- 名誉毀損罪とは、公然と具体的な事実を示して人の社会的評価を下げる行為に、最大3年の拘禁刑または50万円以下の罰金を科す刑法230条の犯罪で、真実であっても成立する。
- SNSへの誹謗中傷投稿や匿名掲示板への書き込みが、「公然と事実を摘示」した時点で被害者の告訴なしには起訴できない親告罪になり、被害者が早期に動くことが告訴の鍵になる。
- これを知っておけば、自分がSNSで誹謗中傷を受けたとき、発信者情報開示と刑事告訴を組み合わせて反撃できる根拠を持てる。
【深掘り】これだけは知っておけ
名誉毀損罪は刑法230条に規定され、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」と定めています。成立要件は、①公然と(不特定または多数の人が知りうる状況)、②事実を摘示し(具体的な事実を示す)、③人の名誉を毀損すること(社会的評価を下げること)の3点です。「公然」はSNSの鍵なしアカウント・掲示板・動画投稿が典型ですが、少人数グループへの投稿でも伝播の可能性があれば公然とみなされるケースがあります。
名誉毀損罪は親告罪のため、被害者自身の告訴がなければ起訴されません。告訴期間は犯人を知った日から6か月以内(刑訴法235条)で、これを過ぎると告訴できなくなります。また、名誉毀損罪と並行して、民事の不法行為(民法709条・710条)に基づく損害賠償請求も可能で、精神的苦痛への慰謝料も認められた判例があります。SNS上の匿名投稿者に対しては、まずプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求で投稿者のIPアドレス・契約者情報を取得し、身元特定後に告訴・損害賠償請求という流れが一般的です。
詐欺被害との交点として覚えておきたいのは、詐欺業者・悪質業者を名指しで告発するケースです。被害の事実を公表することは公益目的として230条の2の免責が認められやすいですが、証拠のない憶測や私的情報を加えると名誉毀損罪が成立するリスクがあります。告発する場合は、自分が直接経験した事実のみを書き、証拠(領収書・メッセージ)を保全しておくことが自衛につながります。被害を受けた場合は、投稿のスクリーンショットを保全した上で、弁護士への相談と並行して警察への告訴状提出(被害者の最寄り警察署)を検討してください。
名誉毀損罪・侮辱罪・信用毀損罪の比較
| 罪名 | 事実の摘示 | 主な対象 | 法定刑 |
|---|---|---|---|
| 名誉毀損罪(230条) | 必要 | 個人・法人の社会的評価 | 3年以下の拘禁刑・50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪(231条) | 不要 | 個人の主観的名誉感情 | 1年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金等 |
| 信用毀損罪(233条) | 必要(虚偽に限る) | 経済的信用(支払能力・品質) | 3年以下の拘禁刑・50万円以下の罰金 |
典型的なフレーズ・文脈

あいつが付き合っていた頃に浮気していたこと、職場での問題行動、全部ここに書いてやる。証拠もあるから名誉毀損にはならない。どうせ本当のことなんだから。
「真実だから罪にならない」という誤解に基づく典型的な発言です。名誉毀損罪は事実であっても成立します。公益目的のない個人的な暴露は刑事責任を問われます。

警察は、SNSに元交際相手の氏名と私生活の詳細を投稿し、名誉を傷つけたとして名誉毀損罪の疑いで男性を書類送検しました。被害者が告訴から6か月以内に手続きを取ったことで立件が可能になりました。
SNS上の名誉毀損が書類送検された事例を伝える報道番組のキャスターを想定した表現です。親告罪のため告訴期間の重要性も示しています。

