- サイト内検索スパムとは、企業や官公庁の公式サイトの検索機能を悪用し、詐欺ではありませんという文言を検索結果に表示させる手口だ。
- 不安になって相手の名前を調べるという自衛のための検索行動を狙い撃ちにし、信頼できるドメイン上に安心材料を置くことで送金の最後のためらいを消しにいく。
- 検索結果の一行で判断せず、ページを開いてURLと本文を確かめ、最後は公的な登録リストで裏を取れば、この仕掛けは効かなくなる。
この事例で最初に壊れたのは、確かめるという行動そのものです。男性は送金前にきちんと立ち止まり、グループ名を検索しました。判断材料として公式ドメインを選んだ点も、通常なら妥当な行動だと言えます。ところが詐欺グループは、その公式ドメインという信用を借りるために、サイト内検索の入力欄へ肯定的な文言を打ち込み、生成されたURLを外部にばらまいていました。
本当の問題は、画面に出ていたものが公式サイトの主張ではなく、誰かが入力した文字の再表示にすぎなかった点にあります。検索結果の一行だけを眺めていると、この差はまず見えません。ページを開き、URLに検索クエリが付いていないか、本文が記事の体裁を取っているかを確かめる。それだけで見抜ける仕掛けでした。
そもそも投資の相手が信用できるかどうかを、検索エンジンの表示で決めるべきではありません。金融商品取引業の登録があるかどうかは、金融庁が公開するリストで確認できます。肯定的な情報が出てきたときこそ出所を一段深く追うという手順を身につけていれば、増額送金の直前で足を止められた可能性は十分にあったでしょう。
なぜサイト内検索スパムは公式サイトを味方につけられるのか?
サイト内検索スパムは、多くのサイトに標準で備わっている検索機能の仕様を、そのまま踏み台にします。流れを分解すると、第一段階は入力です。攻撃者は企業や官公庁のサイト内検索窓に、グループ名と一緒に詐欺ではありません、儲かりました、信頼できますといった文言を打ち込みます。第二段階は生成です。多くのサイトでは検索語がURLの末尾にそのまま乗り、開いたページ上部にも入力した文字が再表示されます。第三段階は拡散で、こうして出来上がったURLを外部の掲示板やブログに大量に貼り、検索エンジンのクローラーに拾わせます。第四段階が回収であり、被害者がグループ名を検索したとき、正規ドメインを名乗る安心材料が検索結果に並ぶという結果に至ります。日本経済新聞の報道によれば、警視庁はこうしたURLを大量に作成する手口を確認し、詐欺グループから作業を請け負う業者が中国語で宣伝している例も複数把握しているとされています。SEOポイズニングが攻撃者の自前サイトを検索上位へ押し上げる手法だとすれば、こちらは他人の信用を無断で借りる手法という位置づけになります。
この手口が刺さる理由は、人が第三者の評価を信じやすい性質にあります。詐欺グループ本人が大丈夫だと言っても疑いますが、無関係に見える公式ドメイン上に同じ趣旨の文字列があると、裏が取れたと錯覚してしまう。社会的証明と呼ばれる心理が働き、さらに送金してしまった人ほど、自分の判断は正しかったという情報を優先的に拾う確証バイアスが重なります。ここで誤解してほしくないのは、検索機能を悪用された企業や官公庁の側は加害者ではないという点です。攻撃者が入力した文字を仕様どおり画面に返しているだけであり、いわば看板を勝手に書き換えられた被害者側に立ちます。ただし、検索結果ページを検索エンジンに登録させない設定や、入力文字をそのまま表示しない実装で被害の拡大を抑えられる余地は残ります。防げたのに防がれなかった穴が、そのままSNS投資詐欺の集金装置に転用されているのが実態です。
SNS型投資詐欺の被害はどこまで膨らんでいるのか
サイト内検索スパムが仕上げの一手として使われているSNS型投資詐欺は、被害規模が急拡大しています。警察庁が令和8年5月22日に公表した確定値によると、令和7年の状況は次のとおりです。
| 区分 | 認知件数 | 被害額 | 被害額の前年比 |
|---|---|---|---|
| SNS型投資詐欺 | 9,523件 | 1,288.0億円 | +416.9億円(+47.9%) |
| SNS型ロマンス詐欺 | 5,645件 | 546.4億円 | +145.5億円(+36.3%) |
