかもしれません。仮に1か月を30日として割ると、1日あたり約921件(27,638÷30)という計算になります。
読者が警戒すべきはここです。全国のどこかで毎日それだけの探りの電話が鳴っているということは、自分や実家に1本かかってきても何ら不思議ではないという意味になります。

被害額のニュースは大きく報じられるが、その手前で鳴っている探りの電話の数はほとんど知られていない。
数字が示しているのは恐怖ではない。気づく機会が想像よりも多いという事実だ。
なぜ予兆電話は急増したのか|ニセ警察詐欺との関係
予兆電話急増の背景にあるのが、ニセ警察詐欺の急伸です。令和7年のニセ警察詐欺は認知件数11,014件、被害額1,005.0億円で、特殊詐欺の総認知件数に占める割合は39.6%に達しました。
令和7年の特殊詐欺全体は、総認知件数27,832件(前年比+6,789件、+32.3%)、被害総額1,423.1億円(前年比+704.3億円、+98.0%)です。被害総額がほぼ倍増しているという事実は、それだけで異常事態と言えるでしょう。
| 区分(令和7年・確定値) | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 特殊詐欺 全体 | 27,832件 | 1,423.1億円 |
| ニセ警察詐欺 | 11,014件 | 1,005.0億円 |
| うちオレオレ詐欺に含まれる分 | 10,859件 | ― |
オレオレ詐欺の認知件数14,489件のうち、ニセ警察詐欺は10,859件で74.9%を占めています。つまり今のオレオレ詐欺は、その4分の3が警察を名乗る手口だということになります。
入口は今も電話が78.8%
詐欺グループが最初に接触してくるツールは、令和7年も電話が78.8%(前年比-0.2ポイント)で圧倒的多数です。SNSやメッセージアプリの話題が増えても、実際の入口は依然として電話口にあります。
| 当初接触ツール(令和7年・確定値) | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|
| 電話 | 78.8% | -0.2ポイント |
| メール・メッセージ | 13.8% | +3.8ポイント |
| ポップアップ表示 | 4.6% | -4.2ポイント |
| はがき・封書等 | 2.7% | +0.5ポイント |
この構成比から導かれる警戒ポイントはシンプルです。電話への対処法を1つ身につけるだけで、入口の8割近くをカバーできるという計算になります。
過去5年の推移と地域差|都会だけの話ではない
予兆電話は令和2年から令和7年まで同一区分で集計されており、経年比較が可能な数少ない系列です。令和2年(2020年)の98,472件から令和7年の331,653件まで、6年間で一貫して増加しています。
| 年 | 予兆電話 件数 |
|---|---|
| 令和2年(2020年) | 98,472件 |
| 令和3年(2021年) | 100,515件 |
| 令和4年(2022年) | 120,444件 |
| 令和5年(2023年) | 131,868件 |
| 令和6年(2024年) | 193,475件 |
| 令和7年(2025年) | 331,653件 |
令和5年から令和6年、そして令和7年にかけての立ち上がり方が明らかに急です。令和2年と令和7年を比べると約3.4倍(331,653÷98,472)という水準になります。
都道府県別で見ると人口比に近い分布
人口上位8都府県の件数を並べると、東京都が51,649件で最多です。ただし注目すべきは伸び率のほうで、福岡県が+166.2%と突出しています。
| 都府県 | 件数(令和7年・確定値) | 前年比 |
|---|---|---|
| 東京都 | 51,649件 | +15,934件(+44.6%) |
| 埼玉県 | 24,001件 | +6,440件(+36.7%) |
| 大阪府 | 19,935件 | +8,097件(+68.4%) |
| 千葉県 | 19,805件 | +8,812件(+80.2%) |
| 愛知県 | 18,760件 | +5,744件(+44.1%) |
| 兵庫県 | 16,366件 | +7,362件(+81.8%) |
| 神奈川県 | 13,275件 | +5,577件(+72.4%) |
| 福岡県 | 8,577件 | +5,355件(+166.2%) |
この8都府県の合計が全国の予兆電話に占める割合は52.0%(前年比-4.4ポイント)でした。一方、同じ8都府県の人口が全人口に占める割合は51.4%です。
2つの数字がほぼ一致するということは、予兆電話が都市部に偏っているわけではないという意味になります。むしろ割合が前年から4.4ポイント下がっている点を見ると、地方への広がりが進んでいると読むほうが自然でしょう。
電話が鳴った瞬間にできる4つの自衛行動
予兆電話の段階で気づければ、金銭被害はまだ発生していません。ここが被害を防ぐ最後にして最良のタイミングになります。
1. 知らない番号・非通知には出ない、出ても即答しない
入口の78.8%が電話である以上、出ないという選択がそのまま最大の防御になります。仕事の都合で出ざるを得ない場合でも、住所や家族構成、口座の話にはその場で答えないでください。
2. 警察や金融庁を名乗って資産を聞かれたら切る
警察庁は、警察官が電話で捜査対象となっているなどと伝えることはありません、それは、詐欺です、と明確に注意喚起しています。名乗りが警察であること自体が、むしろ疑うべきサインだと考えて差し支えありません。
3. 教えられた番号には折り返さず#9110へ
警察庁の呼びかけは、電話を切って警察相談専用電話(#9110)に御相談ください、相手方から教示された番号には、決して折り返さないでください、というものです。折り返し先が詐欺グループの手元にある以上、そこへ電話をかけた時点で相手のシナリオに乗ることになります。
4. 電話に出ない仕組みを家庭に作る
警察庁は防犯機能付き電話の導入も呼びかけています。着信前の自動音声警告、通話の自動録音、非通知電話の自動拒否といった機能があり、自治体によっては補助制度への言及もあります。

