スティーヴン・ジェイ・ラッセルとは?脱獄王の全貌

詐欺事件
スティーヴン・ジェイ・ラッセルとは?脱獄王の全貌を3行で要約
  • 元警察官のスティーヴン・ジェイ・ラッセルはIQ169の頭脳で弁護士やCFOに成りすまし、80万ドルを横領するなど複数の詐欺を繰り返した
  • 刑務所で出会った恋人フィリップ・モリスのために合計4回の脱獄を成功させ、偽の保釈指示書やエイズの偽装死まで駆使した
  • テキサス州に総刑期144年を言い渡され、23時間の監視体制下で収監中。実話を基にジム・キャリー主演で映画化された

どんな刑務所にも弱点はある。必ず脱獄できるんだ――。スティーヴン・ジェイ・ラッセルはそう豪語していました。そしてその言葉通り、彼は4度にわたって刑務所のシステムを出し抜いてみせたのです。

ラッセルの物語が他の詐欺師と一線を画すのは、その犯罪の動機が金でも権力でもなく、ひとりの男性への愛だったという点です。この記事では、警察官から天才詐欺師へと転身し、愛する人のために脱獄を繰り返した男の実話を解説します。

ラッセルの経歴と犯罪への転落

スティーヴン・ジェイ・ラッセルとは、1957年9月14日にアメリカで生まれた詐欺師であり、4回の脱獄で知られるアメリカ犯罪史上最も有名な脱獄王のひとりです。

ラッセルは生まれてすぐに養子に出され、食品製造会社を経営する夫婦のもとで育てられました。成人後はバージニアビーチで警察官となり、警察署長の秘書と結婚して娘も授かっています。大手食品会社シスコ(Sysco)に転職して成功を収め、外から見れば順風満帆な人生でした。

しかし、ある日自動車事故で重傷を負い命を失いかけたことが転機となります。ラッセルは自分に正直に生きることを決意し、自身がゲイであることをカミングアウト。妻と離婚し、男性の恋人との生活を始めました。恋人との贅沢な暮らしを維持するために詐欺に手を染め始め、保険金詐欺などを繰り返すようになっていきます。警察官時代の知識が、皮肉にも犯罪に活かされることになったのです。

刑務所での運命の出会い

詐欺罪で服役中のラッセルは、刑務所内でフィリップ・モリスという受刑者と出会い、一目惚れしました。

フィリップは金髪に青い目の穏やかな性格の青年で、ラッセルはすぐに彼に夢中になりました。ラッセルは自分を服役中の弁護士だと偽り、フィリップの民事上の問題について助言を始めます。さらにその頭脳と交渉力を駆使して、フィリップと同じ2人部屋の独房に移動することにも成功しました。

出所後、ラッセルはフィリップとの生活を豊かにするために再び詐欺に手を染めます。学歴を詐称して北米医療管理法人(NAMM)のCFO(最高財務責任者)に就任し、約80万ドル(約8000万円)を横領。贅沢な暮らしを送りましたが、やがて逮捕されてしまいます。

何も知らなかったフィリップまでが共犯として逮捕されたことで、ラッセルのそれまでの言葉が全て嘘だったことが露呈しました。弁護士の肩書きも、経歴も、収入源の説明も――すべてが嘘だったのです。

4回の脱獄とその手口

ラッセルはフィリップに会うため、あるいは彼を助けるために、合計4回の脱獄を成功させています。そのどれもが常識では考えられない手口でした。

偽の保釈指示書による脱獄

ラッセルは刑務所内で保釈指示書のひな型を暗記し、外部の友人に郵送してパソコンで作成させました。完成した偽の書類を正式な書類に紛れ込ませることで、あたかも正規の手続きが行われたかのように見せかけ、堂々と正面玄関から歩いて出ていったのです。

