忘れられる権利とは?ネットの過去情報を削除する法的手段

法規・刑罰・代償
忘れられる権利とは?ざっくりと3行で
  • 忘れられる権利とは、インターネット上に残り続ける過去の逮捕歴・犯罪歴・プライバシー情報などの削除を求める権利で、EUでは法律で明文化されているが日本では判例の積み重ねで対応している。
  • グーグルの検索結果や掲示板に残り続ける過去の情報が就職・人間関係に影響している人が、プライバシー権や名誉権を根拠にリンクや投稿の削除を裁判所に申し立てられる仕組みになっている。
  • これを知っておけば、「ネットに一度出た情報は消せない」という思い込みを覆し、法的手段で過去の情報を整理できる可能性があるとわかる。

【深掘り】これだけは知っておけ

忘れられる権利は、日本では独立した法律として規定されていません。しかし最高裁判所は2017年、ある男性が逮捕歴の検索結果削除を求めた事案で「プライバシー侵害が明らかな場合は削除を認め得る」という判断の枠組みを示しました。この判断は現在の実務に大きな影響を与えています。

忘れられる権利(right to be forgotten)は、自分に関するオンライン上の情報が不必要・不正確・無関係になった場合、その削除を求める権利です。EU一般データ保護規則(GDPR)の17条に「消去権」として明文化され、欧州では2014年のグーグル・スペイン事件判決を経て実務上も確立されています。日本では法律上の明文化はなく、プライバシー権・名誉権・個人情報保護法上の請求として個別に判断されます。最高裁2017年1月31日決定は、削除が認められるかの判断基準として、①当該事実の性質・内容、②事実が伝わる範囲、③本人が被る具体的被害の程度、④削除によって生じる不利益とのバランス、を考慮するという枠組みを示しました。

実務での対処は主に三つのルートがあります。第一は、Googleなどの検索エンジンに直接削除申請する方法で、GDPRの対象外である日本からでも個人情報・プライバシー情報の削除を申請できます。Googleはプライバシー侵害・名誉毀損・個人情報の不適切な露出などのポリシー違反案件については応じるケースがあります。第二は、投稿元のサイト・掲示板にプロバイダ責任制限法に基づく削除申請をする方法。第三は、裁判所への仮処分申立で強制的に削除させる方法で、最も効果が高い代わりに費用と時間がかかります。実際には弁護士と相談して、状況に応じた最適なルートを組み合わせるのが一般的です。

削除が認められやすいケースと難しいケースがあります。認められやすいのは、不起訴になったにもかかわらず逮捕報道が残っている、事件から相当期間が経過し社会的関心が失われている、住所・電話番号など現在進行形でストーカー被害につながる情報が残っているといった場合です。一方、公益性の高い事件(詐欺事件で有罪確定など)の報道は削除が認められにくく、報道機関・公的機関の記録は慎重に判断されます。

詐欺被害との接点では、被害を受けた側が加害者の情報を拡散するケースや逆に、詐欺師が被害者情報をネット上に晒すケースで忘れられる権利が問題になることがあります。また、SNS型投資詐欺などの被害者自身の名前が誤った文脈で残ってしまうケースも存在します。いずれの場合も、まずどの情報が残っていて誰が管理しているかを整理し、法テラス・弁護士に相談して最適な削除手段を検討することが解決への近道です。時間の経過はプライバシー権主張を有利にすることもあるため、諦めずに専門家に相談することをお勧めします。

削除申請の3ルートと特徴

ルート方法特徴
検索エンジン直接申請Google等のフォームで申請費用ゼロ・審査は検索エンジン側の判断に委ねられる
プロバイダ責任制限法サイト運営者・ISPへの削除申請応じない場合は仮処分へ移行
仮処分申立裁判所へ削除の仮処分を申立て最も強制力が高い・弁護士費用が必要

典型的なフレーズ・文脈

過去の逮捕歴をネットに残し続けて嫌がらせに使う人物のイラストアイコン
詐欺師

お前の逮捕歴、ネットでいつでも検索できるぞ。就職先にも家族にも知られたくなければ、俺の言うことを聞いておけ。忘れられる権利?そんなの日本では通じない。

過去の逮捕歴をネット上に残したまま脅迫の道具にする手口です。日本でも裁判所は一定の要件でプライバシー権に基づく削除を認めており、このような脅しに根拠はありません。

