取消権とは?詐欺契約をなかったことにする権利

法規・刑罰・代償
取消権とは?ざっくりと3行で
  • 取消権とは、だまされたり脅されたりして結んでしまった契約を、後から一方的に「なかったこと」にできる、被害者を守るための強力な権利だ。
  • 詐欺や強迫で不本意な契約をさせられた人が、取り消すと意思表示するだけで契約を最初にさかのぼって無効にし払ったお金を取り戻せる仕組みになっている。
  • この権利を知っておけば、詐欺的な契約をしてしまっても、期限内なら自力で巻き戻せるという最後の砦を持てる。

【深掘り】これだけは知っておけ

取消権の最大の特徴は「いったん有効に成立した契約を、被害者の意思で初めから無効にできる」点です。詐欺や強迫の被害者は、取り消すと伝えるだけで契約をなかったことにでき、支払ったお金は返してもらえます。ただし、行使できる期限があるのが落とし穴です。

取消権は、民法に定められた、一定の事情があるときに法律行為(契約など)を取り消すことができる権利です。代表的な発生原因は、詐欺・強迫による意思表示(民法96条)、勘違いに基づく錯誤、そして未成年者など制限行為能力者がした行為です。たとえば、うそを信じさせられて偽ブランド品を本物と思って買わされた場合や、脅されて不本意な契約書にサインさせられた場合に、被害者は取消権を行使できます。取り消すと、その契約は民法121条により「初めから無効であったものとみなす」とされ、最初から効果がなかったことになります。すでに代金を払っていれば、相手はそれを不当利得として返還しなければなりません。

ここで決定的に重要なのが期限です。取消権は、追認できる時(だまされたと気づくなど、取り消せる状態になった時)から5年、または契約などの行為の時から20年を経過すると、時効によって消滅します。期限を過ぎると、もう取り消せなくなり、その契約は確定的に有効なものとして残ってしまいます。被害に気づいたら、できるだけ早く取消しの意思を相手に伝えることが肝心です。意思表示は口頭でも法律上は有効ですが、後で「言った・言わない」の争いになるのを防ぐため、内容証明郵便など記録の残る方法で行うのが実務上は安全です。なお、2017年の民法改正では、勘違い(錯誤)による意思表示が、それまでの無効から取消しの対象へと整理されるなど、関連規定が見直されています。

注意すべき限界が「善意の第三者」の保護です。詐欺による取消しは、事情を知らずに過失なく取引に入ってきた第三者には対抗できません(民法96条3項)。たとえば、だまし取られた商品が、何も知らない別の人に転売されてしまうと、その人からは取り戻せない場合があります。一方、強迫による取消しはこうした第三者にも対抗できるため、被害の悪質性に応じて保護の範囲が変わります。

取消権は、悪質商法や詐欺的な勧誘の被害に対する有力な救済手段です。実際の消費者保護の場面では、民法の取消権に加えて、消費者契約法による取消し(不実告知や不退去などを理由とする取消し)や、特定商取引法のクーリングオフなど、より使いやすい制度が用意されていることもあります。どの制度が使えるかは契約の種類や勧誘の態様によって変わるため、自己判断で諦めず、契約書や勧誘時のやり取りの記録を手元に、消費生活センターや法テラスへ相談するのが得策です。期限のある権利だからこそ、被害に気づいたら一日も早く動くことが、お金を取り戻せるかどうかの分かれ目になります。

取消しの主な原因と期限

取消しの原因典型例行使できる期限
詐欺(民法96条)うそを信じさせられた契約追認できる時から5年/行為時から20年
強迫(民法96条)脅されてさせられた契約同上
錯誤重要な点での勘違いによる契約同上
制限行為能力未成年者などが単独でした契約同上

典型的なフレーズ・文脈

契約済みを盾に取消しをさせまいとする悪質な販売業者のイラストアイコン
詐欺師

一度サインした契約はもう取り消せませんよ。あなたが納得して署名したんですから、今さら詐欺だなんて言いがかりです。解約には応じられません。これ以上ごねるなら、こちらにも考えがありますからね。

