不当利得返還請求とは?払いすぎや詐欺金を取り戻す

法規・刑罰・代償
不当利得返還請求とは?ざっくりと3行で
  • 不当利得返還請求とは、正当な理由もないのに他人の損失で得をした者に対して、その利益を返すよう求める権利のことだ。
  • 払いすぎや誤送金、無効な契約でお金を取られた人が、相手にわざとや落ち度があったかを問わずに法律上の原因なく相手が得た利益の返還を求められる仕組みになっている。
  • これを知っておけば、過払い金や詐欺で渡したお金を取り戻す土台になるとわかる。

【深掘り】これだけは知っておけ

不当利得返還請求の強みは「相手の故意や過失を立証しなくてよい」点です。不法行為の損害賠償では加害者の落ち度を証明する必要がありますが、不当利得では正当な理由なく得た利益という事実さえ示せれば、返還を求められます。

不当利得返還請求は、民法703条以下に定められた制度です。条文は、法律上の原因なく他人の財産や労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益を返還する義務を負うと規定しています。ポイントは「法律上の原因がない」という部分です。たとえば、二重に代金を払ってしまった、振込先を間違えて他人の口座にお金を送ってしまった、契約が無効・取消しになって支払う必要がなかったお金を払っていた、といった場面で、受け取った側はそれを返さなければなりません。受け取った側に悪意や落ち度があったかどうかは、請求が成立するかには関係しません。だからこそ、相手の故意・過失の立証が難しいケースでも使いやすい救済手段になります。

ただし、返す範囲は相手の認識によって変わります。受け取った側が法律上の原因がないことを知らなかった場合(善意)は、現に残っている利益(現存利益)だけを返せばよいとされます。すでに使ってしまって手元に残っていなければ、その分は返さなくてよいことがあります。一方、法律上の原因がないと知っていた場合(悪意。民法704条)は、受けた利益に利息を付けて返還し、なお損害があれば賠償する責任まで負います。つまり、わざと不当に利益を得た相手ほど、重い返還義務を負う仕組みです。請求権には消滅時効があり、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で時効消滅するのが原則です。時効の完成を防ぐには、内容証明郵便による催告(1回で6か月の猶予)や、調停・訴訟の申立てといった手段があります。

詐欺被害でとくに重要なのが、不法行為に基づく損害賠償との使い分けです。不当利得は立証が比較的シンプルで元本の回収に向きますが、慰謝料までは含まれません。慰謝料や付随損害まで取りたいなら不法行為のほうが有利です。両方が成り立つ場合も多く、どちらで請求するか、あるいは併せて主張するかは、回収の確実性と取れる範囲のバランスで決めます。

不当利得返還請求は、過払い金の返還、誤送金の取り戻し、無効・取消しとなった契約に基づく給付の回収など、お金を取り戻す多くの場面で土台になります。詐欺被害でも、だまし取られたお金は法律上の原因のない利得として返還を求められます。もっとも、相手にすでに財産が残っていなかったり、所在をくらませていたりすると、権利があっても現実の回収は難しくなります。請求の前後で相手の財産状況を把握し、必要なら仮差押えで財産を保全することも検討すべきです。自分のケースで不当利得・不法行為・契約取消しのどれが最適か、また時効が迫っていないかは判断が難しいため、証拠を整えたうえで法テラスや弁護士に相談し、最も回収可能性の高い道を選ぶことが肝心です。

善意・悪意で変わる返還義務

受け取った側の状態返還の範囲根拠
善意(理由がないと知らなかった)現に残っている利益(現存利益)のみ民法703条
悪意(理由がないと知っていた)受けた利益+利息、なお損害があれば賠償民法704条

不当利得が問題になる典型場面

場面内容
過払い金上限を超えて払いすぎた利息の返還を求める。
誤送金振込先を間違えて送ったお金の返還を求める。
無効・取消しの契約支払う必要のなかった代金の返還を求める。
詐欺被害法律上の原因なくだまし取られたお金の返還を求める。

典型的なフレーズ・文脈

受け取った金を使い切ったと言い張り返還を拒む相手のイラストアイコン
詐欺師

もらったお金はもう全部使ってしまいましたよ。手元に残っていないんだから返しようがない。それに、あなたが自分の意思で振り込んだんでしょう。今になって返せと言われても、こちらには関係のない話です。

