ジェイソン・ブレアとは?NYタイムズ史上最大の記事捏造事件

詐欺事件
ジェイソン・ブレアとは?NYタイムズ史上最大の記事捏造事件を3行で要約
  • ニューヨーク・タイムズの記者ブレアが2002年10月以降に執筆した73本中約36本で他紙からの盗用・記事捏造を行っていた
  • 取材先に行かず携帯電話やPCで発信地を偽装し、他紙の記事をオンラインで収集してコピペで記事を仕上げていた
  • NYタイムズは152年の歴史で最も深刻な不祥事と認め、編集主幹と編集局長が辞任する事態に発展した

ベセスダ海軍病院のイラク負傷米兵のベッドサイドから送られた渾身のルポルタージュ。しかし記者は、そこにいませんでした。最初の一語目から嘘だったのです。

ジェイソン・ブレアは、2003年にニューヨーク・タイムズで発覚した大規模な記事捏造・盗用事件の主人公です。わずか4年の勤務期間中に73本の記事のうち約36本で捏造や他紙からの盗用を行い、アメリカを代表する新聞の152年の歴史で最も深刻な不祥事として記録されています。

ブレアの経歴と急速な出世

ジェイソン・ブレアとは、インターンからわずか4年で全米担当記者に昇格した異例のスピード出世を遂げた人物です。

1976年3月23日、メリーランド州に生まれました。1998年にメリーランド大学カレッジパーク校在学中にニューヨーク・タイムズにインターンとして記事を寄稿し始め、2001年に常勤記者に昇格。2002年には全米担当の部署に配属されました。手数が多く長時間労働を厭わない姿勢で同僚の評判も良かったとされています。

しかし記事の訂正が異常に多いことは早い段階から問題視されており、書くのを止めさせろと指摘する編集者もいたと報じられています。それでもブレアは昇格を続けました。

捏造の手口

ブレアの手口は、現場に行かず他紙の記事をオンラインで収集し、あたかも現地取材したかのように記事を作成するというものでした。

ニューヨークの自宅からの電話取材で済ませた記事に、メリーランド州ハントバレー発と偽の発信地を記載していました。携帯電話やPCを使って発信地を偽装し、あたかも全米各地で取材しているように見せかけていたのです。

特に悪質だったのは、テキサス州のサンアントニオエクスプレスニュースの記者マカレナ・ヘルナンデスが丁寧に現地取材して書いた記事を、ほぼそのまま盗用して自分の名前で発表していたことです。イラク戦争で戦死した兵士の家族に関する記事でこの盗用が指摘されたことが、事件発覚のきっかけとなりました。

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ブレアの事件で注目すべきは、このように不注意な人間が組織的な詐欺を行えるなどと、誰も思ってもみなかったというNYタイムズ自身の検証コメントです。名門新聞社であっても、内部の人間が組織的に嘘をつく可能性を想定していなかったのです。

これは企業の内部不正にも通じる教訓です。信頼している社員こそ不正を行う可能性があるという前提で、検証システムを構築する必要があります。

発覚とその後

2003年5月1日にブレアは辞職し、NYタイムズは4ページにわたる検証記事を掲載しました。

NYタイムズは記者5人、リサーチャー2人による調査チームを編成し、ブレアの全記事を検証しました。その結果を2003年5月11日付の紙面で4ページにわたり公表し、152年の歴史の中で極めて深刻な不祥事であると認めています。当時の編集主幹と編集局長ホゥエル・レインズが辞任する事態に発展しました。

ブレアは事件後、自叙伝を出版しています。その中で、嘘をついて、ついて、つきまくってやった、発覚を一日、一日後らせるしかなかったと語りました。その後は大学に戻り、2007年からライフコーチとして活動しています。

まとめ

  • ブレアは取材先に行かず他紙の記事を盗用・捏造し、NYタイムズの73本中36本の記事で不正を行った
  • NYタイムズは152年の歴史で最も深刻な不祥事と認め、編集幹部が辞任。徹底した自己検証で名誉回復を図った
  • 信頼する内部の人間による不正は最も発見が遅れる類型の詐欺。記事や報告書の検証システムは、信頼とは別に構築すべきだ

よくある質問

Q
ブレアの昇格が異常に早かった理由は?
A

複数の要因が指摘されています。ブレアがアフリカ系アメリカ人であったため、彼の昇格を批判すると人種問題に発展する可能性があり、スタッフが目をつむる傾向がありました。また、当時の編集局長が多様性推進に熱心だったことも一因とされています。ただし、ブレア自身の手数の多さや行動力が評価されていた面もあります。

Q
スティーブン・グラスの事件との違いは?
A

グラスが架空の人物や企業を一から作り上げる完全な捏造だったのに対し、ブレアは主に他紙の記事の盗用と取材地の偽装を行っていました。グラスは偽のウェブサイトまで作成してファクトチェックをかわしたのに対し、ブレアは訂正記事の多さから問題視されていたにもかかわらず、組織の対応が遅れた点が特徴的です。

Q
NYタイムズは信頼を回復しましたか?
A

回復しています。NYタイムズは4ページにわたる自己検証記事の公表、編集幹部の処分、検証プロセスの強化を実施しました。自ら不祥事を徹底的に検証し公表する姿勢が、逆にジャーナリズムとしての信頼回復につながったと評価されています。

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