マーク・カルプレスとは?Mt.Gox事件の全貌

詐欺事件
マーク・カルプレスとは?Mt.Gox事件の全貌を3行で要約
  • フランス出身のマーク・カルプレスが運営したMt.Goxは、2013年時点で世界のビットコイン取引量の約7割を扱う最大の取引所だった
  • 2014年2月に約85万BTC(当時約480億円)が消失し破綻。カルプレスはデータ改ざんと業務上横領の容疑で逮捕された
  • 裁判では業務上横領は無罪となったが、私電磁的記録不正作出・同供用罪で懲役2年6月・執行猶予4年の有罪が確定。現在も日本に在住している

ビットコインが盗まれた可能性が高い――。2014年2月、世界最大のビットコイン取引所Mt.Goxが突如として全ての払い戻しを停止した際、CEOのマーク・カルプレスはそう説明しました。しかしその後の捜査で明らかになったのは、単純なハッキング被害だけでは説明がつかない、杜撰な経営と不正な操作の全容でした。

この記事では、アニメ好きのフランス人プログラマーがいかにして世界最大の暗号資産取引所を運営し、そしてなぜ暗号資産の歴史を変える大事件の中心人物となったのかを解説します。

カルプレスの経歴とMt.Goxの急成長

マーク・カルプレスとは、1985年にフランスのディジョンで生まれたプログラマーであり、ビットコイン取引所Mt.GoxのCEOです。

幼少期からコンピュータに興味を持ち、3歳からプログラミングを始めたとされています。日本のアニメファンであったことがきっかけで2009年に来日し、サーバーホスティング会社Tibanne社を設立しました。2011年にジェド・マケーレブからMt.Gox(マウントゴックス)の経営権を買収し、ビットコイン取引所の運営に乗り出します。

Mt.Goxの名前はもともとMagic: The Gathering Online Exchange(トレーディングカードの交換所)に由来しますが、カルプレスの経営下でビットコインの取引所として急成長を遂げました。2013年4月には全世界のビットコイン取引量の約7割を扱う世界最大の取引所となっています。

85万BTCの消失と破綻

2014年2月、Mt.Goxから顧客保有分の約75万BTCと自社保有分の約10万BTC、さらに預かり金約28億円が失われていたことが発覚しました。

実はMt.Goxは2011年の時点で既にハッキング被害を受けており、875万ドル以上の損害が発生していました。しかしカルプレスはこの事実を公表せず、取引所の運営を継続しています。消失の原因として挙げられたのは、ビットコインのトランザクション展性(Transaction Malleability)と呼ばれる脆弱性を悪用した攻撃でした。

2014年2月7日にシステム障害を理由に全てのビットコインの払い戻しを停止し、同月28日に民事再生法の適用を申請。しかし4月に東京地裁がこれを棄却し、破産手続きが開始されました。約2万4700人の債権者が届け出た債権の総額は約2兆6630億円に達しています。

2014年3月には旧式のデジタルウォレットから約20万BTCが発見され、消失したビットコインの合計は約65万BTCに修正されています。

罪対ペイ運営者 賠償罪子のアイコン
賠償罪子

Mt.Gox事件の最大の教訓は、世界最大の取引所でもセキュリティが万全とは限らないという点です。2011年から既にハッキング被害が発生していたにもかかわらず、それが公表されず運営が継続されていた事実は、取引所の透明性がいかに重要かを示しています。

逮捕・裁判・判決

2015年8月1日、カルプレスは自身の口座のデータを改ざんし残高を水増しした疑いで警視庁サイバー犯罪課に逮捕されました。

具体的な容疑は、2013年2月から9月にかけてダラスのビットコイン取引所の口座に約3350万ドル相当を送金し、自身のコンピュータで会社の帳簿を改ざんして不正を隠蔽したことです。同月21日には顧客からの預かり金約3億4100万円を着服したとして業務上横領の容疑で再逮捕されています。

カルプレスは一貫して無罪を主張し、保釈されるまでの11ヶ月間、東京拘置所で毎日数時間に及ぶ尋問を受けました。2017年7月に初公判が開かれ、検察は懲役10年を求刑しています。

2019年3月15日、東京地方裁判所は私電磁的記録不正作出・同供用罪で懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。一方、業務上横領については無罪としています。検察側は横領について控訴せず、無罪が確定しました。データ改ざんについてはカルプレスが控訴しましたが、2020年に東京高裁が棄却、2021年に最高裁が上告を棄却し、有罪が確定しています。

カルプレスはこの判決について、全面的に支持はしていないが、納得していると述べました。現在も日本に在住し、トリスタン・テクノロジーズ社の取締役CTOとして活動しています。

真犯人の浮上

2023年6月、米司法省はロシア国籍のアレクセイ・ビリュチェンコとアレクサンドル・ヴェルナーを起訴し、約64万7000BTCをMt.Goxから盗んだと発表しました。カルプレスが主張していた外部からのハッキング被害は、少なくとも一部は事実であったことが裏付けられた形です。

まとめ

  • Mt.Goxは世界のビットコイン取引の約7割を扱っていたが、約85万BTCと預かり金28億円が消失し、2014年に経営破綻した
  • カルプレスはデータ改ざんで懲役2年6月・執行猶予4年の有罪が確定したが、業務上横領については無罪。後にロシア人ハッカーが起訴された
  • 世界最大の取引所であっても安全とは限らない。取引所に暗号資産を長期間預けるリスクは、Mt.Gox事件が最も痛烈に示した教訓だ

よくある質問

Q
Mt.Goxの債権者は資産を取り戻せましたか?
A

2018年に破産手続きから民事再生手続きに移行しました。Mt.Goxが保有していたビットコインの価格が急騰し、保有資産が2000億円以上になったためです。民事再生管財人が債権者への弁済手続きを進めており、2024年以降に一部の弁済が開始されています。ただし破綻時の金額ベースではなく、当時の評価額に基づく弁済のため、その後の値上がり分は反映されていません。

Q
カルプレスは現在何をしていますか?
A

現在も日本に住んでおり、トリスタン・テクノロジーズ社の取締役CTOとして活動しています。2019年には著書を出版し、ビットコインの暗号技術の脆弱性について警鐘を鳴らしています。趣味はアップルパイ作りで、日本のアニメや漫画への造詣が深く、アニメソムリエの異名でも知られています。

Q
Mt.Gox事件は日本の暗号資産規制にどう影響しましたか?
A

Mt.Gox事件は日本における暗号資産規制の強化に大きな影響を与えました。2017年に施行された改正資金決済法により、暗号資産交換業者は金融庁への登録が義務付けられ、顧客資産の分別管理やセキュリティ基準の遵守が求められるようになっています。日本は暗号資産に関する法整備において世界的に先進的な国のひとつとなりました。

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