- プライバシー侵害とは、私生活上の事柄をみだりに公開されない権利を侵害する行為で、犯罪ではなく民事上の不法行為として損害賠償・削除請求の対象になる。
- 本人が公開を望まない住所・前科・性的指向・健康情報などが第三者に明かされた場合、憲法13条が根拠のプライバシー権侵害として慰謝料請求が認められ、SNSやネット上の投稿なら削除請求も可能だ。
- これを知っておけば、個人情報を勝手に拡散された・さらされたといったトラブルで、刑事告訴ではなく民事で戦う選択肢を持てる。
【深掘り】これだけは知っておけ
プライバシー権は日本国憲法13条の幸福追求権から導き出され、「私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障」と解されています(東京地裁昭和39年「宴のあと」事件)。プライバシー情報として保護される要件は3つで、①私生活上の事実または私生活上の事実と受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感覚で公開を欲しないと認められること、③一般の人々にまだ知られていない事柄であること、とされています。住所・電話番号・前科・病歴・性的指向・婚姻状況などが代表的なプライバシー情報ですが、組み合わせることで個人が特定される情報全般が保護の対象になりえます。
SNS上でのプライバシー侵害が問題になるケースは急増しています。元交際相手が住所や職場をSNSに投稿するリベンジ型、誰かの個人情報を許可なく拡散する「さらし行為」、フリマアプリやオークションで取得した相手の個人情報を目的外利用する行為などが典型です。民事上の対処としては、不法行為(民法709条・710条)に基づく慰謝料を含む損害賠償請求と、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示・投稿削除請求の両立が有効です。仮処分命令(民事保全法23条2項)を取得すれば、プラットフォームが速やかに削除に応じるケースが増えています。
忘れられる権利(right to be forgotten)は、インターネット上に残り続ける自分の情報の削除を求める権利で、EU一般データ保護規則(GDPR)で明文化されています。日本では明文の法律はありませんが、過去の犯罪歴・逮捕報道・プライバシー情報の検索結果削除について、最高裁(2017年)や各地の裁判所が個別に判断を示してきました。現在の実務では、名誉権やプライバシー権に基づいて削除請求をする手段がとられており、弁護士と連携して進めることが一般的です。被害に遭ったら、投稿のスクリーンショットを保全し、消費生活センター・法テラスで状況を整理してから弁護士に相談するという流れが初動として有効です。
プライバシー侵害と隣接する法的問題の比較
| 問題の種類 | 根拠 | 主な対処手段 |
|---|---|---|
| プライバシー侵害(民事) | 憲法13条・民法709条 | 損害賠償・削除請求・発信者情報開示 |
| 個人情報の不正提供(事業者) | 個人情報保護法 | 行政指導・是正勧告・罰則 |
| 住所・氏名のSNS投稿(刑事) | ストーカー規制法・DV防止法 | 警告・禁止命令・刑事処罰 |
| 忘れられる権利 | 名誉権・プライバシー権(判例) | 検索結果削除・投稿削除請求 |
典型的なフレーズ・文脈

こいつの本名と住所と職場、全部ネットにさらしてやる。前の彼女にひどいことをした男だから、みんなに知らせる権利がある。事実を書くだけだから名誉毀損にもならない。
事実であっても、住所・職場など私生活の情報を無断でネットに晒す行為はプライバシー侵害として慰謝料請求の対象になります。ストーカー規制法の問題にもなりうる危険な行為です。

SNSに他人の住所や電話番号を無断投稿した男が、被害者から損害賠償を求める訴訟を起こされ、裁判所はプライバシー権侵害を認め慰謝料の支払いを命じました。個人情報のさらし行為は、たとえ事実であっても民事上の責任を問われます。
個人情報の無断投稿が民事訴訟で損害賠償を命じられた事例を伝えるニュース番組のキャスターを想定した表現です。

