- 弁護士会照会とは、弁護士が受任した事件の証拠収集のために、弁護士会を通じて官公庁や企業などに必要事項の報告を求めることができる弁護士法23条の2に基づく制度だ。
- 詐欺の加害者の住所・資産・口座情報が不明なとき、弁護士が弁護士会に申し出ることで、通常なら開示されない情報を法的根拠をもとに照会できる強力な情報収集手段だ。
- これを知っておけば、「加害者がどこにいるか分からない」「資産を隠している」という詐欺被害でも、弁護士を通じて情報を引き出す手段があると知れる。
【深掘り】これだけは知っておけ
弁護士法23条の2は、弁護士が受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができると定めています。弁護士会はその申し出の必要性・相当性を審査した上で、照会先(官公庁・金融機関・企業等)に照会文書を送付します。照会先には法律上の報告義務があると解されており、正当な理由がなければ回答を拒絶できないというのが通説です。ただし最高裁2016年判決では、照会に応じなかった場合でも弁護士会への直接的な損害賠償責任は否定されており、あくまで任意の協力に委ねられている面もあります。
照会できる情報の範囲は広く、住所・勤務先・電話番号・金融機関の口座情報・取引履歴・車両登録情報・不動産の登記情報・出入国記録など、さまざまな情報が対象になります。詐欺被害の場面では、加害者が行方をくらましている場合に住所確認、資産を隠している場合に口座・不動産情報の特定、などに活用されます。弁護士は受任した事件においてのみ申し出ができるため、個人が直接利用することはできません。弁護士に依頼した後に「弁護士会照会を使って情報を集めてほしい」と相談するのが利用方法です。
弁護士会照会は詐欺被害の証拠収集だけでなく、発信者情報開示請求(ネット誹謗中傷での投稿者特定)・相続調査・離婚事件での財産隠し調査など幅広い場面で活用されています。被害者の立場で活用するためには、まず弁護士に事件を依頼することが大前提です。費用面が心配な場合は法テラスの審査を受ければ弁護士費用の立替制度が使えます。詐欺被害に遭ったら、まず#9110で相談し、民事での回収も視野に入れながら弁護士への相談を検討してください。
弁護士会照会で入手できる主な情報
| 照会先 | 入手できる主な情報 |
|---|---|
| 市区町村・住基ネット | 住所・転居先 |
| 金融機関 | 口座の存在・残高・取引履歴 |
| 運輸局 | 車両登録情報(所有者・住所) |
| 法務局 | 不動産登記(所有者・住所) |
| SNSプラットフォーム | アカウントの登録情報(発信者特定) |
典型的なフレーズ・文脈

住所も教えてないし、電話も解約した。どこにいるか分からなければ訴えようがないだろう。個人情報保護法があるんだから、俺の住所を勝手に調べることはできない。
所在不明で逃げ切れると思い込む詐欺師の発言です。弁護士会照会を使えば、弁護士が法的根拠に基づき住所・口座情報を照会できます。個人情報保護法は弁護士会照会の妨げになりません。

弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会は、弁護士が受任した事件の証拠収集のために、行政機関や金融機関などに情報提供を求めることができる制度です。個人情報保護法の例外として認められており、詐欺事件での加害者特定にも活用されています。
弁護士会照会制度の仕組みを法律情報番組のキャスターが解説する場面を想定した表現です。

