KYB免震ダンパー改ざんとは?986物件に出荷された不適合品の実態

詐欺事件
KYB免震ダンパー改ざんとは?986物件に出荷された不適合品の実態を3行で要約
  • 油圧機器メーカーKYBは免震・制振用オイルダンパーの検査データを2003年から15年間にわたり改ざんし、不適合品を出荷していた
  • 不適合品が設置された建物は全国986物件に及び、マンション・病院・庁舎・五輪関連施設など広範囲に影響。ダンパーは合計約1万928本
  • 国交省は震度7でも倒壊の恐れはないとしたが、全数交換の方針で対応。交換費用は100億円以上と試算され、後発の川金HDでも同種不正が発覚した

地震から建物を守るはずの免震装置が、性能を偽っていた――。2018年10月、油圧機器メーカー最大手のKYBが、免震・制振用オイルダンパーの検査データを改ざんしていた事実が公表されました。

不適合品が設置されていた建物は全国986物件。マンション、病院、庁舎、さらには国交省の建屋自体にも不正なダンパーが納入されていたことが判明し、社会に大きな衝撃を与えています。

この記事では、KYBのデータ改ざんがなぜ15年も続いたのか、建物の安全性への実際の影響、そしてマンション購入者や建物のオーナーが知っておくべきことを解説していきます。

KYBとは?免震ダンパーのトップメーカー

KYBとは、自動車用ショックアブソーバーや油圧機器で知られる日本の大手油圧機器メーカーです。免震・制振用オイルダンパーでもトップシェアを誇っていました。

免震用オイルダンパーとは、建物の基礎部分に設置し、地震の揺れを吸収して建物への振動を減衰させる装置です。免震ゴム(積層ゴム)と組み合わせて使用され、地震エネルギーを効果的に吸収する役割を果たします。

データ改ざんの手口と動機

KYBのデータ改ざんは、出荷時の全数検査で基準値を外れたダンパーのデータを、基準範囲内に書き換えて出荷するという手口でした。

免震用ダンパーには国交省の大臣認定で±15%の許容範囲が設定されています。さらにKYBは顧客との契約で±10%というより厳しい基準を設けていました。検査で基準値からの乖離がこれらの範囲を超えた場合、本来は再調整(分解・組立て直し)が必要ですが、KYBは「生産計画を守りたい」「再調整の工数を省きたい」という動機から、算出係数を書き換えて検査データを改ざんしていたのです。

さらに驚くべきことに、すでに基準に適合していたダンパーについても108件でデータを改ざんしていたことが判明しています。検査値のバラつきが大きい場合に社内で質問を受けることを避けるため、意図的にバラつきを小さく見せる操作を行っていました。

免震ダンパーと免震ゴムの役割の違いは重要だ。免震ゴムは建物の重さを支え、水平方向の揺れをゆっくりにする。免震ダンパーは揺れのエネルギーを吸収し、揺れが早く収まるようにする。つまり、ダンパーの性能が基準を外れていても、建物が倒壊するリスクには直結しにくい。ただし、建物内部の揺れが大きくなり、家具の転倒や設備の損傷リスクは高まる。

影響の範囲と対応

データ改ざんの影響を受けた建物は、免震用が全都道府県903物件、制振用が18都道府県83物件の合計986物件に及びました。

設置先にはマンション、病院、事務所、庁舎、東京五輪関連施設、空港、さらには記者会見が行われた国交省の建屋(中央合同庁舎第3号館)自体も含まれていました。ダンパーは合計約1万928本で、交換費用は免震用1本約130万円、制振用1本約70万円と試算されており、総額100億円以上が見込まれています。

国交省は震度7程度の地震が発生しても建物が倒壊する恐れはないとの見解を示しましたが、KYBは不適合品の全数交換を表明しました。ただし、月産能力の限界から交換完了は2020年9月を目標とし、2020年末時点でもまだ全体の3割程度にとどまっていたとされています。

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KYBの発表からわずか1週間後には、後発メーカーの川金ホールディングスでも同種のデータ改ざんが発覚しました。国交省が免震メーカー88社に一斉調査を指示したことからも、この問題が業界全体に根を張っていた可能性は否定できません。地震大国・日本の建物の安全を支えるはずの免震装置が偽装されていたという事実は、建築業界への信頼を根底から揺るがしました。

現代に通じる教訓:免震マンションの購入者が確認すべきこと

KYB事件が消費者に示す教訓は、免震マンションを購入・居住する際は、免震装置のメーカーと対応状況を確認すべきということです。

管理組合の総会資料や管理会社を通じて、自分のマンションに使用されている免震装置のメーカーと型番を確認し、リコールや交換対象になっていないかを調べることが重要です。KYBのケースでは、対象物件のオーナーや管理組合には通知が行われていますが、中古で購入した場合は情報が届かないこともあり得ます。

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「震度7でも倒壊しない」と国交省は言いましたが、それは「揺れないこと」とは違います。免震ダンパーの性能が基準を外れていれば、建物は倒れなくても室内は大きく揺れ、家具の転倒や設備の損傷で被害が出る可能性があります。安全と安心は別の問題なのです。

まとめ

  • KYBは免震・制振用オイルダンパーの検査データを15年間にわたり改ざん。全国986物件に不適合品を設置していた
  • 動機は「生産計画を守りたい」「再調整の工数を省きたい」という納期優先の企業風土。適合品のデータまで改ざんする異常な状況だった
  • 免震マンションのオーナーは免震装置のメーカーと交換対応状況を管理組合を通じて確認すべき。中古購入者は特に注意が必要だ

よくある質問

Q
KYBの免震ダンパーが入った建物は危険ですか?
A

国交省は震度7程度の地震でも建物が倒壊する恐れはないとの見解を示しています。免震ダンパーは建物の重量を直接支える部材ではなく、揺れのエネルギーを吸収する装置です。ただし、設計通りの性能が発揮されない場合、建物内部の揺れが大きくなる可能性があります。KYBは全数交換の方針で対応を進めています。

Q
東洋ゴムの免震偽装とは何が違いますか?
A

東洋ゴム工業(2015年発覚)は免震ゴムの性能データを偽装した事件で、免震ゴムは建物の重量を支える部材です。KYBのオイルダンパーは揺れを吸収する部材であり、役割が異なります。技術的にはダンパーの交換の方が容易ですが、KYBの方が対象物件数(986件)は東洋ゴム(154棟)の約6倍と規模が大きくなっています。

Q
自分のマンションが対象か確認する方法は?
A

管理組合または管理会社に問い合わせることが最も確実です。KYBは対象物件の所有者や管理組合に直接通知を行っていますが、中古で購入した場合は前のオーナー宛てに届いている可能性があります。また、国交省が公表した対象物件リスト(官公庁舎等70件)も参考になりますが、マンション名は非公表となっている物件が多いため、管理組合への確認が推奨されます。

【出典】参考URL

  • 日本経済新聞:986物件、2003年〜2018年の15年間の改ざん、中島会長兼社長の陳謝
  • Response:免震用903物件・制振用83物件の内訳、大臣認定仕様と異なる材質使用
  • MONOist:改ざんの動機(生産計画優先・再調整工数削減)、適合品108件のデータ改ざん
  • BUILT:有識者委員会の報告書、大臣認定制度の見直し提言

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