緑のペンで囚人服を染めた脱獄

ラッセルは刑務所の美術講座を受講し、4ヶ月間ひたすら木や草の絵を描き続けました。その目的は緑色のペンを大量に入手することでした。110本もの緑のペンをベッドの下に隠し、インクを溶かした水に囚人服を浸すことで、医療スタッフの制服そっくりの色に染め上げたのです。この制服を着て、医療スタッフに扮して刑務所を後にしました。

エイズの偽装死による脱獄

最も大胆だったのは、エイズに感染したと偽り、自らの死を偽装した脱獄です。ラッセルは過酷な減量を行ってエイズ末期患者のような外見を作り上げ、医療施設への移送を勝ち取りました。その後、治験のオファーを装って別の病院への転院を画策し、最終的に死亡したと報告させたのです。

フィリップのもとには死亡の知らせが届き、彼は監房で涙に暮れました。しかしその後、弁護士として面会に現れた人物は――死んだはずのラッセルその人でした。

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ラッセルの脱獄には毎回、13日の金曜日が選ばれていました。これはフィリップの誕生日が13日の金曜日だったからだそうです。映画の監督が刑務所のラッセルに次の13日の金曜日はいつかと聞いたところ、即答したというエピソードが残っています。

彼の犯罪は決して許されるものではありませんが、その動機が一貫して恋人への愛だったという点で、他の詐欺師とは異質な存在です。

判決と現在

度重なる脱獄と詐欺に業を煮やしたテキサス州は、ラッセルに異例の総刑期144年を言い渡しました。

現在、ラッセルはテキサス州の刑務所で23時間の監視体制のもとに収監されています。1日に許されるのは1時間のシャワーと運動のみで、他の受刑者から完全に隔離された状態です。フィリップ・モリスは既に釈放されていますが、ラッセルの独房生活は続いています。

ラッセルはもうフィリップや周りの人を傷つけたくないから、脱獄は絶対にしないと語っているとされています。ただし、犯罪行為そのものへの反省よりも、フィリップを愛しすぎてしまったことへの反省のほうが大きいという点が、彼らしいと言えるでしょう。

2009年にはラッセルの実話を基にした映画フィリップ、きみを愛してる!(I Love You Phillip Morris)が公開されました。ジム・キャリーがラッセル役、ユアン・マクレガーがフィリップ役を演じ、リュック・ベッソンが製作総指揮を務めています。フィリップ・モリス本人は映画にカメオ出演し、弁護士役で登場しました。

まとめ

  • ラッセルは弁護士やCFOに成りすまして80万ドルを横領し、恋人フィリップ・モリスのために4回の脱獄を成功させた天才詐欺師だ
  • 偽の保釈指示書、囚人服の染色、エイズの偽装死など常識では考えられない手口で刑務所システムを翻弄した
  • テキサス州に総刑期144年を言い渡され23時間監視下で収監中。愛のための犯罪は美談にはならない――しかしその執念は、詐欺師の心理を理解する上で重要な事例だ

よくある質問

Q
ラッセルは現在も刑務所にいますか?
A

テキサス州の刑務所に収監されています。総刑期144年が言い渡されており、23時間の監視体制のもとで他の受刑者から完全に隔離された状態で過ごしています。脱獄の常習犯であることから、極めて厳重な管理下に置かれています。

Q
フィリップ・モリスはどうなりましたか?
A

フィリップ・モリスは既に釈放されています。映画化の際にはカメオ出演し、弁護士役で登場しました。インタビューでは、映画を48回は観たと笑いながら語り、自分が被害を受けたということがきちんと描かれていて嬉しいとコメントしています。

Q
映画はどこで観られますか?
A

2009年のフランス映画フィリップ、きみを愛してる!(I Love You Phillip Morris)として映画化されています。ジム・キャリーとユアン・マクレガーのダブル主演で、Amazonプライムビデオなどの動画配信サービスで有料視聴が可能です。DVDやBlu-rayでも入手できます。

【出典】参考URL

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