| 両者の合計 | 15,168件 | 1,834.3億円 | +562.4億円(+44.2%) |
注目すべきは検挙の数字です。同じ資料で、SNS型投資詐欺の検挙件数は369件と示されています。認知9,523件に対して検挙369件という比率は、捕まえて取り戻す道が細いことを意味します。1件あたりに直せば被害額はおよそ1,352万円であり、生活資金や退職金がまとめて消える水準だと言えるでしょう。捕まえる側の速度が追いつかない以上、送金する前の数分間で自分を止める仕組みを持つことが、現実的な唯一の防波堤になります。
正規の記事ページとサイト内検索スパムのページはここが違う
見分け方は難しくありません。判断に迷ったら、次の5点を上から順に確認してください。
| 見るところ | 公式サイトが自ら書いた記事 | サイト内検索スパムのページ |
|---|---|---|
| URLの形 | news や info など記事用のパスで終わる | ?s= ?q= search= など検索クエリが付く |
| ページ本文 | 見出しと本文がある | 入力された文字の再掲と件数表示のみ |
| ページタイトル | 記事の題名になっている | 入力文言と検索結果という語の組み合わせ |
| 更新日・執筆部署 | 日付や担当部署の記載がある | 記載がない |
| サイト内の導線 | メニューやパンくずから辿れる | どこからも辿り着けない |
スマートフォンだとURLの末尾が省略されて見えないことがあります。その場合はアドレスバーをタップして全文を表示させるか、ページを共有メニューからコピーして、メモ帳に貼り付けて確認するのが確実です。この手順はタイポスクワッティングのようなURL偽装を見抜くときにも同じように使えます。判断に迷うURLは怪しいURLチェッカーで機械的に洗うのも手でしょう。
サイト内検索スパムはAIの回答まで汚染するのか?
サイト内検索スパムの影響は、人間が読む検索結果だけにとどまりません。警視庁サイバー犯罪対策課は2026年7月24日に公式SNSで注意喚起を行い、検索結果をもとにしたAI要約でも詐欺ではありませんと表示され、被害者に詐欺ではないと誤認させる狙いがあるとみられると指摘したと報じられています。AIによる要約は、検索エンジンが拾った上位のページを材料にして答えを組み立てます。材料が汚染されていれば、出力も汚染される。しかもAIの回答は情報源のURLが折り畳まれて表示されることが多く、読者は元ページの正体を確認しないまま結論だけを受け取ってしまいます。
AI経由の誘導は、この手口とは別ルートでも起きています。TechTargetジャパンの報道によれば、トレンドマイクロが2026年2月のテレメトリを分析したところ、生成AIがまともなコンテンツかどうかを判断できず、422件の詐欺的なWebサイトへ利用者を誘導した事例が確認されました。正規サイトのURLを受け取りながら、別のサイトとしてそのURLを提示してしまう挙動も報告されています。こうした現象は生成AI検索ポイズニングと呼ばれ、AIチャットボット詐欺のように偽のAIを使う手口とは根が違います。使っているのは本物のAIであり、汚れているのは食べさせられた情報の側だという点が重要です。AIに聞いて確かめるという習慣が広がるほど、汚染の見返りは大きくなるという見立てが成り立ちます。
金融庁のリストで登録の有無を確認する手順
検索結果とAI要約が両方とも汚染され得るなら、最後の砦は名簿の突き合わせになります。金融商品取引業者は登録制であり、登録の有無は公的なリストで誰でも確認できます。次の順で進めてください。
- 金融庁の金融事業者一括検索機能(https://search.fsa.go.jp/)を開き、勧誘してきた業者名や関連会社名を入力する。この機能は令和8年1月30日から運用が始まり、業種をまたいで一括検索できます。
- 詳細を確かめたい場合は、免許・許可・登録等を受けている事業者一覧(https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html)の該当業種の一覧で、商号・登録番号・所在地が勧誘内容と一致するかを照合する。
