返報性の原理とは?恩着せで断れなくする詐欺の罠

心理テクニック
返報性の原理とは?ざっくりと3行で
  • 返報性の原理とは、相手から受けた好意や親切に対して、お返しをしなければならないと感じる、人間に備わった自然な心理のことだ。
  • 詐欺師はこれを先に仕掛け、プレゼントや過剰な親切で恩を着せてから断りにくい状態を作って金銭や契約を要求してくる
  • 仕組みを知っておけば、もらったことは断る理由にならないと気づけ、恩着せ型の詐欺に踏みとどまれる。

【深掘り】これだけは知っておけ

返報性の原理のやっかいさは、恩を受けた後の断りにくさが、断ることへの罪悪感として感じられる点です。自分の意思で断っているのに、まるで相手を裏切っているかのような気持ちになる。詐欺師はその感覚を計算して先に仕掛けてきます。

返報性の原理は、社会心理学者ロバート・チャルディーニが著書「影響力の武器」で示した6つの影響原理の一つです。人はほぼすべての文化圏で、他者から受けた好意や恩に対して返したいという義務感を抱きます。1971年に心理学者リーガンが行った実験では、飲み物をもらった被験者は、もらわなかった被験者より多く福引券を買ったことが示されています。好意の返報性のほか、譲歩してもらった場合に自分も譲歩する譲歩の返報性、自己開示に対して開示で返す自己開示の返報性など、いくつかの種類があります。

詐欺師はこの心理を意図的に先に仕掛けます。まず相手に無料のプレゼントや特別な情報、過剰な親切を提供する。受け取った側は自然に義務感を覚え、断りにくい状態になる。そこに投資話や高額商品の契約、個人情報の提供を持ち込むのです。もらってしまったのだから断れない、という感覚が、本来なら断るべき要求を受け入れさせてしまう。先に与えることで、後の要求をすり抜けさせる構造です。

見抜くポイントは、もらったことと断ることは別問題だと切り分けることです。無料でプレゼントを受け取っても、その後の要求に応じる義務はありません。断ることへの罪悪感が芽生えたら、それは返報性の罠が作動しているサインです。受け取ったものは受け取ったまま、要求は要求として別々に判断してください。

とくに警戒したいのは、プレゼントや親切の量が不釣り合いに大きい場合です。まともなビジネスで、見返りなしに高価なものを渡すことはありません。過剰な先行投資は、後で大きな要求を通すための布石である可能性があります。もらってしまった、お世話になってしまったという状況を作られたと気づいたら、その感覚に流されず、要求の中身を改めて冷静に評価し直してください。

返報性の原理が悪用される場面

場面先に与えるもの見抜くポイント
投資・情報商材詐欺無料セミナー・特別情報で恩を着せる無料の提供が不釣り合いに大きい
ロマンス詐欺過剰な親切・愛情で断りにくくする要求前に過剰な投資がある
訪問販売・悪質商法無料点検や試供品で義務感を作る受け取った後に高額契約を迫る

典型的なフレーズ・文脈

返報性の原理を悪用し先に恩を着せて断りにくくする詐欺師のイラストアイコン
詐欺師

これだけ特別な情報を無料でご提供して、こんなに親身になってきた。それなのに断るんですか?私がどれだけあなたのために動いてきたか、分かってもらえませんか。

先に提供した親切を明示して義務感と罪悪感を煽り、断りにくい状態を強化する、返報性の原理を悪用した詐欺の話法です。

恩着せ型の詐欺手口を報じるニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

消費生活センターは、先に無料サービスや親切を提供してから高額契約を迫る手口について、受け取ったことは断る義務には当たらないと呼びかけています。

恩着せ型の詐欺手口を解説する報道番組や、消費生活センターの注意喚起を想定した表現です。

もらったことと断ることを切り分ける大切さを助言する消費生活相談員のイラストアイコン
専門家

もらったことと断ることは別問題です。受け取っても要求に応じる義務はありません。罪悪感を感じたら返報性の罠のサイン。困ったら188へ。

消費生活相談員が、受け取りと断りを切り分ける視点を予防の観点から助言する場面を想定しています。

困ったときの相談窓口

恩着せで断りにくくされ契約や送金をしてしまった場合などは、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
消費者ホットライン188地域の窓口に準ずる契約トラブル・クーリングオフ相談
警察相談専用電話#9110平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる)詐欺被害・悪質な勧誘の相談
法テラス0570-078374平日 9:00〜21:00 / 土 9:00〜17:00法的トラブル・弁護士費用の相談

【まとめ】3つのポイント

  • 正体は恩の義務感:返報性の原理は、受けた好意にお返しをしなければという感覚を生む心理です。
  • 先に与えて断れなくする:プレゼントや親切を先に投資して、後の要求を断りにくい状態にします。
  • もらいと断りは別:受け取ったことは、要求に応じる義務ではありません。罪悪感は罠のサインです。

よくある質問

Q
返報性の原理はなぜ詐欺に悪用されやすいのですか?
A

先に与えるだけで、後の要求を断りにくくできるからです。プレゼントや過剰な親切を受け取ると、人は自然にお返しをしなければという義務感を覚えます。詐欺師はその感覚を計算して先に仕掛け、義務感で断りにくい状態を作ってから本命の要求を持ち込む。受け取った側は、断ることへの罪悪感で判断が曇ってしまうのです。

Q
プレゼントをもらってしまいました。断ったら失礼ですか?
A

失礼ではありません。プレゼントを受け取ったことは、その後の要求に応じる義務ではありません。本当に誠意のある相手なら、断っても関係は続きます。逆に、断ったとたんに態度が変わったり、失礼だと責めたりする相手は、返報性を計算して動いていた可能性があります。受け取ったことへの罪悪感は、要求を断る理由にはなりません。

Q
無料セミナーや試供品をもらったら、その後の勧誘を断りにくいのですが。
A

その断りにくさが、返報性の原理の働いている証拠です。無料のものを提供するコストは、その後の成約で取り戻せる計算があるからこそ提供されています。受け取った恩を感じるのは自然なことですが、それは商品や契約が自分に必要かどうかとは別問題です。必要でないなら、受け取ったことへの申し訳なさを感じながらでも、断って構いません。

Q
返報性の原理と一貫性の原理の違いは何ですか?
A

断りにくくなる理由が違います。返報性の原理は、受けた恩へのお返し義務感で断りにくくなります。一貫性の原理は、一度言ったことやコミットしたことを変えたくないという心理で断りにくくなります。前者は恩の義務感、後者は自分の言葉への責任感が引き金になる点が異なります。どちらもチャルディーニの6原則に含まれます。

コメント

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