ジェラルド・コッテンとは?QuadrigaCX事件の全貌

詐欺事件
ジェラルド・コッテンとは?QuadrigaCX事件の全貌を3行で要約
  • カナダ最大の暗号資産取引所QuadrigaCXのCEOジェラルド・コッテンが、秘密鍵を1人で独占したまま2018年12月にインドで急死した
  • 約11万5000人の顧客に対する約2億1500万カナダドル(約250億円)の資産が消失。コールドウォレットは死亡の8ヶ月前から既に空だった
  • 規制当局の調査で、コッテンが偽名のアカウントで架空の残高を作り顧客と取引していたことが判明。その実態はポンジ・スキームだった

パスワードやリカバリーキーを知りません。何回も一生懸命探しましたが、どこにも書かれていませんでした――。コッテンの妻ジェニファー・ロバートソンは法廷の宣誓供述書でそう述べました。しかし後の調査で明らかになったのは、秘密鍵が失われたのではなく、顧客の資産が最初からCEOによって食い潰されていたという衝撃的な事実でした。

この記事では、暗号資産取引所の創業者が顧客資産をどのように私物化し、なぜ彼の死が暗号資産業界最大のミステリーとなったのかを解説します。

コッテンの経歴とQuadrigaCXの設立

ジェラルド・コッテンとは、1988年にカナダのオンタリオ州ベルビルで生まれた暗号資産取引所の創業者であり、30歳で謎の死を遂げた人物です。

コッテンはヨーク大学シューリッチ・ビジネス・スクールを2010年に卒業しています。しかし実は、10代の頃から既にオンラインフォーラムTalkGoldでSceptreというハンドルネームを使い、ポンジ・スキームに関与していたことが後の調査で判明しました。

2013年11月、コッテンはマイケル・パトリンとともにバンクーバーでQuadrigaCXを設立しました。カナダ国内に特化した暗号資産取引所として、ビットコインやイーサリアムの売買サービスを提供しています。パトリンも過去に詐欺関連で当局の注目を集めていた人物でしたが、表には出ず、コッテンがクリーンな評判の顔役として取引所を運営していました。

QuadrigaCXは急成長を遂げ、2016年から2017年にかけて取引量が20倍に増加。カナダ最大の暗号資産取引所となり、7万人以上のユーザーが利用するプラットフォームに成長しました。

顧客資産の詐取と偽名アカウント

QuadrigaCXの実態は、コッテンが偽名で架空の残高を作り、顧客の資金を私的に流用するポンジ・スキームでした。

2020年6月、オンタリオ州証券委員会(OSC)は10ヶ月にわたる調査の報告書を公表しました。それによると、コッテンは取引所内にSceptre Gerry、Aretwo Deetwo、Seethree Peaohhといった偽名のアカウントを開設し、キーボードを数回叩くだけで何百万ドルもの架空の暗号資産や法定通貨の残高を自分のアカウントに表示させていました。

ある時にはChris Markayという偽名のアカウントに1億ドル、別のタイミングでは5000万ドルの偽の入金を行い、その架空の資金で実際の顧客と取引していたのです。暗号資産の価格変動で損失が出ると、その穴を他の顧客の入金で埋めるという典型的なポンジ・スキームの構造が出来上がっていました。

OSCの報告書は、損失の内訳を次のように明らかにしています。約1億1500万ドルがプラットフォーム上での不正取引による損失、約2800万ドルが外部の取引所での無許可の投機的取引による損失、そして残りがテスラ、レクサス、豪華ヨット、飛行機、プライベートジェットの株式、複数の不動産など、私的な贅沢品への支出でした。

コッテンの年俸は雇用契約上わずか6万5000ドルでしたが、2016年5月から2018年1月の間に約2400万カナダドルを自身と妻に送金していました。56カ国を旅行し、妻に自慢するほどの豪遊ぶりでした。