- 名前が見つからないときは、無登録で金融商品取引業を行う者の名称等(https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku.html)に掲載されていないかを確認する。
- 登録があった場合でも安心しきらず、公式サイトのURLと代表電話番号を一覧の記載と突き合わせる。名前だけを騙る偽取引所は、実在業者の商号を流用してくることがあります。
この照合には数分しかかかりません。相手から今日中に入金しないと枠が埋まると急かされている状況こそ、この数分を確保すべき場面です。検索結果は誰でも書き換えを試みられますが、登録リストは書き換えられません。
典型的なフレーズ・文脈

心配なら私たちの名前をそのまま検索してみてください。役所や大手企業のサイトにも、詐欺ではないとちゃんと出ているはずです。まさか公式サイトが嘘を載せるとは思わないでしょう。
追加入金をためらった相手に対し、自分の口では説得せず、検索という第三者の権威に判断を委ねさせる場面で使われます。自分で調べさせるほど信用が増すという逆説を計算した誘導です。

警視庁は、投資詐欺グループが企業や官公庁のサイト内検索機能を悪用し、検索結果に肯定的な文言を表示させる手口を確認したと発表しました。検索結果だけを過信しないよう呼びかけています。
2026年7月24日に警視庁サイバー犯罪対策課が公式SNSで行った注意喚起を、報道番組が短く伝える場面を想定した表現です。手口の詳細な方法までは公表されていません。

投資の相手を調べるときは、業者名だけで検索しないでください。業者名に行政処分や金融庁や被害という語を足して検索し、最後は金融庁の登録リストで名前と登録番号を確かめる。この順番を崩さなければ、仕込まれた検索結果に当たっても判断は揺れません。
警視庁サイバー犯罪対策課のようにサイバー犯罪捜査を担当する部署の警察官が、送金前に相談へ来た人や、地域の防犯講話の場で、被害を出す前の裏取り手順として説明する内容です。
この用語と一緒に知っておきたい用語
| 用語 | この記事との関連 |
|---|---|
| SEOポイズニング | 検索結果を汚染する攻撃の総称であり、サイト内検索スパムはその一種に位置づけられます。 |
| 生成AI検索ポイズニング | 生成AIが正当なコンテンツかどうかを判断できず詐欺サイトへ誘導してしまう現象で、サイト内検索スパムとは別ルートでAIの信頼性を悪用する手口です。 |
| AIチャットボット詐欺 | 偽のAIを使う詐欺であり、本物のAIが汚染情報を拾う本記事の現象との違いを理解できます。 |
| SNS投資詐欺 | サイト内検索スパムを使って被害者の疑念を消しにいく、実行主体そのものの手口です。 |
| クロスサイトスクリプティング | 入力した文字がページにそのまま反映される仕様を突く点で、技術的な発想が共通しています。 |
困ったときの相談窓口
被害に遭った場合や不安を感じた場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日午前8時30分〜午後5時15分(各都道府県警により異なる) | 投資詐欺やサイバー犯罪の被害相談、被害届の出し方の案内 |
| 消費者ホットライン | 188 | 最寄りの消費生活センター等の開所時間による | 投資勧誘や契約トラブル全般の相談、専門機関への取り次ぎ |
| 金融サービス利用者相談室 | 0570-016811(IP電話は03-5251-6811) | 平日10時〜17時 | 金融商品や投資業者に関する相談、登録の有無に関する照会 |
【まとめ】3つのポイント
- 他人の看板を勝手に借りる手口:サイト内検索スパムは偽サイトを作らず、公式サイトの検索窓に文字を打ち込んで安心材料を量産する。踏み台にされた企業や官公庁は加害者ではなく被害者側です。
- 自衛行動そのものが標的:不安になって検索する、AIに聞いて確かめるという慎重な行動を先回りして待ち伏せる設計であり、正規ドメインを見て安心する習慣が逆に利用されます。
- 検索で終わらせず名簿で終わらせる:URLに検索クエリが付いていないかを見て、業者名に行政処分や金融庁を足して調べ直し、最後は金融庁の登録リストで登録番号まで突き合わせてください。
よくある質問
-
Qサイト内検索スパムに使われた企業や役所は、詐欺に加担していることになりますか?