忘れられる権利の最高裁判断を伝えるニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

最高裁は、過去の逮捕歴が検索結果に表示され続けることについて、プライバシー侵害の程度が明らかな場合は削除を認め得るという判断の枠組みを示しました。日本における忘れられる権利の実務に影響を与えています。

2017年の最高裁決定を伝えるニュース番組のキャスターを想定した表現です。この判断が現在の実務の基盤になっています。

検索結果削除の手順を助言する弁護士のイラストアイコン
専門家

まずGoogleのプライバシー侵害削除フォームで申請してみてください。応じてもらえない場合は、プロバイダ責任制限法に基づく削除申請か、裁判所への仮処分申立になります。不起訴になった逮捕報道や古い情報は認められやすい傾向があります。

弁護士が、検索結果に過去の情報が残って困っている相談者に、削除申請の三つのルートを状況に応じて案内する場面を想定しています。

困ったときの相談窓口

ネット上に残る過去の情報の削除や忘れられる権利について相談したい場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00削除申請・仮処分の法的相談
消費者ホットライン188地域の窓口に準ずるプライバシー・個人情報トラブルの相談
IPA安心相談窓口03-5978-7509平日 10:00〜12:00・13:30〜17:00ネット上の情報削除に関する相談

【まとめ】3つのポイント

  • 「消せない」は思い込み:日本でも最高裁2017年決定を根拠に、プライバシー侵害が明らかな場合は検索結果や投稿の削除が認められるケースがあります。
  • 3つのルートを組み合わせる:Google直接申請→プロバイダ責任制限法による削除申請→裁判所への仮処分申立の順で、状況に応じて選択します。
  • 公益性が低く時間が経った情報ほど有利:不起訴になった逮捕報道や時代遅れの情報は削除が認められやすい。弁護士に相談して可能性を確認しましょう。

よくある質問

Q
Googleの検索結果から自分の情報を削除できますか?
A

場合によっては可能です。GoogleはプライバシーポリシーやGDPRに基づく削除申請フォームを公開しており、個人情報の不適切な露出・プライバシー侵害・名誉毀損に該当する場合は対応することがあります。ただし全てのケースで削除されるわけではなく、公益性が高い情報は却下されます。Googleが応じない場合は弁護士経由で仮処分申立を検討してください。

Q
不起訴になったのに逮捕時の報道記事がネットに残っています。削除を求められますか?
A

削除を求めやすいケースです。不起訴は有罪ではないため、そのまま逮捕報道が残ることはプライバシー権の侵害と評価されやすいです。弁護士に依頼して仮処分申立や発信者情報開示を進めることで、削除が認められる可能性があります。まず弁護士か法テラスに状況を説明して具体的な見通しを確認するのが最初の一歩です。

Q
有罪が確定した犯罪の情報も削除を求められますか?
A

難しいケースが多いですが、条件次第で認められる場合もあります。最高裁の判断基準では、事件の公益性・被害の程度・時間の経過・本人が被る実害などを総合的に考慮します。軽微な犯罪で相当年数が経過し社会的関心が失われた場合は削除が認められた事例があります。一方、詐欺事件など被害者の多い犯罪は公益性が高く、削除が認められにくい傾向があります。

Q
忘れられる権利とプライバシー侵害との違いは何ですか?
A

忘れられる権利は、プライバシー権を発展させた概念の一つです。プライバシー侵害は、現在進行形で私生活上の情報が無断公開されている状態を問題にします。忘れられる権利は、かつては正当に公開された情報でも、時間の経過などにより不必要になった場合に削除を求める点で異なります。日本では独立した権利としてではなく、プライバシー権・名誉権の延長として判例が蓄積されています。

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【出典】参考URL

https://kandato.jp/rights/privacy/:忘れられる権利・最高裁2017年1月31日決定・プライバシー権との関係の根拠
https://www.mc-law.jp/kigyohomu/22235/:最高裁判断基準(4要素)の根拠
https://mikata-ins.co.jp/lab/legal/101025/:プロバイダ責任制限法・仮処分申立・EU GDPRとの比較の根拠

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