使い切ったから返せないと主張して返還を逃れようとする相手の発言です。しかし、法律上の原因がないと知りながら受け取った悪意の場合は、利息を付けてでも返す義務を負います。

不当利得返還請求による過払い金返還を伝えるニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

払いすぎた利息は、不当利得返還請求によって取り戻せる場合があります。法律上の原因なく相手が得た利益は、本人の落ち度の有無を問わず返還の対象となります。時効があるため、早めの確認が呼びかけられています。

過払い金問題を取り上げる情報番組のキャスターが、不当利得返還請求の仕組みと時効への注意を伝える場面を想定した表現です。

不当利得と不法行為の使い分けを助言する弁護士のイラストアイコン
専門家

元本を確実に取り戻したいなら、相手の落ち度を立証しなくてよい不当利得返還請求が使いやすいです。慰謝料まで求めたいなら不法行為も併せて検討します。相手の財産が逃げそうなら、先に仮差押えで押さえる手も。証拠を持ってご相談ください。

弁護士が、不当利得返還請求と不法行為の使い分けや仮差押えとの組み合わせという法的手段を助言する場面を想定しています。

困ったときの相談窓口

払いすぎや詐欺などでお金を取り戻したい場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00不当利得返還など金銭回収の法的相談
消費者ホットライン188地域の窓口に準ずる悪質商法・被害回復の相談
金融サービス利用者相談室0570-016811平日 10:00〜17:00過払い・金融取引トラブルの相談

【まとめ】3つのポイント

  • もらいすぎは返すのが筋:不当利得返還請求は、正当な理由なく他人の損失で得をした相手に、その利益の返還を求める権利です。
  • 落ち度の立証がいらない:不法行為と違い相手の故意過失を問わないため、過払い金や誤送金、詐欺の元本回収に使いやすいのが強みです。
  • 悪意の相手には重い義務:理由なしと知って受け取った相手は利息付きで返す義務を負います。時効に注意し、証拠を持って法テラスへ相談を。

よくある質問

Q
相手が「もう使ってしまった」と言えば、取り戻せないのですか?
A

相手の認識によります。正当な理由がないと知らずに受け取った善意の相手なら、手元に残っている利益だけを返せばよいとされ、使い切った分は返さなくてよいことがあります。一方、理由がないと知りながら受け取った悪意の相手は、使ったかどうかに関係なく、利息を付けて返す義務を負います。詐欺の加害者は通常この悪意にあたります。

Q
間違えて他人の口座に振り込んでしまいました。返してもらえますか?
A

請求できます。誤って振り込まれたお金は、受け取った人にとって法律上の原因のない利得なので、不当利得として返還を求められます。まずは振込先の金融機関に連絡し、組戻しの手続きを依頼してください。相手が応じない場合は、不当利得返還請求として法的手続きを取ることになります。なお、誤送金と知りつつ引き出して使うと、別途、刑事責任を問われることもあります。

Q
不当利得返還請求に時効はありますか?
A

あります。原則として、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早いほうで時効消滅します。時効が迫っているときは、内容証明郵便で催告すれば1回に限り6か月延長され、民事調停や訴訟の申立てでも時効の進行を止められます。回収を考えているなら、早めに動くに越したことはありません。

Q
不当利得返還請求と不法行為との違いは何ですか?
A

立証のハードルと取れる範囲が違います。不当利得返還請求は、相手の故意過失を問わず、正当な理由なく得た利益の返還を求めるもので、立証が比較的シンプルです。ただし請求できるのは原則として利得した範囲です。不法行為は、相手の故意過失の立証が必要な代わりに、慰謝料など損害全般の賠償を求められます。元本を確実に取り戻すなら不当利得、慰謝料まで狙うなら不法行為、と使い分けます。

【出典】参考URL

https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20105/:民法703条の要件・善意悪意による返還範囲・704条・時効と中断方法の根拠
https://legalsearch.jp/portal/column/unlawful-conduct/:不当利得と不法行為の関係・選択の根拠
https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20317/:不法行為との比較(故意過失の要否)の根拠

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