ADRとは?裁判より速く安い紛争解決の仕組み

法規・刑罰・代償
ADRとは?ざっくりと3行で
  • ADRとは、裁判所で白黒つける訴訟の代わりに、中立な第三者を間に挟んで話し合いや仲裁でトラブルを解決する裁判外の手続きのことだ。
  • トラブルを抱えた人が、裁判より早く安く、しかも非公開でその分野の専門家に間に入ってもらって柔軟に解決できる仕組みになっている。
  • この仕組みを知っておけば、金融や消費者トラブルで、訴訟以外にも国が認めた信頼できる解決ルートがあるとわかる。

【深掘り】これだけは知っておけ

ADRの肝は「裁判ではないが、国がお墨付きを与えた信頼できる解決手段」という点です。とくに法務大臣の認証を受けた認証ADRには、利用すると時効の完成が猶予されるなど、訴訟に近い法的効果が認められています。

ADRは英語のAlternative Dispute Resolutionの略で、日本語では裁判外紛争解決手続と呼ばれます。訴訟手続によらずにトラブルを解決する方法を広く指し、中身は大きく分けて三つあります。当事者の話し合いを第三者が仲介するあっせん、調停人が間に入って合意を促す調停、そして当事者が結論を第三者に委ねてその判断に従う仲裁です。いずれも、裁判のように裁判官が一方的に勝敗を決めるのではなく、その分野に詳しい専門家が中立の立場で関与し、当事者の納得を重視して解決を図る点に特徴があります。

運営する機関は、司法機関・行政機関・民間機関に分かれます。このうち民間が行うADRについては、利用者が安心して使えるよう、ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律、2007年4月1日施行)に基づく認証制度が設けられました。法務大臣が、専門的人材を確保しているか、当事者と利害関係のある者が調停人にならない仕組みがあるかといった基準を審査し、クリアした事業者を認証します。この認証を受けた事業者は「かいけつサポート」と呼ばれ、その手続きには時効の完成猶予や訴訟手続の中止といった法的効果が認められます。つまり、ADRで話し合っている間に時効が完成して権利を失う、といった不利益を避けられるわけです。利点は明確で、訴訟が半年から数年かかるのに対しADRは目安3回・3か月程度で終わることが多く、費用も抑えられ、手続きが非公開のため争いの存在自体を知られたくない場合にも向いています。

消費者にとって身近なのは、業界ごとの専門ADRです。金融トラブルでは金融ADR(指定紛争解決機関)、交通事故では日弁連交通事故相談センター、保険では生命保険協会・日本損害保険協会の窓口などがあります。事業者がこれらに加入していれば、いきなり裁判をせずとも、中立の専門機関を通じて解決を求められます。

注意したいのは、ADRはあくまで当事者の合意を土台にした手続きであるため、相手が話し合いのテーブルに着かなければ成立しないという点です。仲裁のように最初から第三者の判断に従うと合意していれば結論は出ますが、あっせんや調停では相手が応じなければ解決に至りません。また、認証を受けていない民間業者が「ADR」を名乗っているケースもあるため、利用前に法務省の「かいけつサポート」一覧で認証機関かどうかを確認するのが安全です。金融や投資のトラブルで業者とこじれたときは、まず金融ADRや消費生活センターに相談し、自分のケースに合った解決ルートを選ぶとよいでしょう。

ADRの3つの手続きの違い

手続き内容結論の決まり方
あっせん第三者が当事者の話し合いを取り持つ当事者の合意による
調停調停人が間に入り合意案を示す当事者の合意による
仲裁当事者が結論を仲裁人に委ねる仲裁人の判断(仲裁判断)に従う

典型的なフレーズ・文脈

認証を受けていないのにADRを名乗り解決をうたう悪質業者のイラストアイコン
詐欺師

うちは独自のADR機関ですから、裁判よりも確実にあなたの借金を減額できます。まずは手続費用として5万円をお振り込みください。国の制度に基づいた正式なものなので、安心してお任せいただけますよ。

法務大臣の認証を受けていないのに、いかにも公的な制度であるかのようにADRを名乗り、前払いの費用をだまし取ろうとする手口です。本物の認証ADRかは法務省のかいけつサポート一覧で確認できます。

ADRの利用促進を紹介するニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

裁判によらずトラブルを解決するADR、裁判外紛争解決手続の利用が広がっています。法務大臣の認証を受けた機関なら、時効の完成猶予などの法的効果もあり、訴訟より早く非公開で解決できる選択肢として政府も活用を呼びかけています。

