- 信用毀損罪・業務妨害罪とは、虚偽の情報を流したり偽計・威力を使ったりして人や企業の信用を傷つけたり業務を妨害したりする行為に、最大3年の拘禁刑を科す刑法233条・234条の犯罪だ。
- SNSへの虚偽の悪評投稿・偽の予約キャンセル大量発生・業務メールへのサイバー攻撃など、「経済的・業務的な損害を与える嫌がらせ」が法的に犯罪として処罰される根拠がこの罪だ。
- これを知っておけば、ライバル業者や悪意ある第三者からSNSで攻撃されたとき、刑事告訴で対抗できる選択肢を持てる。
【深掘り】これだけは知っておけ
刑法233条は「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」と規定します。234条はこれに加え「威力を用いて人の業務を妨害した者」も同様に処罰します。信用毀損罪の「信用」は経済的信用、つまり支払い能力・商品の品質・企業の信頼性などを指します。虚偽でなければ成立しないため、真実の悪評を書いても信用毀損罪にはなりません(ただし名誉毀損罪が問われる可能性はあります)。業務妨害罪の「業務」は、職業的・反復的な事務全般を指し、飲食店・医療機関・公的機関なども対象に含まれます。
近年多いケースは大きく3パターンです。まず偽のレビュー・風評被害で、SNSやグルメサイトに虚偽の内容を書き込んで企業の信用を傷つける行為(信用毀損罪)。次にSNS上での大量リプライや組織的な電話攻撃で業務を停止させる行為(偽計または威力業務妨害罪)。そして偽の予約を大量に入れてキャンセルし、席や在庫を無意味に埋める行為(偽計業務妨害罪)が挙げられます。公訴時効は3年(刑訴法250条2項5号)です。名誉毀損罪との違いは、信用毀損罪の保護対象が「社会的名誉」ではなく「経済的信用(支払能力・商品品質への社会的信頼)」に限られる点です。
一般消費者が被害に関わる場面としては、詐欺グループが特定企業を装った偽サイトを使って企業の信用を傷つけるケースや、競合他社の悪評を組織的に流布する不正競争行為があります。被害を受けた法人・個人事業主は、投稿のスクリーンショット・アクセスログ・証言などを集め、弁護士を通じて発信者情報開示請求と刑事告訴を並行して進める手順が有効です。自分の業務が妨害されていると感じたら、まず#9110または最寄り警察署、そして法テラスへ相談してください。
信用毀損罪・業務妨害罪・名誉毀損罪の比較
| 罪名 | 保護する利益 | 虚偽性の要否 | 法定刑 |
|---|---|---|---|
| 信用毀損罪(233条前段) | 経済的信用 | 必要(虚偽の風説) | 3年以下の拘禁刑・50万円以下の罰金 |
| 偽計業務妨害罪(233条後段) | 業務の円滑な遂行 | 必要(偽計) | 同上 |
| 威力業務妨害罪(234条) | 業務の円滑な遂行 | 不要(威力でよい) | 同上 |
| 名誉毀損罪(230条) | 社会的名誉・評価 | 不要(真実でも成立) | 3年以下の拘禁刑・50万円以下の罰金 |
典型的なフレーズ・文脈

あのライバル店に1つ星を100件つけよう。「食中毒が出た」とか「スタッフが客を怒鳴った」とか書けば客が逃げる。全部嘘でも、件数が多ければ信じてもらえる。
虚偽の低評価レビューを組織的に投稿してライバル店の信用を傷つける、信用毀損罪の典型的な手口です。投稿した者全員が共犯として処罰対象になります。

警察は、グルメサイトに飲食店への虚偽の悪評を大量投稿し、売上に打撃を与えたとして偽計業務妨害の疑いで男を書類送検しました。SNS上の虚偽投稿が刑事事件として立件されるケースが増えています。
グルメサイトへの組織的な虚偽投稿が業務妨害罪で立件された事例を報じるニュース番組のキャスターを想定した表現です。

