- 米有力誌ニュー・リパブリックの若手スター記者だったグラスが、41本の記事のうち27本を捏造していたことが1998年に発覚した
- 架空の人物、架空の企業、架空の出来事を作り上げ、取材メモや名刺、ウェブサイトまで偽造して検証をかわしていた
- 事件は2003年に映画ニュースの天才として映画化。グラスは弁護士資格の取得も試みたが倫理上の理由で認められなかった
23歳にしてアメリカの有力政治誌のスター記者となり、センセーショナルな特ダネを次々と発表する若きジャーナリスト。しかし彼が書いた記事に登場する人物も、企業も、出来事も、大半が彼の頭の中だけに存在するものでした。
スティーブン・グラスは、1995年から1998年にかけてニュー・リパブリック誌で活動した元ジャーナリストです。彼が書いた41本の記事のうち、27本が部分的または完全に捏造されていたことが明らかになり、アメリカのジャーナリズム史上最大級のスキャンダルとなりました。
グラスの経歴と捏造の始まり
スティーブン・グラスとは、幼少期から高い成果を求められる環境で育ち、承認欲求が捏造の動機となった人物です。
1972年9月15日生まれ。高度な教育を受けた両親のもとで育ち、幼い頃から学業で活躍するという大きなプレッシャーに直面していました。ペンシルベニア大学でジャーナリズムに目覚め、卒業後にニュー・リパブリック誌のインターンとして入社。そこから徐々にはしごを登り、23歳で同誌のスター記者の地位を獲得しています。
グラスの記事は読者を引きつけるセンセーショナルな内容が多く、編集者からの信頼も厚いものでした。しかし記事の事実関係に疑問を呈する声は早い段階からあったものの、当時の編集長マイケル・ケリーのサポートもあり、捏造は3年間にわたり見逃されました。
捏造の手口
グラスの捏造は、記事の登場人物、情報提供者、出来事の全てを架空に作り上げるという大胆なものでした。
単なる事実の誇張ではなく、存在しない人物のコメント、存在しない企業のプロフィール、一度も起きていない出来事を組み合わせて記事を構成していたのです。さらに驚くべきことに、編集者のファクトチェックをかわすために、架空の取材メモ、偽の名刺、架空企業のウェブサイトまで作成していました。
裁判で捏造の動機を問われたグラスは、過小評価されてきた自分の能力を認めてほしかったと語っています。彼にとって記事の捏造は、承認欲求を満たすための手段だったのです。

グラスの事件で最も恐ろしいのは、偽の名刺やウェブサイトまで作成してファクトチェックをかわしていた点です。検証する側が一次情報の偽造まで想定していなかったことが、3年間の捏造を可能にしました。
現代のフェイクニュース問題にも通じる教訓です。SNS上の情報だけでなく、一次情報源そのものが偽造されている可能性を常に念頭に置く必要があります。
発覚と崩壊
捏造が発覚したきっかけは、フォーブス誌のジャーナリストによる事実確認でした。
1998年、グラスが書いたハッカーに関する記事の内容を、フォーブス誌のアダム・ペネンバーグが検証したところ、記事に登場する企業も人物も全て架空であることが判明しました。この暴露を受けてニュー・リパブリック誌は内部調査を実施し、グラスが書いた41本の記事のうち約27本が捏造であったことを明らかにしています。
グラスは即座に解雇されました。その後、ジョージタウン大学法科大学院で法学博士号を取得し、ニューヨーク州の司法試験にも合格しましたが、倫理上の理由で弁護士資格は認められませんでした。2014年にカリフォルニア州最高裁判所も全会一致で弁護士資格を拒否しています。
現代に通じる教訓
グラスの事件は、メディアのファクトチェック体制の限界と、読者のメディアリテラシーの重要性を示しています。
優秀な記者が書いたセンセーショナルな記事であっても、ファクトチェックが形骸化していれば捏造は見抜けません。現代のSNS時代では、個人が発信する情報にはファクトチェック自体が存在しないことが多く、グラスの事件以上に虚偽情報が拡散しやすい環境にあります。
読者の立場でできることは、単一の情報源を鵜呑みにしない姿勢です。同じ出来事について複数のメディアが報じているか、情報源は明示されているか、話がうますぎないかを確認する習慣が、フェイクニュースへの最大の防御策となります。
まとめ
- グラスは41本中27本の記事を捏造し、架空の人物・企業・出来事を作り上げてアメリカの有力誌を3年間にわたり欺いた
- 偽の名刺やウェブサイトまで作成してファクトチェックを組織的にかわした手口は、一次情報源の検証の重要性を教えている
- 単一の情報源を鵜呑みにせず複数メディアでの裏付け確認を習慣化することが、フェイクニュース時代の自衛策だ
よくある質問
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Qグラスの事件は映画化されていますか?
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A
2003年に映画ニュースの天才(原題:Shattered Glass)として映画化されています。グラス役はヘイデン・クリステンセンが演じました。グラス自身も同年に自伝的小説The Fabulistを発表しています。
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Qグラスの現在は何をしていますか?
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A
カリフォルニア州の法律事務所でパラリーガルとして働いているとされています。弁護士資格は倫理上の理由でカリフォルニア州最高裁判所に拒否されたため、弁護士としては活動できません。2018年に妻のジュリー・ヒルデン(弁護士・作家)が亡くなっています。
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Qニュー・リパブリック誌はどう対応しましたか?
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A
グラスを即座に解雇した上で、当時の編集長チャールズ・レーンの指揮のもと徹底した内部調査を実施しました。グラスの全記事を検証し、捏造の範囲を特定した結果を読者に公表しています。ジョージ誌、ローリングストーン誌、ポリシー・レビュー誌など、グラスが寄稿していた他誌も同様の検証を行い、捏造記事を特定しました。
【出典】参考URL
- Wikipedia:スティーブン・グラス:経歴、捏造事件の概要
- jmedia.wiki:スティーブン・グラスの詳細な経歴と事件後の経緯


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