名誉毀損は親告罪なので、被害者ご本人が告訴しないと起訴できません。犯人を知った日から6か月が告訴期限です。まず投稿のスクリーンショットを保全し、弁護士に依頼してプラットフォームへの発信者情報開示請求から始めましょう。
弁護士が、名誉毀損の被害者に告訴期間と発信者特定の手順を最初に案内する相談場面を想定しています。
困ったときの相談窓口
SNSやネットでの名誉毀損被害に遭った場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる) | 名誉毀損・誹謗中傷被害の相談 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 0570-078374 | 平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00 | 告訴・損害賠償の法的相談 |
| IPA安心相談窓口 | 03-5978-7509 | 平日 10:00〜12:00・13:30〜17:00 | ネット上の誹謗中傷・サイバー被害の相談 |
【まとめ】3つのポイント
- 真実でも罪になる:名誉毀損罪は「事実の有無にかかわらず」成立します。公益目的のない暴露・リベンジ投稿は刑事責任を問われます。
- 告訴期間は6か月:親告罪なので被害者本人の告訴が必要です。犯人を知った日から6か月を過ぎると告訴ができなくなります。
- スクリーンショットと弁護士が武器:証拠を保全して弁護士へ。発信者情報開示→身元特定→刑事告訴+損害賠償の流れが名誉毀損対処の王道です。
よくある質問
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QSNSで誹謗中傷を受けました。相手を特定するにはどうすれば良いですか?
-
A
まず投稿のスクリーンショットとURLを保全し、弁護士に依頼してプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行います。SNSプラットフォームに対してIPアドレスの開示を求め、次にそのIPアドレスからインターネット接続業者(ISP)に対して契約者情報の開示を求める二段階手続きが一般的です。特定後に警察への告訴と損害賠償請求が可能になります。
-
Q誹謗中傷された投稿がすでに削除された場合、告訴は難しくなりますか?
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A
難しくなりますが、不可能ではありません。投稿が残っているうちにスクリーンショットを保全しておくことが最重要で、削除されると発信者情報開示に必要なIPアドレスが取得困難になります。プラットフォーム側にはアクセスログの一定期間保存義務があるため、弁護士経由で速やかに開示請求を行うことが期間切れを防ぐ鍵です。
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Q会社や法人も名誉毀損罪の被害者になれますか?
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A
なれます。判例上、法人(会社・団体)も名誉毀損罪の被害者になりえます。ただし法人の場合は「経済的信用」への打撃が大きければ信用毀損罪(233条)が適用されることも多く、状況によって適用罪名が変わります。法人が原告になる民事の損害賠償請求と組み合わせる方法も有効です。
-
Q名誉毀損罪と侮辱罪との違いは何ですか?
-
A
具体的な事実を示すかどうかで分かれます。名誉毀損罪は、公然と具体的な事実を摘示して社会的評価を下げる行為に適用され、法定刑は最大3年の拘禁刑です。侮辱罪は、事実を示さず単に侮辱的な言葉を公然と使う場合に適用され、2022年の厳罰化後は最大1年の拘禁刑です。バカ・クズといった抽象的な悪口は侮辱罪、前科があるなどの事実を示した攻撃は名誉毀損罪の可能性があります。
この用語と一緒に知っておきたい用語
| 用語 | この記事との関連 |
|---|---|
| 信用情報機関 | 信用情報機関とは、個人のローン・クレジットカードの契約・返済・延滞状況などを記録・管理し、金融機関が審査のときに照会する第三者機関のことで、日本にはCIC・JICC・KSCの3機関がある。 |
| 信用毀損罪・業務妨害罪 | 信用毀損罪・業務妨害罪とは、虚偽の情報を流したり偽計・威力を使ったりして人や企業の信用を傷つけたり業務を妨害したりする行為に、最大3年の拘禁刑を科す刑法233条・234条の犯罪だ。 |
| 消費者ホットライン | 消費者ホットライン(188)とは、悪質商法・詐欺・製品事故など消費者トラブルで困ったときに、最寄りの消費生活センターや相談窓口を案内してくれる消費者庁が設置した全国共通3桁番号だ。 |
| 債務不履行 | 債務不履行とは、契約で約束したことを正当な理由なく守らない行為のことで、約束を破った側は損害賠償や契約解除を求められる立場になる。 |
この手口が実際に使われた事件
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| M資金詐欺 | M資金詐欺とは、 GHQが日本から接収した秘密資金が今も極秘に運用されている と騙り、選ばれた経営者にのみ数千億円規模の融資を行うと持ちかけ、仲介手数料を詐取する手口である |
| アンソニー・ウィナー | 民主党の下院議員だったアンソニー・ウィナーは、2011年にTwitterで 不適切な自撮り写真 を複数の女性に送っていたことが発覚し、議員を辞職した |
| リンダ・ハザード | リンダ・ハザードは医学の正規の学位を持たないまま 飢餓療法 を提唱し、薄いスープとオレンジだけの食事と数時間に及ぶ浣腸で患者を治療すると称した |
【出典】参考URL
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5875/:刑法230条の条文・名誉毀損罪の成立要件・侮辱罪との比較の根拠
https://roudou-sos.jp/sns-defamation/:刑法230条・710条・SNS上の名誉毀損事例の根拠
https://www.machida-bengoshi.kokoro-group.com/useful/others/meiyokison-taisho/:親告罪・告訴期限・230条の2(違法性阻却)の根拠
https://tangram.gr.jp/blog/detail/20260325125005/:2022年侮辱罪厳罰化・告訴時効3年への延長の根拠


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