善意の第三者とは?詐欺取消しで財産を取り戻せない理由

法規・刑罰・代償
善意の第三者とは?ざっくりと3行で
  • 善意の第三者とは、法律上「ある事情を知らなかった当事者以外の人」を指す用語で、詐欺による取消しは善意・無過失の第三者には対抗できないという民法の原則がある。
  • 詐欺師にだまされて商品を渡した被害者が契約を取り消しても、その商品がすでに事情を知らない別の人に転売されていた場合、その人からは取り戻せないという厳しい現実がある。
  • これを知っておけば、「取消せばすべて元通り」は幻想であり、早期発見・早期行動が被害を最小化できる唯一の方法とわかる。

【深掘り】これだけは知っておけ

法律上の「善意」は日常語の「善意」とは全く異なります。法律では「ある事情を知らない状態」を善意、「知っている状態」を悪意と呼びます。善良な心を持っているかどうかではなく、純粋に「知っているか・知らないか」の問題です。

善意の第三者は、民法の取消しや無効の議論で頻繁に登場する概念です。代表的な規定は民法96条3項で、「詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と定めています。たとえばAが詐欺師Bにだまされて不動産を売ってしまったとします。AはBに対して詐欺を理由に売買を取り消せます。しかしBが取消し前にその不動産を、詐欺の事実を知らずかつ知りようもなかった(善意・無過失の)Cに転売していた場合、Aはもう取り消しによってCから不動産を取り戻すことができません。Aが取り戻せるのは、BにAへの損害賠償を求めることだけです。

詐欺と強迫では扱いが異なります。詐欺による取消しは善意・無過失の第三者に対抗できませんが、強迫による取消しは善意の第三者にも対抗できます。詐欺は被害者も一定程度の注意を払うべきだという考え方が背景にあります。また、取消し後に登場した第三者と取消し前の第三者でも扱いが変わります。96条3項が保護するのは「取消し前に利害関係を生じた善意・無過失の第三者」です。取消し後に転売された場合は別途の法的判断が必要です。2017年の民法改正で「善意でかつ過失がない」(善意無過失)という要件が明確化されました。

詐欺被害で善意の第三者が問題になる場面は、オークション詐欺・転売詐欺などで顕著です。詐欺師が盗品や詐取した商品をフリマアプリやオークションで第三者に転売し、買った人が「知らなかった」と主張するケースです。この場合、買った人(第三者)が事情を知っていたか(悪意)、または少し注意すれば知れた(過失あり)と立証できれば、被害者は取り戻せます。証拠をしっかり保全することが、「善意ではなかった」と主張する際に力を発揮します。

善意の第三者の概念は、取引の安全を守るために設けられています。もし詐欺があれば常に元通りになるとなると、誰も安心して取引できなくなります。一方で被害者が泣き寝入りするのも不当です。そのバランスをとる仕組みが「善意・無過失の第三者は保護する」という設計です。詐欺被害に遭ったら、できる限り早く動くことで第三者が登場する前に取消しを完了させることが重要です。内容証明で取消の意思を伝え、仮差押えで財産を保全し、弁護士と連携して第三者の有無や悪意・過失の有無を調査するという手順が、被害回復の現実的な道筋です。

詐欺取消しと善意の第三者の関係

第三者の状態取消しで対抗できるか
悪意(事情を知っていた)対抗できる(取り戻せる)
善意だが過失あり(知れた)対抗できる(取り戻せる)
善意・無過失(知らず知りようもなかった)対抗できない(取り戻せない)
強迫の場合(善意でも)対抗できる(取り戻せる)

典型的なフレーズ・文脈

詐欺品をすぐに転売して取戻しを困難にさせる詐欺師のイラストアイコン
詐欺師

だまし取った商品はすぐに転売する。善意の第三者に渡してしまえば、被害者がいくら取消しを主張してもそこからは取り戻せなくなる。時間稼ぎさえできれば勝ちだ。

詐欺師が善意の第三者の保護規定を悪用して被害回復を困難にする手口を示しています。だからこそ被害に気づいたら即座に取消の意思表示と仮差押えを行う必要があります。

善意の第三者保護の法的仕組みを解説するニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

民法では、詐欺による契約取消しは善意でかつ過失のない第三者には主張できないと定めています。詐欺師がだまし取った財産を事情を知らない別の人に転売した場合、被害者は元の相手にしか請求できないケースがあります。早期発見・早期行動の重要性が改めて浮き彫りになっています。