実家の親に注意しろとだけ伝えても、その電話は防げない。
留守番電話を常時オンにする、それだけでも入口は狭まる。仕組みで守るほうが確実だ。
次に確認すべき数字はどこか
次回の公表で見るべきは、予兆電話の件数が令和7年の水準からさらに伸びるのか、それとも頭打ちになるのかという一点です。予兆電話は同一区分で継続集計されているため、トレンドの判断材料として使いやすい指標になります。
もう1つはニセ警察詐欺の件数です。令和7年から統計区分として計上が始まったため、令和8年(2026年)の数字が出てはじめて、この手口が定着したのか一過性だったのかを比較できるようになります。
まとめ|被害の手前で鳴っている電話に気づけ
- 令和7年の予兆電話は331,653件・前年比71.4%増で、詐欺グループが今まさに対象者を探している証拠だ
- 押し上げているのはニセ警察詐欺(認知件数11,014件・被害額1,005.0億円)であり、入口の78.8%は今も電話である
- 警察を名乗る電話で資産を聞かれたら切って#9110へ相談する、教えられた番号には折り返さない、これが最低ラインだ
次のアクションとして、今日のうちに実家の固定電話を留守番電話設定に変えてもらうよう連絡してみてください。1本の電話で、入口の大半を塞げます。
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よくある質問
-
Q予兆電話を受けただけでも警察に相談していいですか
-
A
被害が出ていなくても相談して構いません。警察庁は不審な電話を受けた場合、電話を切って警察相談専用電話(#9110)に相談するよう呼びかけています。予兆電話は警察が把握して統計に計上している項目でもあり、情報を届ける意味があります。
-
Q今回の数字は暫定値ですか、確定値ですか
-
A
本記事の数値はすべて確定値です。警察庁が令和8年(2026年)5月22日に公表した令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等についてという資料に基づいています。暫定値ではないため、後日大きく修正される性質のものではありません。
-
Qニセ警察詐欺の件数は前年と比べられますか
-
A
単純な前年比較はできません。ニセ警察詐欺と副業詐欺は令和7年(2025年)から個別の統計区分として計上が始まったためです。一方で予兆電話は令和2年から同一区分で集計されているため、経年比較が可能です。
-
Q地方に住んでいれば予兆電話は少ないのでしょうか
-
A
人口比で見るとほとんど差がありません。人口上位8都府県の予兆電話は全体の52.0%で、同じ8都府県の人口比率51.4%とほぼ同水準です。しかも8都府県のシェアは前年から4.4ポイント下がっており、福岡県は前年比+166.2%と大きく伸びています。
-
Q防犯機能付き電話にはどれくらい効果がありますか
-
A
効果を示す具体的な数値は警察庁の該当ページに公表されていません。ただし機能としては、着信前の自動音声警告、通話の自動録音、非通知電話の自動拒否などがあり、警察庁が導入を呼びかけています。自治体の補助制度については、金額や条件を各自治体にご確認ください。
出典・参考URL
- https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値・2026年5月22日公表)|警察庁
- https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250325/01.html 警察に偽装した電話番号に注意!|警察庁 SOS47特殊詐欺対策ページ
- https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/security-phone/ 防犯機能付き電話の導入|警察庁 SOS47特殊詐欺対策ページ
- https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110_9110.html 警察相談ダイヤル#9110|警視庁


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