契約してしまえばもう取り消せないと思い込ませ、被害者の取消権の行使を断念させようとする悪質業者の発言です。実際には詐欺・強迫による契約は期限内なら取り消せます。

取消権による契約の巻き戻しを伝えるニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

消費者庁は、虚偽の説明で契約させられた場合、民法の詐欺による取消権で契約を初めからなかったことにできると注意を呼びかけています。取消権には期限があり、だまされたと気づいてから早めに手続きすることが重要だとしています。

消費者庁の注意喚起をもとに、報道番組のキャスターが取消権の概要と期限の重要性を伝える場面を想定した表現です。

取消しの意思表示を内容証明で行うよう助言する弁護士のイラストアイコン
専門家

取り消すと決めたら、口頭で伝えるだけでなく内容証明郵便で意思表示を残してください。後で言った言わないの争いを防げますし、時効を止める効果も期待できます。民法の取消権のほか消費者契約法も使える場合があるので、契約書を持って相談を。

弁護士が、詐欺被害者に対し、法的手段として取消しの意思表示を確実に残す方法を助言する場面を想定しています。

困ったときの相談窓口

だまされて契約してしまった場合や、契約を取り消せるか不安な場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
消費者ホットライン188地域の窓口に準ずる悪質商法・契約取消しの相談
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00取消し・損害回復の法的相談
警察相談専用電話#9110平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる)詐欺・強迫被害の相談

【まとめ】3つのポイント

  • 契約を巻き戻すリセットボタン:取消権は、詐欺や強迫でさせられた契約を、被害者の意思で初めからなかったことにできる救済の権利です。
  • 使えるのは期限内だけ:気づいた時から5年、行為時から20年で時効消滅します。放置すれば契約は確定的に有効になってしまいます。
  • 気づいたら即、記録に残して相談:取消しは内容証明で残すのが安全です。消費者契約法など別ルートもあるので、契約書を持って188へ。

よくある質問

Q
だまされて契約しました。取り消せばお金は戻ってきますか?
A

原則として戻ります。詐欺による契約を取り消すと、その契約は初めから無効だったことになり、相手は受け取った代金を不当利得として返還する義務を負います。ただし、相手にすでに財産がなかったり、所在をくらませたりしていると、現実の回収が難しくなることもあります。だからこそ、気づいたら早く動くことが重要です。

Q
契約から何年も経っていますが、まだ取り消せますか?
A

期限次第です。取消権は、だまされたと気づくなど取り消せる状態になった時から5年、または契約をした時から20年を過ぎると時効で消滅します。このどちらかを過ぎると、もう取り消せず、契約は確定的に有効なものとして残ります。微妙なケースでは、いつから5年が始まるかの判断が難しいので、早めに専門家に確認してください。

Q
取消しは口で言うだけでいいのですか、書面が必要ですか?
A

法律上は、取消しの意思表示は口頭でも有効です。ただし、口頭だと後で「取消すと言われていない」と相手に争われる危険があります。そこで実務では、内容証明郵便で取消しの意思を伝えるのが定番です。いつ・誰に・どんな内容を伝えたかが公的に記録され、後の紛争で強力な証拠になります。

Q
取消しと無効主張との違いは何ですか?
A

出発点が違います。取消しは、いったん有効に成立した契約を、取消権者が取り消して初めて無効にするもので、行使には5年などの期限があります。無効は、公序良俗違反などで契約が初めから効力を持たない状態で、誰でも主張でき、期間の制限もありません。だまされた契約は通常「取消し」、最初から成り立たない契約は「無効」と整理すると分かりやすいです。

【出典】参考URL

https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20063/:民法96条・詐欺強迫の取消し・善意無過失の第三者保護の根拠
https://smtrc.jp/useful/glossary/detail?n=2067:取消しの遡及効・不当利得返還・取消権の時効(5年20年)の根拠
https://www.agaroot.jp/shiho/column/invalid-cancel/:民法121条「初めから無効」・取消しと解除の違いの根拠
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E7%84%A1%E5%8A%B9%E3%81%A8%E5%8F%96%E6%B6%88:2017年改正での錯誤の取扱い変更の根拠

コメント

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