-
A
踏み台にされた側であり、加担しているわけではありません。攻撃者が検索窓へ打ち込んだ文字を、サイトが仕様どおり画面に返しているだけです。ただし、検索結果ページを検索エンジンに登録させない設定や、入力文字をそのまま見出しに出さない実装によって、被害の拡大を抑える余地は残されています。
-
Q検索したら公式サイトに詐欺ではありませんと出ていました。どう確かめればいいですか?
-
A
まずそのページを開き、アドレスバーのURL全文を表示させてください。?s= や ?q= や search= が含まれていれば、それは記事ではなく検索結果の画面です。次に本文を見て、入力された文言の再掲と件数表示しかなければ、公式サイトが書いた文章ではないと判断できます。そのうえで業者名に行政処分や被害という語を足して検索し直しましょう。
-
QAIに聞けば、その業者が安全かどうか判断してもらえますか?
-
A
422件という数字が答えになります。TechTargetジャパンの報道によると、トレンドマイクロが2026年2月のテレメトリを調べたところ、生成AIがコンテンツの正当性を判断できず、422件の詐欺的なWebサイトへ利用者を誘導した事例が確認されました。AIの回答は検索結果を材料にしているため、材料が汚染されていれば結論も汚れます。判断の入口として使うのは構いませんが、結論を委ねる相手にはできません。
-
Qサイト内検索スパムとSEOポイズニングとの違いは何ですか?
-
A
使うドメインが自前か他人かで分かれます。SEOポイズニングは攻撃者が自分で用意した偽サイトを検索上位へ押し上げる手法で、ドメインをよく見れば正体に気づける余地があります。対してサイト内検索スパムは、他人の正規ドメインに文字列を生成させて信用ごと借りる手法であり、ドメインを見る対策が通用しません。大枠ではサイト内検索スパムはSEOポイズニングの一種であり、悪用対象が自前のサイトから第三者のサイトへ移った形だと整理できます。
【出典】参考URL
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf:令和7年のSNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺の認知件数、被害額、検挙件数の根拠(警察庁 広報資料 令和8年5月22日)
https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260130/20260130.html:金融事業者一括検索機能の運用開始日と概要の根拠(金融庁)
https://search.fsa.go.jp/:登録の有無を業種横断で確認できる金融事業者一括検索機能の入口(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html:免許・許可・登録等を受けている事業者一覧の確認先(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku.html:無登録で金融商品取引業を行う者の公表リストの確認先(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html:金融サービス利用者相談室の電話番号と受付時間の根拠(金融庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/johokoukai_portal/mokuroku/honbu.html:注意喚起を行った担当部署の正式名称(サイバー犯罪対策課)を確認した警視庁本部所属一覧
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD175510X10C26A7000000/:サイト内検索スパムの具体的な手口と、警視庁が把握した状況に関する報道
https://news.infoseek.co.jp/article/itmedia_news_20260727076/:警視庁の注意喚起の内容と、AI要約が汚染される仕組みに関する報道
https://otakuma.net/archives/2026072605.html:注意喚起の日付と担当課、推奨される確認手順に関する報道
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2604/11/news02.html:生成AI経由で422件の危険サイトへ誘導された調査結果に関する報道


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