ニセ警察詐欺とは?電話一本で全財産を奪う手口

犯行スキーム
ニセ警察詐欺とは?ざっくりと3行で
  • ニセ警察詐欺とは、警察官や検察官になりすまし、口座の不正利用などを口実に現金や金地金をだまし取る特殊詐欺だ。
  • ターゲットの公的機関を疑えない心理を突き、ビデオ通話で偽の警察手帳や逮捕状を見せて資産の保全と称して財産を渡させることで被害が発生する。
  • 警察や検察が電話やビデオ通話で現金・金地金・暗証番号を求めることは絶対にないと知っておけば、入口の一本の電話で立ち止まれる
ニセ警察詐欺で警察官を装う電話からビデオ通話へ誘導され金地金をだまし取られる被害の流れを描いた4コマ漫画
①在宅中の女性へ警察を名乗る電話が入る。②ビデオ通話で偽の警察手帳を見せ資産の確認を迫る。③金地金と現金を手渡した後に詐欺と発覚し数百万円を失う。④賠償罪子が権威を悪用した犯行の構造を冷徹に断じる。

この4コマの女性がだまされた分岐点は、金地金を用意した瞬間ではなく、警察を名乗る声を反射的に信じてしまった最初の一本にありました。ニセ警察詐欺の実行役は、制服や手帳という権威の記号を、電話やビデオ通話ごしに再現します。人は肩書きを提示されると事実確認を飛ばしてしまう傾向があり、その心理の隙が狙われています。

法的に見れば、本物の警察官や検察官が捜査を理由に個人へ現金や金の延べ棒の引き渡しを求める手続きは存在しません。資産の保全や凍結解除といった言葉は、財産を動かす口実として組み立てられた作り話にすぎないのです。ビデオ通話で見せられる手帳や逮捕状も、印刷物や画像で容易に偽装できます。

この被害を止める手立ては単純で、電話をいったん切り、公表されている警察の代表番号へ自分からかけ直すことに尽きます。相手が本物なら折り返しを拒みません。折り返しを妨げてくる時点で、その電話は詐欺だと判断してよいでしょう。

なぜニセ警察詐欺はこれほど被害を広げているのか?

ニセ警察詐欺は、スマホのビデオ通話機能を悪用して偽の警察手帳や逮捕状を画面に映し出し、相手の目の前で本物らしさを演出する点に最大の危険が潜んでいます。

ニセ警察詐欺の実行役は、事件の流れを緻密に設計しています。最初の電話では、あなたの口座が犯罪に使われている、あなた名義の携帯が事件に関与している、といった不安の種をまきます。ここで相手を焦らせ、冷静な判断力を奪うのが狙いです。次に検察官や金融庁の担当者へと役を切り替え、複数の人物が登場することで組織的な捜査が本当に進んでいるかのように錯覚させます。

警察庁は令和8年から、これまでオレオレ詐欺に含めていたニセ警察詐欺を独立した手口区分として位置付け直しました。背景にあるのは被害の突出です。警察庁によると、令和7年のオレオレ詐欺の認知件数のうち、警察官などをかたるニセ警察詐欺が約7割(74.3%)を占めていました。分類を見直すほど社会問題化している手口だと理解しておく必要があります。

ニセ警察詐欺で近年目立つのが、現金振込ではなく金地金(金の延べ棒)を用意させて手渡しさせる手口です。資産を安全に保管するためという説明が出たら、相手が誰であっても一度電話を切る合図だと考えてください。

金地金が狙われる理由は、口座振込のように記録が残りにくく、換金も追跡も難しいためだと考えられます。警察庁の資料では、金地金をだまし取る手口の大半がニセ警察詐欺の系統に集中していると示されています。受け取り役はマンションのエントランスや路上で現物を回収し、短時間で姿を消します。だからこそ渡してしまうと取り戻すのは極めて困難になり、入口で断ち切る発想が欠かせません。

警察庁が示すニセ警察詐欺の規模

公的統計で全体像をつかんでおくと、電話の異様さに気づきやすくなります。以下は警察庁が公表した令和7年の数値をもとにした概況です。

項目内容(警察庁・令和7年)
オレオレ詐欺に占める割合認知件数の約7割(74.3%)がニセ警察詐欺の手口
手口の位置付け令和8年からオレオレ詐欺と分けて独立した手口区分に位置付け
だまし取る対象現金に加え、金地金(金の延べ棒)が目立つ
だます手段電話に加えビデオ通話で偽の警察手帳・逮捕状を提示

30秒でできるニセ警察詐欺の自己診断チェック

かかってきた電話が次のいずれかに当てはまるなら、警戒レベルを最大に引き上げてください。

  • 電話やビデオ通話で、警察官や検察官を名乗る相手が資産状況を尋ねてくる
  • あなたの口座が犯罪に使われている、名義が悪用されていると不安をあおられる
  • 誰にも言わないよう口止めされ、その場から動かないよう指示される
  • 資産の保全や安全確認を理由に、現金や金の延べ棒を用意するよう求められる
  • こちらから代表番号へかけ直そうとすると、時間がない・切るなと妨げてくる

