マイケル・ラーソンとは?番組ハック事件の全貌

詐欺事件
マイケル・ラーソンとは?番組ハック事件の全貌を3行で要約
  • オハイオ州のアイスクリーム売りマイケル・ラーソンが、CBS番組Press Your Luckの光るパネルの法則を6ヶ月かけて完全に解読した
  • 1984年5月の収録で45回連続でハズレを回避し、賞金と賞品あわせて11万237ドル(現在の価値で約34万ドル)を獲得。当時のゲーム番組史上最高額だった
  • CBSは不正を疑い支払いを保留したが、ルール違反は見つからず全額を支払った。その後ラーソンは全財産を失い、詐欺で追われながら49歳で病死した

5〜6回分の番組を録画して1コマずつ確認しました。パターンがあることに気づくのは簡単ではなかったけれど、6ヶ月かけて18個の数字からなる6つのパターンを全て解読しました――。マイケル・ラーソンは後にこう語っています。

これは、一文無しのアイスクリーム売りがテレビ局のシステムの欠陥を見抜き、ゲーム番組史上最大の衝撃を与えた実話です。しかしその後の人生は、まさに一攫千金の呪いそのものでした。この記事では、ラーソンの番組ハックの手口と、その壮絶な末路を解説します。

マイケル・ラーソンの経歴

マイケル・ラーソンとは、1949年にオハイオ州レバノンで生まれたアイスクリームの移動販売員であり、一攫千金のスキームに取り憑かれた人物でした。

レバノン高校を1967年に卒業した後、ラーソンはミスター・ソフティーのアイスクリームトラックの運転手として働いていました。その傍ら、空調機器メーカーのクライスラー・エアテンプで修理工としても勤務しています。

ラーソンは若い頃から手っ取り早く金を稼ぐ方法を探し続けていた人物です。1983年11月にCBSの朝の帯番組Press Your Luckの放送が始まると、ラーソンはその番組に取り憑かれることになります。

光るパネルの法則を解読した手口

ラーソンが発見したのは、番組の光るパネルがランダムではなく、5つの決まったパターンで動いているという事実でした。

Press Your Luckはトリビアクイズとルーレットを組み合わせた番組です。クイズに正解すると、18マスのゲームボードを回すスピンの権利が与えられます。ボード上の光るカーソルが回転し、参加者がストップボタンを押した場所に表示された賞金や賞品を獲得できるというルールでした。ただし、マスコットキャラクターのWhammyに止まると、それまでに獲得した賞金が全て没収されてしまいます。

ラーソンはビデオデッキを購入し、5〜6回分の放送を録画。テープを1コマずつ再生して光の動きを分析しました。6ヶ月間の解析の末、彼は2つの重大な発見をします。

第1に、カーソルの動きはランダムではなく、18個の数字からなる5つの固定パターンを繰り返しているだけだったのです。第2に、4番目と8番目のマスにはWhammyが一度も配置されず、常に高額賞金と追加スピンがセットになっていました。つまり、パターンを暗記して4番と8番のマスを狙い続ければ、賞金を積み上げながら永遠にスピンし続けることが理論上可能だったのです。

番組のパイロット版(試作版)を制作する際、光のパターンのプログラミングにコストをかけなかったことが根本的な原因でした。本放送に移行した後もパターンは十分に改善されず、そのまま放送が続いていたのです。

収録当日の45回連続スピン

1984年5月19日、ラーソンは最後の貯金をはたいてロサンゼルスに飛び、11万237ドルという当時のゲーム番組史上最高額を獲得しました。

ラーソンはオーディションで自分を魅力的に見せるための準備も怠りませんでした。失業中のアイスクリーム売りで、6歳の娘の誕生日プレゼントも買えない。着ているシャツはスタジオの近くのリサイクルショップで65セントで買った――。このストーリーに番組のプロデューサー、ビル・キャラザースは心を動かされ、ラーソンの出演を決定します。

収録は2日にわたって行われました。最初のスピンでいきなりWhammyに当たり、それまでの獲得賞金がゼロになるという不吉なスタートでした。しかしラーソンは動揺せず、そこから45回連続でWhammyを回避するという驚異的なプレイを見せます。

