- ドイツ生まれのテレバンジェリスト(テレビ伝道師)ピーター・ポポフは、集会で参加者の名前・住所・病名を神の啓示だと称して言い当て、奇跡の癒やしを行っていた
- 1986年、マジシャンのジェームズ・ランディが無線スキャナーでポポフの耳に装着されたイヤピースを傍受。妻が舞台裏から情報を送信していたことを暴露した
- 翌年破産したが1990年代後半に復活し、奇跡の泉の水を売る深夜のテレビ通販で再び巨額の収入を得ている
ハロー、ピーティー、聞こえる?聞こえなかったら大変よ――。これは1986年に傍受された、ポポフの妻エリザベスからの無線通信の冒頭部分です。この一文が、数千人の信者を欺いていた奇跡の癒やしの正体を白日の下にさらすことになりました。
この記事では、テレビ伝道師がどのようにして信者の信仰心を利用して金を集め、暴露された後もなぜ活動を続けられているのかを解説します。
ポポフの経歴と奇跡の癒やし
ピーター・ポポフとは、1946年にドイツで生まれたアメリカのテレバンジェリスト(テレビ伝道師)であり、フェイスヒーラー(信仰療法師)を自称する人物です。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校を1970年に卒業した後、自らを牧師と称してピーター・ポポフ・ミラクル・ミニストリーズを設立しました。ポポフの集会では、会場に集まった数千人の参加者の中から一人を指さし、その人のフルネーム、住所、そして患っている病気を正確に言い当てるパフォーマンスが行われていました。
ポポフはこれを神が自分に直接啓示した情報だと主張し、その後参加者の頭や体に手を当てて病気を癒やすと宣言しました。車椅子の参加者が立ち上がり、松葉杖を捨てて歩き出す――そうした劇的なシーンがテレビで放送され、ポポフは巨大な信者ネットワークと莫大な寄付金を獲得していったのです。
ランディによる暴露と無線イヤピースの正体
1986年、マジシャンで懐疑主義者のジェームズ・ランディが、ポポフの耳に小型の無線受信機が装着されていることを暴露しました。
ランディは協力者のスティーブ・ショウ(芸名バナチェック)と、犯罪現場分析・電子機器の専門家アレクサンダー・ジェイソンとともに調査を行いました。ジェイソンが無線スキャナーでポポフの集会の周波数を傍受したところ、ポポフの妻エリザベスが舞台裏から無線送信機で情報を流していたことが判明したのです。
その情報源は、集会前に参加者が記入した祈りのリクエストカードでした。参加者が自ら書いた名前、住所、病名をエリザベスとスタッフが事前に読み取り、ポポフのイヤピースに送信していたのです。ポポフはそれをあたかも神の啓示であるかのように参加者に伝え、驚嘆させていました。
ランディはさらにポポフの集会にサクラを送り込んでもいました。1984年のデトロイトでの集会では、女性に変装した男性をポポフが子宮がんから癒やしたと宣言するという、笑えない一幕も記録されています。

ポポフの手口で最も巧妙なのは、情報源が参加者自身だという点です。参加者が自分で書いたカードの内容を、無線を通じて牧師が復唱する。参加者は自分の情報を事前に渡していたことを忘れ(あるいは意識せず)、神の力で言い当てられたと信じてしまうのです。
これはコールドリーディング(事前に得た情報を、あたかも超自然的に知ったかのように見せる技術)の典型であり、占い詐欺や霊感商法にも共通する手口です。
破産と驚異の復活
暴露後の1987年、ポポフは破産を申請しました。しかしその終わりは一時的なものに過ぎませんでした。
1990年代後半、ポポフは深夜のテレビ通販の時間枠を買い取り、奇跡の泉の水(Miracle Spring Water)を販売する形で復活を果たします。この水を使えば病気が治る、借金が消える、奇跡が起きるという触れ込みで、テレビ画面には涙ながらに効果を証言する人々が次々と登場しました。
2007年のInside Editionの取材では、ポポフが暴露前と全く同じ手法で信者を癒やしている様子が報じられています。被害者のインタビューでは、ポポフに数千ドルを取られたと証言する夫婦も登場しました。ランディは取材に対し、ペテンが彼の商売です。それが最も得意なことで、当然そこに戻るでしょうとコメントしています。
2025年時点でもポポフの奇跡の泉の水のテレビ通販はアメリカとカナダで放送が続いており、英国では放送規制当局Ofcomが弱者を搾取する広告だとして放送局に厳重警告を出しています。
まとめ
- ポポフは妻からの無線通信で参加者の情報を受け取り、神の啓示と偽って奇跡の癒やしを演じていた。1986年にランディに暴露され破産した
- しかし1990年代後半に奇跡の泉の水のテレビ通販で復活。2025年時点でもアメリカとカナダで放送が続いている
- 病気や借金に苦しむ人々の信仰心と切実な願いを利用する霊感商法は形を変えて繰り返される。個人情報を渡す前に、その相手が本当に信頼できるかを冷静に判断すべきだ
よくある質問
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Qポポフは逮捕されましたか?
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A
刑事訴追はされていません。1987年に破産を申請しましたが、刑事罰を受けることなく活動を再開しています。アメリカでは宗教活動の自由が強く保護されており、信仰療法そのものを違法とすることが困難であることが背景にあります。ただし英国ではOfcomが放送に対する規制措置を取っています。
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Qジェームズ・ランディとは誰ですか?
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A
カナダ出身のマジシャンで、超常現象や疑似科学の批判者として知られる人物です。超能力を持つと主張する者に100万ドルの賞金を提供するチャレンジを設けたことでも有名です。ポポフの暴露は、ランディの最も有名な功績のひとつとされています。2020年に92歳で亡くなりました。
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Q日本にも同様の霊感商法はありますか?
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A
日本でも霊感商法は深刻な社会問題となっています。病気の治癒や運勢の改善をうたって高額な壺や印鑑を売りつけるケースや、先祖の霊が祟っていると不安を煽って多額の祈祷料を要求するケースが報告されています。2022年には霊感商法等の被害に関する消費者契約法の改正が行われ、規制が強化されました。
【出典】参考URL
- Wikipedia:Peter Popoff:経歴、暴露の詳細、復活後の活動
- Psi Encyclopedia:James Randi:ランディによるポポフ暴露の経緯


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