典型的なフレーズ・文脈

ニセ警察詐欺の手口を使う犯人のイラストアイコン
詐欺師

あなた名義の口座が特殊詐欺に使われています。今から資産を保全するので、口座のお金は一度金の延べ棒に換えて、こちらの担当者に預けてください。

在宅していそうな平日昼間に固定電話へかかってくることが多く、警察官を名乗ったあと検察官や金融庁職員へ次々と役を交代して、組織的な捜査が進んでいるように装う場面で使われます。

ニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

警察庁は、警察官や検察官が電話やビデオ通話で現金や金地金、暗証番号を求めることは一切ないと注意を呼びかけています。心当たりのない連絡を受けたら、いったん切って相談してください。

夕方のニュース番組で特殊詐欺の被害増加を伝える際や、警察庁のSOS47特殊詐欺対策ページの注意喚起として発信される、公的な呼びかけの場面を想定した表現です。

消費生活相談員のイラストアイコン
専門家

もう渡してしまった場合でも、あきらめずにすぐ警察へ届けてください。受け取り役が逮捕されたり、送金前の口座が凍結されたりして、被害の一部が回復する例もあります。通話履歴や指定された連絡先は消さないでください。

消費生活センターの相談員が、すでに現金や金地金を渡してしまった被害者から電話相談を受け、発覚後の初動として証拠の保全と被害届を助言する場面での発言です。

ニセ警察詐欺の歴史

ニセ警察詐欺がどのように一つの手口として確立されていったのかを振り返ると、今の警戒すべきポイントが見えてきます。

出来事
2000年代オレオレ詐欺の一種として、警察官や捜査関係者をかたる手口が現れる。
2024年警察官などをかたる被害が急増し、警察庁がニセ警察詐欺として集中的な注意喚起を開始する。
2025年(令和7年)オレオレ詐欺の認知件数のうち約7割をニセ警察詐欺の手口が占める状況となる。
現在令和8年から、ニセ警察詐欺がオレオレ詐欺と分けて独立した手口区分として位置付けられる。

この用語と一緒に知っておきたい用語

用語この記事との関連
オレオレ詐欺ニセ警察詐欺はもともとこの類型に含まれ、令和8年に独立区分化された経緯がある。
特殊詐欺ニセ警察詐欺を含む電話やSNSを悪用した非対面型詐欺の総称にあたる。
アポ電資産状況を事前に聞き出す予兆電話で、ニセ警察詐欺の下調べに使われることがある。
受け子だまし取った現金や金地金を現場で回収する実行役で、被害回復を難しくする存在。
還付金詐欺公的機関の担当者を装う点が共通し、混同されやすい特殊詐欺の一手口。

困ったときの相談窓口

被害に遭った場合や不安を感じた場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
警察相談専用電話#9110平日8時30分〜17時15分(各都道府県で異なる)詐欺被害や不審な電話に関する相談。緊急時は110番。
消費者ホットライン188地域の窓口により異なる悪質商法や契約トラブル全般、最寄りの消費生活センターへ案内。
法テラス0570-078374平日9時〜21時、土曜9時〜17時法的トラブルの相談窓口や弁護士費用の立替制度の案内。

【まとめ】3つのポイント

  • 権威という仮面を売る詐欺:ニセ警察詐欺は、警察や検察という疑われにくい肩書きを電話ごしに借りて財産を引き出す手口である。
  • 不安と口止めで思考を奪う:口座が犯罪に使われたという恐怖と、誰にも言うなという指示が重なり、確認の時間を奪われて人は動いてしまう。
  • 切って、自分からかけ直す:電話をいったん切り、公表された代表番号へ自分でかけ直す。現金や金地金を求められた時点で#9110へ相談する。

よくある質問

Q
警察や検察が電話でお金や口座の話をすることはありますか?
A

ありません。警察官や検察官が電話やビデオ通話で現金、金地金、口座の暗証番号を求めることは制度上存在しないと警察庁が明言しています。こうした要求が出た時点で、相手は本物ではないと判断してよいでしょう。

Q
ニセ警察詐欺ではなぜ金の延べ棒を要求されるのですか?
A

金地金は口座振込と違って記録が残りにくく、換金も追跡も難しいためだと考えられます。警察庁の資料でも、金地金をだまし取る手口の大半がニセ警察詐欺の系統に集まっていると示されており、資産の保全という言葉で現物を用意させるのが典型です。

Q
ビデオ通話で警察手帳を見せられたら本物と信じてよいですか?
A

信じてはいけません。画面に映る手帳や逮捕状は印刷物や画像で簡単に偽装でき、ニセ警察詐欺では本物らしさを演出する道具として使われます。身分を確認したいなら、通話を切り、公表されている警察署の代表番号へ自分からかけ直してください。

Q
ニセ警察詐欺とオレオレ詐欺との違いは何ですか?
A

だます名目が違います。オレオレ詐欺が親族を装って助けを求めるのに対し、ニセ警察詐欺は警察官や検察官という公的な権威をかたり、捜査や資産保全を口実にします。もともと同じ類型に含まれていましたが、被害の突出を受けて令和8年から独立した手口区分に位置付け直されました。

【出典】参考URL

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260213/03.html :ニセ警察詐欺がオレオレ詐欺の認知件数に占める割合(約7割)などの根拠
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260605/03.html :ニセ警察詐欺の特異な手口・金地金被害に関する根拠
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/sagi.html :令和8年からニセ警察詐欺を独立した手口区分として位置付けたことの根拠

コメント

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