司会のピーター・トマーケンは何度もラーソンにスピンを次の参加者に譲るよう提案しましたが、ラーソンは止まりませんでした。8万ドルを超えたあたりで精神的な重圧は凄まじかったと彼は後に語っています。最終的に賞金に加え、バハマとカウアイ島への旅行、ヨットなどの賞品も獲得。会場の観客はスタンディングオベーションで彼を称えました。

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この事件がユニークなのは、ラーソンが厳密にはルールを破っていないという点です。彼はシステムの欠陥を利用しただけであり、CBSも最終的に賞金を全額支払いました。詐欺と攻略の境界線はどこにあるのか――この事件は今でもその問いを投げかけています。

CBSの対応とその後の転落人生

CBSは当初不正を疑い支払いを保留しましたが、ルール違反は見つからず、賞金全額を支払うことを決定しました。

CBSの番組基準部門は全部門長を集めた会議を開き、映像を繰り返し検証しました。当時のCBS日中番組担当副社長マイケル・ブロックマンは、彼はシステムを打ち負かした。それを否定する法的根拠がないと判断した経緯を後に語っています。CBSはラーソンに小切手を郵送し、番組のゲームボードのパターンを直ちに約30種類に増やす対策を講じました。

しかしラーソンの人生は、賞金獲得後に急速に転落していきます。税金で約2万8000ドルを支払った後、不動産投資で失敗。さらに1984年末、ラジオ局のコンテスト(紙幣の番号を合わせると賞金がもらえる企画)に参加するために約10万ドルを1ドル札で引き出し、自宅で番号を確認する作業を続けていました。ある晩外出中に空き巣に入られ、約5万ドルの現金が盗まれるという惨事に見舞われています。

その後ウォルマートの副店長として働いた時期もありましたが、やがてPleasure Time社という架空のアメリカ先住民宝くじを謳うマルチ商法に関与。1万4000人の投資家から180万ドルを集め、SECから訴追されることになりました。SEC、IRS、FBIの捜査から逃れるためにフロリダ州アポプカに逃亡し、1999年2月16日に咽頭がんで死亡。享年49歳。家族は彼の死亡通知を受けて初めて居場所を知ったとされています。

まとめ

  • ラーソンはPress Your Luckの光るパネルが5つの固定パターンで動いていることを発見し、6ヶ月かけて暗記。45回連続でハズレを回避して当時の番組史上最高額を獲得した
  • CBSはルール違反を見つけられず全額を支払った。しかしラーソンはその後、不動産投資の失敗、現金盗難、マルチ商法への関与で全財産を失った
  • 一攫千金を手にしても、金を守り増やす能力がなければ無意味だ。ラーソンの物語は、システムを破った天才が最後には自分自身に敗れた教訓を示している

よくある質問

Q
ラーソンの行為は違法だったのですか?
A

番組のルール上は違法ではありませんでした。CBSは映像を徹底的に検証しましたが、ラーソンが不正な手段を用いた証拠は見つかりませんでした。彼は番組のシステムの欠陥を利用しただけであり、CBSは最終的に賞金全額を支払っています。ただし彼は番組の賞金上限(2万5000ドル)を超えたため、再出演は禁止されました。

Q
この事件を題材にした映画やドキュメンタリーはありますか?
A

複数の作品が制作されています。2003年のドキュメンタリーBig Bucks: The Press Your Luck Scandal、2018年のCover Story: The Press Your Luck Scandalがゲームショーネットワークで放送されました。2024年にはポール・ウォルター・ハウザー主演の映画The Luckiest Man in Americaが公開されています。

Q
現在のゲーム番組でも同様のハックは可能ですか?
A

現在では極めて困難です。ラーソン事件の直後、CBSはパターンを5つから32に増やし、より高性能なランダマイザーを導入しました。現在のPress Your Luck(2019年からABCで放送中)を含め、現代のゲーム番組ではパターンの解読が事実上不可能な設計が標準となっています。

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