住所や職場をSNSに晒されたら、まずスクリーンショットを保全して、弁護士経由で仮処分を申し立ててください。裁判所の命令があれば、プラットフォームも速やかに削除に応じます。その後、慰謝料請求と発信者情報開示で投稿者を特定して責任を追及する流れです。
弁護士が、個人情報を晒されたプライバシー侵害被害者に仮処分→削除→発信者特定→慰謝料の流れを案内する場面を想定しています。
困ったときの相談窓口
個人情報を無断で拡散された場合や、プライバシー侵害の被害を受けた場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188 | 地域の窓口に準ずる | 個人情報・プライバシートラブルの相談 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 0570-078374 | 平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00 | 損害賠償・削除請求の法的相談 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる) | ストーカー・DV連動の場合の相談 |
【まとめ】3つのポイント
- 刑事ではなく民事で戦う:プライバシー侵害は犯罪ではなく民事上の不法行為です。慰謝料を含む損害賠償と投稿削除が主な手段です。
- 「事実だから大丈夫」は通用しない:プライバシー権侵害は真実の情報でも成立します。住所・職場・前科などの晒し行為は民事責任を問われます。
- 仮処分で速攻削除が最善手:弁護士経由で仮処分を申立てれば、プラットフォームが速やかに削除に応じます。まずスクリーンショットを保全してください。
よくある質問
-
QSNSに自分の住所を無断投稿された場合、すぐに削除させる方法はありますか?
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A
最も速効性があるのは弁護士を通じた仮処分申立てです。裁判所が削除の仮処分命令を出せば、SNSプラットフォームは通常それに応じます。緊急度が高い場合(ストーカー被害が懸念される場合など)は数日で命令が下りることもあります。まずスクリーンショットを保全し、法テラス(0570-078374)か弁護士に即日相談することをおすすめします。
-
Qプライバシー侵害で慰謝料はいくら請求できますか?
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A
情報の内容・公開の範囲・被害の深刻さによって大きく変わります。軽微なケースでは数万円から数十万円の判決が多いですが、性的画像の拡散・前科の公表・ストーカー被害に発展した重篤なケースでは100万円を超える慰謝料が認められた事例もあります。弁護士費用も損害として認められる場合があるため、弁護士に相談して見積もってもらうのが正確です。
-
Q過去の逮捕記事がネットに残っています。削除を求める権利はありますか?
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A
忘れられる権利として削除を求めることが可能な場合があります。日本では法律で明文化されていませんが、プライバシー権・名誉権に基づいて裁判所が削除を認めた事例があります。時間の経過・社会的関心の低下・本人への実害などが考慮されます。検索エンジン各社も一定の要件下でリンクの削除に応じています。弁護士に相談して、削除の可能性を具体的に検討することをお勧めします。
-
Qプライバシー侵害と個人情報保護法違反との違いは何ですか?
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A
規制の対象が違います。プライバシー侵害は個人の権利侵害として民事上の問題となり、加害者が個人でも法人でも問われます。個人情報保護法は主に事業者(企業・組織)による個人情報の取り扱い(収集・管理・提供)を規制するもので、違反すると行政指導・是正勧告・罰則の対象になります。個人間のさらし行為は個人情報保護法の直接的な規制対象にはなりにくく、プライバシー権侵害(民法709条)で戦うことになります。
この用語と一緒に知っておきたい用語
| 用語 | この記事との関連 |
|---|---|
| 忘れられる権利 | 忘れられる権利とは、インターネット上に残り続ける過去の逮捕歴・犯罪歴・プライバシー情報などの削除を求める権利で、EUでは法律で明文化されているが日本では判例の積み重ねで対応している。 |
| 司法書士 | 司法書士とは、不動産登記・商業登記・裁判書類の作成を専門とする法律家で、認定司法書士であれば140万円以下の案件に限り簡易裁判所での訴訟代理権も持つ。 |
| 窃盗罪 | 窃盗罪とは、他人が占有する物をその意思に反して奪い取る行為に適用される刑法235条の犯罪で、万引き・スリ・車上荒らしから空き巣まで幅広く含まれる。 |
| 侮辱罪 | 侮辱罪とは、事実を示さなくても公然と人を侮辱した場合に成立する刑法231条の犯罪で、2022年の厳罰化により最大1年の拘禁刑または30万円以下の罰金が科せられる。 |
この手口が実際に使われた事件
| 事件 | この記事との関連 |
|---|---|
| M資金詐欺 | M資金詐欺とは、 GHQが日本から接収した秘密資金が今も極秘に運用されている と騙り、選ばれた経営者にのみ数千億円規模の融資を行うと持ちかけ、仲介手数料を詐取する手口である |
| アンソニー・ウィナー | 民主党の下院議員だったアンソニー・ウィナーは、2011年にTwitterで 不適切な自撮り写真 を複数の女性に送っていたことが発覚し、議員を辞職した |
| リンダ・ハザード | リンダ・ハザードは医学の正規の学位を持たないまま 飢餓療法 を提唱し、薄いスープとオレンジだけの食事と数時間に及ぶ浣腸で患者を治療すると称した |
【出典】参考URL
https://prospire-law.com/articles_reputation/24100401/:プライバシー権の定義・3要件・宴のあと事件判決の根拠
https://mikata-ins.co.jp/lab/legal/101025/:最高裁判例(前科情報・弁護士会照会)・SNSのプライバシー侵害事例の根拠
https://itbengo-pro.com/columns/190/:憲法13条根拠・不法行為による損害賠償・仮処分の根拠
https://kandato.jp/rights/privacy/:忘れられる権利・最高裁の判断の根拠


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