投稿のスクリーンショットとURLを保全したら、まず弁護士に相談してください。SNSプラットフォームへの発信者情報開示請求で投稿者を特定し、刑事告訴(偽計業務妨害または信用毀損)と民事の損害賠償請求を同時に進めるのが有効です。証拠が消える前に動いてください。
弁護士が、SNSでの虚偽投稿被害を受けた事業者に発信者特定と刑事・民事の並行対応を案内する場面を想定しています。
困ったときの相談窓口
SNSの虚偽投稿や業務妨害被害に遭った場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる) | 業務妨害・信用毀損被害の相談 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 0570-078374 | 平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00 | 告訴・損害賠償の法的相談 |
| IPA安心相談窓口 | 03-5978-7509 | 平日 10:00〜12:00・13:30〜17:00 | サイバー攻撃・偽計妨害の相談 |
【まとめ】3つのポイント
- 虚偽の悪評も犯罪になる:嘘の情報でビジネスの信用を傷つければ信用毀損罪、業務を止めれば業務妨害罪です。SNSの匿名投稿も刑事対象になります。
- 名誉毀損罪とは保護法益が違う:信用毀損罪は経済的信用(支払能力・品質)の保護、名誉毀損罪は社会的名誉の保護です。虚偽性が必要かどうかも異なります。
- 投稿を消される前に保全が最優先:スクリーンショット・URLをすぐ確保し、弁護士経由で発信者情報開示と刑事告訴を並行させてください。
よくある質問
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QGoogleマップに虚偽のレビューを書かれた場合、削除請求と刑事告訴は同時にできますか?
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A
できます。Googleへの削除申請(コンテンツポリシー違反として報告)と、弁護士を通じた発信者情報開示請求を並行して進め、投稿者が特定できれば刑事告訴(偽計業務妨害または信用毀損罪)も可能です。ただし削除申請でGoogleが応じると、投稿者の特定に使える情報が失われることがあるため、先にスクリーンショットを保全してから削除申請する順序が重要です。
-
Q飲食店に大量の偽予約を入れてキャンセルする行為は犯罪ですか?
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A
偽計業務妨害罪が成立します。存在しない人物を装って多数の予約を入れ、席や食材を無意味に確保させる行為は「偽計を用いて業務を妨害した」と評価されます。実際に逮捕・起訴された事例があり、悪ふざけや嫌がらせのつもりでも刑事責任を問われます。
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Q真実の悪評をSNSに書いた場合は信用毀損罪になりますか?
-
A
信用毀損罪は「虚偽の風説」を要件とするため、真実の情報では成立しません。ただし公然と事実を摘示して名誉を傷つけた場合は名誉毀損罪(刑法230条)が問われる可能性があります。名誉毀損罪は真実でも成立しますが、公共の利害に関する事実で公益目的があり、内容が真実と証明できれば違法性が阻却されます(230条の2)。評価を書く際は、根拠ある事実に基づき、誹謗中傷にならない表現を選ぶことが重要です。
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Q信用毀損罪と名誉毀損罪との違いは何ですか?
-
A
守る利益が違います。信用毀損罪(233条)は経済的信用、つまり支払能力や商品の品質に対する社会的信頼を保護し、虚偽の風説が要件です。名誉毀損罪(230条)は人の社会的評価全般を保護し、真実であっても成立します。企業の製品について嘘の欠陥情報を流せば信用毀損罪、実名で過去の不祥事を暴露すれば名誉毀損罪になる可能性があります。両方が同時に成立することもあります。
この用語と一緒に知っておきたい用語
| 用語 | この記事との関連 |
|---|---|
| 名誉毀損罪 | 名誉毀損罪とは、公然と具体的な事実を示して人の社会的評価を下げる行為に、最大3年の拘禁刑または50万円以下の罰金を科す刑法230条の犯罪で、真実であっても成立する。 |
| 債務不履行 | 債務不履行とは、契約で約束したことを正当な理由なく守らない行為のことで、約束を破った側は損害賠償や契約解除を求められる立場になる。 |
| 信用情報機関 | 信用情報機関とは、個人のローン・クレジットカードの契約・返済・延滞状況などを記録・管理し、金融機関が審査のときに照会する第三者機関のことで、日本にはCIC・JICC・KSCの3機関がある。 |
| 業務上横領罪 | 業務上横領罪とは、会社や組織から「預かって管理する立場」にある者が、その財物を自分のものにする行為に最大10年の拘禁刑を科す刑法253条の犯罪だ。 |
この手口が実際に使われた事件
| 事件 | この記事との関連 |
|---|---|
| M資金詐欺 | M資金詐欺とは、 GHQが日本から接収した秘密資金が今も極秘に運用されている と騙り、選ばれた経営者にのみ数千億円規模の融資を行うと持ちかけ、仲介手数料を詐取する手口である |
| アンソニー・ウィナー | 民主党の下院議員だったアンソニー・ウィナーは、2011年にTwitterで 不適切な自撮り写真 を複数の女性に送っていたことが発覚し、議員を辞職した |
| リンダ・ハザード | リンダ・ハザードは医学の正規の学位を持たないまま 飢餓療法 を提唱し、薄いスープとオレンジだけの食事と数時間に及ぶ浣腸で患者を治療すると称した |
【出典】参考URL
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5875/:刑法233条・信用毀損罪と業務妨害罪の区別・名誉毀損罪との比較の根拠
https://roudou-sos.jp/sns-defamation/:刑法233条の条文・SNS上の信用毀損事例の根拠
https://tangram.gr.jp/blog/detail/20260325125005/:偽計業務妨害罪の近年の事例・法定刑の根拠


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