急死と消えた顧客資産

2018年12月9日、コッテンは新婚旅行先のインド・ジャイプールでクローン病の合併症により急死しました。享年30歳でした。

QuadrigaCX事件の時系列
  • 2013年11月
    QuadrigaCX設立
    バンクーバーでマイケル・パトリンとともに設立。カナダ国内向けの暗号資産取引所として運営を開始する。
  • 2018年4月
    コールドウォレットが空に
    後の調査で、コールドウォレットがこの時点で既に空であり、休眠状態だったことが判明。コッテンの死亡の8ヶ月前から資産は消えていた。
  • 2018年11月27日
    コッテンが遺書を作成
    死亡のわずか12日前に遺書を作成。960万カナダドルの遺産全額と、2匹のチワワの終身ケアのための10万カナダドルの信託を妻に残した。
  • 2018年12月9日
    コッテンがインドで死亡
    インド・ジャイプールの病院でクローン病の合併症による敗血症性ショックで死亡。享年30歳。検死は行われなかった。
  • 2019年1月14日
    死亡の公表
    死亡から1ヶ月以上経って初めて公表される。この間も顧客はQuadrigaCXに入金を続けていた。
  • 2019年2月
    債権者保護を申請
    QuadrigaCXが債権者保護を申請。約11万5000人の顧客に対する約2億1500万カナダドルの負債が判明。手元の現金はわずか37万5000カナダドルしかなかった。
  • 2020年6月
    OSCがポンジ・スキームと断定
    オンタリオ州証券委員会(OSC)が33ページの調査報告書を公表。QuadrigaCXは最新技術に包まれた古典的な詐欺だったと結論づけた。

しかしこの死には多くの疑惑が付きまとっています。死亡証明書にはコッテンの姓がCottanと誤記されていたこと、検死が行われなかったこと、そして死亡のわずか12日前に遺書が作成されていたことなどが指摘されています。

コッテンの死後に調査を担当した4大監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)は、コールドウォレットが既に空であったか、そもそもウォレットに暗号資産が入っていなかった可能性を報告しています。資金が凍結されたのではなく、消えていたのです。

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賠償罪子

この事件の最大の教訓は、取引所に預けた暗号資産は厳密にはあなたのものではないということです。秘密鍵を自分で管理していなければ、取引所の破綻や不正で一瞬にして資産を失う可能性があります。

Not your keys, not your coins(鍵を持たない者にコインはない)という暗号資産の格言を、この事件ほど痛感させるケースはないでしょう。

偽装死の疑惑と遺体掘り起こしの要請

コッテンの死後、偽装死によるエグジット・スキャム(計画的な逃亡詐欺)ではないかという疑惑が世界中で広がりました。

2019年12月、QuadrigaCXの元顧客を代理する法律事務所は、カナダ騎馬警察(RCMP)に対してコッテンの遺体の掘り起こしと検死を正式に要請しています。遺体の身元と死因を確認するためです。しかし2020年春までに遺体の掘り起こしは実施されず、腐敗が進んでいる可能性が懸念されました。

一方で2023年にはブルガリアのメディアが、コッテンの死は偽装ではなく本物だったという見解も報じられています。OSCは、コッテンが存命であっても取引所は崩壊していたと結論づけており、死の真偽に関わらず詐欺行為そのものは確定しています。EYが回収できた資産は約4600万カナダドルにとどまり、妻のロバートソンが1200万ドル相当の資産を返還しましたが、被害総額にはほど遠い金額でした。

まとめ

  • コッテンは偽名のアカウントで架空の残高を作り、顧客と取引して損失を出し続けた。その穴は新規顧客の入金で埋められるポンジ・スキームだった
  • 秘密鍵を1人で独占し、死亡と同時に約2億1500万カナダドルの顧客資産が消失。OSCは最新技術に包まれた古典的な詐欺と断定した
  • 暗号資産は自分で秘密鍵を管理するのが最も安全だ。取引所に預けたまま放置することのリスクを、この事件は痛烈に示している

よくある質問

Q
コッテンの死は本当ですか?偽装死説は証明されましたか?
A

公式にはインドの病院でクローン病の合併症により死亡したとされています。元顧客を代理する法律事務所が遺体の掘り起こしを要請しましたが、実施されたという報告はありません。OSCは死の真偽に関わらず、詐欺行為は確定していると結論づけています。

Q
QuadrigaCXの被害者は資産を取り戻せましたか?
A

破産管財人のアーンスト・アンド・ヤングが回収できた資産は約4600万カナダドルにとどまっています。これは2億1500万カナダドルの負債総額に対して約2割程度です。妻のジェニファー・ロバートソンが1200万ドル相当の資産を返還していますが、大多数の顧客は資産の大部分を失ったままです。

Q
暗号資産を取引所に預けるリスクを減らすにはどうすればいいですか?
A

長期保有する暗号資産は、自分で秘密鍵を管理するハードウェアウォレットに移すのが最も安全です。取引所には取引に必要な分だけを残し、まとまった資産を長期間預けたままにしないことが重要です。また、利用する取引所が規制当局に登録されているか、資産の分別管理を行っているかを事前に確認しましょう。

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