政府広報をもとに、暮らしの法律情報番組のキャスターがADRの利点を紹介する場面を想定した表現です。

金融ADRの活用を助言する消費生活相談員のイラストアイコン
専門家

金融商品のトラブルで業者と話がこじれたら、いきなり裁判を考える前に金融ADRを検討してください。中立の専門機関が間に入ってくれますし、利用は無料か低額です。どこに相談すべきか分からなければ、まず消費生活センターで整理してもらいましょう。

消費生活相談員が、金融トラブルの発覚後の対処として、認証ADRや金融ADRの活用を助言する場面を想定しています。

ADRの歴史

ADRは、司法制度改革の流れの中で、裁判と並ぶ紛争解決の選択肢として法的な裏付けを与えられ、広がってきました。その歩みを振り返ります。

出来事
2001年司法制度改革審議会の意見書で、ADRを裁判と並ぶ魅力的な選択肢として拡充すべきと提言される。
2007年ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)が施行され、法務大臣の認証制度が始まる。認証第1号は日本スポーツ仲裁機構だった。
2010年金融商品取引法などに基づく金融ADR制度が始まり、金融分野の紛争解決機関が指定される。
現在仲裁法の改正で暫定保全措置命令の強制執行が可能になるなど、ADRをより実効的にする見直しが続いている。

困ったときの相談窓口

業者とのトラブルで解決方法に悩む場合や、金融・消費者問題でADRの利用を検討する場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
消費者ホットライン188地域の窓口に準ずる消費者トラブル・解決機関の案内
金融サービス利用者相談室0570-016811平日 10:00〜17:00金融ADRなど金融トラブルの相談
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00解決手段の選択など法的相談

【まとめ】3つのポイント

  • 裁判じゃない解決の本道:ADRは、あっせん・調停・仲裁という形で、専門家を間に挟んで話し合いで解決する裁判外の手続きです。
  • 認証ADRは効力も本物:法務大臣認証のかいけつサポートなら、時効の完成猶予などの法的効果があり、早く安く非公開で解決できます。
  • 名乗りに注意、まず確認:認証を装う悪質業者もいます。利用前に法務省の一覧で認証機関か確認し、金融トラブルは金融ADRや188へ相談を。

よくある質問

Q
ADRを使うと、裁判と比べてどんな点で有利ですか?
A

スピード・費用・非公開性の3点が主な利点です。訴訟は半年から数年かかることもありますが、ADRは目安3回・3か月程度で終わることが多く、費用も抑えられます。手続きが非公開なので、争いの存在自体を知られたくない場合にも向きます。さらに認証ADRなら、利用中は時効の完成が猶予され、権利を失う心配も減らせます。

Q
本物の認証ADRかどうかは、どう見分ければいいですか?
A

法務省の認証ADRポータル「かいけつサポート」で、認証を受けた事業者の一覧を確認できます。本物の認証機関には認証番号が付されています。逆に、独自のADR機関を名乗りつつ前払いの高額な費用を求めてくる相手は要注意です。借金減額などをうたう勧誘で費用を先払いさせる手口は、認証の有無を確かめることで見抜けます。

Q
相手がADRの話し合いを拒否したらどうなりますか?
A

あっせんや調停は当事者の合意が前提なので、相手がテーブルに着かなければ解決には至りません。その場合は手続きが打ち切られ、改めて訴訟を検討することになります。ただし、あらかじめ契約で仲裁による解決を取り決めていた場合は、当事者は仲裁人の判断に従う義務があり、相手の意向にかかわらず結論が出ます。

Q
ADRと民事調停との違いは何ですか?
A

運営する主体が違います。民事調停は簡易裁判所という公的機関が行う手続きで、調停委員会が関与します。ADRは、裁判所以外の機関、とくに法務大臣の認証を受けた民間機関などが行う手続きの総称で、業界ごとの専門家が関与する点に強みがあります。広い意味では、裁判所の民事調停もADRの一種に含まれると整理されることもあります。

【出典】参考URL

https://www.gov-online.go.jp/article/201507/entry-8714.html:ADR法・法務大臣認証制度・認証基準の根拠
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%81%E5%88%A4%E5%A4%96%E7%B4%9B%E4%BA%89%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E6%89%8B%E7%B6%9A:2007年4月1日施行・認証第1号・ADR機関の分類の根拠
https://minkanchotei.or.jp/company/about_adr.html:簡便・短期間(3回3か月)・非公開などの利点・2001年意見書の根拠
https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/adr.htm:認証ADRの時効中断・訴訟中止の法的効果の根拠
https://www.moj.go.jp/content/001414209.pdf:仲裁の暫定保全措置命令の強制執行に関する根拠

コメント

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