民法の善意の第三者保護の規定と詐欺被害への影響を解説する法律情報番組のキャスターを想定した表現です。

早期の取消しと仮差押えを助言する弁護士のイラストアイコン
専門家

善意の第三者が現れる前に動くことが全てです。内容証明で取消しの意思を示し、すぐに仮差押えを申立てて財産を保全する。第三者が登場したとしても、その人が悪意または過失があったと証明できれば対抗できます。証拠を持って早めに相談に来てください。

弁護士が、詐欺被害者に対して早期行動と証拠保全の重要性を助言する場面を想定しています。

困ったときの相談窓口

詐欺により財産が転売された可能性がある場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00取消し・仮差押えの法的相談
消費者ホットライン188年末年始除く毎日詐欺被害の初動相談
警察相談専用電話#9110平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる)詐欺被害・転売の相談

【まとめ】3つのポイント

  • 法律の「善意」は「知らない」という意味:善良な心ではなく、ある事情を知らない状態が「善意」、知っている状態が「悪意」です。価値観とは無関係の技術的な用語です。
  • 取消し前の善意・無過失の第三者からは取り戻せない:詐欺師がすぐに転売すれば取り戻しが困難になります。だからこそ早期発見・早期取消し・仮差押えが重要です。
  • 強迫は第三者にも対抗できる:詐欺と強迫では扱いが違います。第三者の悪意・過失を立証できれば詐欺でも対抗可能です。証拠を保全して弁護士に相談してください。

よくある質問

Q
詐欺で騙された商品が転売されてしまいました。どうすればいいですか?
A

転売先の第三者が善意・無過失なら、その人から取り戻すことは難しいです。しかし、転売先が詐欺の事実を知っていた(悪意)、または少し注意すれば知れた(過失あり)と立証できれば取り戻せる可能性があります。まず弁護士に相談して、転売の経緯・第三者が知り得た状況の調査と、詐欺師への損害賠償請求を並行して進めることを検討してください。

Q
フリマアプリで詐欺品と知らずに買った場合、罪になりますか?
A

善意・無過失で購入した場合、民事上は保護されます(取り戻しを拒める)。刑事上も知らずに買った行為は原則として犯罪になりません。ただし、後から詐欺品と知りながら転売した場合は盗品関与罪(刑法256条)に問われる可能性があります。購入後に詐欺品と分かった場合は、警察や売主に連絡するのが安全です。

Q
「善意」と「悪意」は日常語と法律用語でどう違いますか?
A

全く異なります。日常語では善意は親切心・好意、悪意は意地悪な心を指します。しかし法律用語では、善意は「ある事情を知らない状態」、悪意は「ある事情を知っている状態」を意味します。心の良し悪しとは無関係です。法律の文章で善意・悪意という言葉が出てきたら、知っているか知らないかの話として読んでください。

Q
善意の第三者と取消権との違いは何ですか?
A

取消権は、詐欺・強迫などで成立した契約を被害者が取り消す権利で、行使すれば契約が最初から無効になります。善意の第三者は、その取消しの効果が及ぶ範囲を制限する概念です。取消権を行使しても、善意・無過失の第三者がすでに関わっている場合は、その第三者には効果が及びません。つまり取消権を使っても「誰からでも全て取り戻せる」わけではないというのが善意の第三者の意味です。

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【出典】参考URL

https://office.vbest.jp/columns/general_civil/g_lp_indi/7515/:民法96条3項・善意無過失の第三者の具体例・錯誤との比較の根拠
https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20063/:民法96条の詐欺取消し・善意無過失の定義の根拠
https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/takuitsu_minpou/minpou_0096-00/:強迫は第三者に対抗できる・2017年改正での明確化の根拠

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