加害者の住所が分からないケースでも、弁護士会照会で市区町村や金融機関に照会して特定できる場合があります。依頼を受けたら事案を整理して弁護士会に申し出ます。回答まで時間がかかることもありますが、民事訴訟と刑事告訴の両方を進める上での重要な証拠収集手段です。
弁護士が、詐欺被害者に弁護士会照会を使った証拠収集の流れを説明する場面を想定しています。
困ったときの相談窓口
詐欺被害で加害者の所在・資産が不明な場合や、弁護士会照会の活用を検討する場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 0570-078374 | 平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00 | 弁護士費用立替・証拠収集の法的相談 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる) | 詐欺被害の相談・捜査への協力 |
| 消費者ホットライン | 188 | 地域の窓口に準ずる | 被害回復・弁護士紹介の相談 |
【まとめ】3つのポイント
- 弁護士だけが使える情報収集の切り札:弁護士会照会は弁護士が弁護士会を通じて官公庁・企業に情報提供を求める制度で、個人情報保護法の例外として認められています。
- 加害者の住所・口座も照会できる:行方不明の詐欺師の住所・金融機関の口座情報・不動産登記など、自力では集められない証拠を集める強力な手段です。
- 使うには弁護士への依頼が前提:個人が直接利用することはできません。費用が心配なら法テラスの費用立替制度を活用して弁護士に依頼してください。
よくある質問
-
Q弁護士会照会で銀行口座の情報を入手できますか?
-
A
入手できる場合があります。弁護士会照会を受けた金融機関は、法律上の報告義務があると解されており、口座の存在・残高・取引履歴などの情報を提供することがあります。ただし、金融機関によっては個人情報保護の観点から回答を拒否するケースもあります。その場合は文書提出命令や仮処分など別の手段と組み合わせて対応します。
-
Q弁護士会照会に相手が応じない場合、強制する手段はありますか?
-
A
強制力はありません。最高裁2016年判決で、照会を拒絶しても弁護士会への直接的な損害賠償責任はないとされました。任意の協力に委ねられている面があります。応じない場合は、訴訟上の文書提出命令(民事訴訟法223条)や調査嘱託(民事訴訟法186条)、あるいは捜査機関が捜査関係事項照会を行う刑事的手段などを組み合わせる方法を弁護士と検討することになります。
-
Q弁護士会照会は被照会者(照会を受けた企業など)に知られますか?
-
A
照会を受けた機関(銀行・市区町村等)は知りますが、照会の対象となった個人(口座名義人・住所の持ち主など)には原則として通知されません。ただし照会先が対象本人に伝える可能性がゼロではないため、弁護士は照会内容や照会先の選択について慎重に判断します。加害者に気づかれることで証拠を隠滅されるリスクを避けるためにも、弁護士と連携して進めることが重要です。
-
Q弁護士会照会と発信者情報開示請求との違いは何ですか?
-
A
根拠と用途が違います。弁護士会照会は弁護士法23条の2に基づき、弁護士が受任した事件で幅広い機関に情報提供を求めるものです。発信者情報開示請求はプロバイダ責任制限法に基づき、ネット上の誹謗中傷・権利侵害の発信者を特定するための手続きです。SNSやネット掲示板への書き込み者を特定したい場合は発信者情報開示請求が主流ですが、それでも特定できない場合に弁護士会照会を補完的に使うこともあります。
この用語と一緒に知っておきたい用語
| 用語 | この記事との関連 |
|---|---|
| 不当利得返還請求 | 不当利得返還請求とは、正当な理由もないのに他人の損失で得をした者に対して、その利益を返すよう求める権利のことだ。 |
| 背任罪 | 背任罪とは、他人のために事務を行う立場の者が、私利や損害目的で任務に背く行為をし、その人に財産上の損害を与えた場合に問われる刑法247条の犯罪だ。 |
| 不正アクセス禁止法 | 不正アクセス禁止法とは、他人のIDやパスワードを無断で使ってシステムにログインしたり、アクセス制御を突破して侵入したりする行為を禁じる法律だ。 |
| 集団訴訟 | 集団訴訟とは、同じ被害を受けた多数の被害者が、共通の請求を一括して裁判所で争う手続きで、日本では消費者裁判手続特例法(2016年施行)による二段階型の制度がある。 |
この手口が実際に使われた事件
| 事件 | この記事との関連 |
|---|---|
| M資金詐欺 | M資金詐欺とは、 GHQが日本から接収した秘密資金が今も極秘に運用されている と騙り、選ばれた経営者にのみ数千億円規模の融資を行うと持ちかけ、仲介手数料を詐取する手口である |
| アンソニー・ウィナー | 民主党の下院議員だったアンソニー・ウィナーは、2011年にTwitterで 不適切な自撮り写真 を複数の女性に送っていたことが発覚し、議員を辞職した |
| リンダ・ハザード | リンダ・ハザードは医学の正規の学位を持たないまま 飢餓療法 を提唱し、薄いスープとオレンジだけの食事と数時間に及ぶ浣腸で患者を治療すると称した |
【出典】参考URL
https://www.kanaben.or.jp/faq/faq04/index.html:弁護士法23条の2の条文・照会制度の趣旨の根拠
https://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/shokai/qa_b.html:照会に答える義務・個人情報保護法との関係の根拠
https://ja.wikibooks.org/wiki/弁護士法第23条の2:最高裁2016年・2018年判決(強制力なし)の根拠
https://www.loi.gr.jp/law/houmu13-01-03/:金融機関への照会・報告義務の根拠


コメント