- 大正時代に断絶した皇族・有栖川宮の祭祀継承者を自称する男女が、2003年4月に東京・青山で偽の結婚披露宴を開催した
- 約400人の招待客から祝儀約1200万円と絵画1枚(計約1509万円相当)を詐取。石田純一、エスパー伊東、ダイアモンド☆ユカイら芸能人も騙された
- 2003年10月に詐欺容疑で逮捕され、2006年にともに懲役2年2月の実刑判決。しかし主犯の男は出所後も有栖川宮を名乗り活動を続けている
宮様の結婚式はわりと手作りなんだな――。偽の結婚披露宴で余興を務めたダイアモンド☆ユカイは、玄関でバラの花を敷き詰めるプロデューサーを見てそう思ったと振り返っています。終了後にギャラを受け取りに行くと、無造作にばらまかれた札束から適当に抜き取って渡された。これヤバいんじゃないか――その直感は的中しました。
この記事では、1923年に断絶した皇族の名を騙り、400人もの人々を盛大に欺いた令和の皇室詐欺を解説します。
有栖川宮とは何か
有栖川宮とは、江戸時代初期から大正時代にかけて存在した宮家(皇族の家系)であり、日本の歴史において極めて格式の高い家柄です。
四親王家のひとつとして知られ、幕末には第9代・有栖川宮熾仁(たるひと)親王が、徳川家に嫁いだ皇女和宮の元婚約者として、また西南戦争の征討総督として知られています。しかし第10代・威仁(たけひと)親王の嫡子が早世し、1923年(大正12年)に正式に断絶しました。
その後の有栖川宮家の祭祀は、大正天皇の特旨により高松宮宣仁親王が新たに高松宮家を興した上で継承しています。つまり、有栖川宮の祭祀継承者を名乗る人物が2003年に現れること自体、皇室の歴史を知る者にとってはあり得ない話だったのです。
犯人の素性と偽皇族の誕生
夫役を演じたのは、京都府宇治市出身の北野康行(逮捕時41歳)でした。本名で有栖川識仁(ありすがわ さとひと)を名乗っていましたが、実際には八百屋の長男で、中学卒業後に清水焼の工場に就職した経歴の持ち主です。
北野は家を出てから伏見博という名を使い始めましたが、周囲から伏見宮家の血縁者と勘違いされたことをきっかけに、1984年頃から有栖川識仁を名乗るようになりました。母親にゆかりのあった京都の川島有栖川町という地名から着想を得たとされています。
1990年には政治団体有栖川宮記念事業団を設立し、さまざまな会合に皇族として出席しては車代名目で金を受け取る生活を続けていました。右翼団体・日本青年社の名誉総裁に推戴されるなど、関西を中心にニセ皇族として一定の活動基盤を築いていたのです。
2002年、イベント会社に勤めていた坂本晴美(逮捕時45歳)が北野の肩書きに興味を持ち接近します。北野が自分は偽物だと告白すると、坂本はそんなことどうでもいいではありませんかと応じ、偽の結婚披露宴を企画し始めました。2人の間に実際の婚姻関係はなく、婚姻届も提出されていません。
偽の結婚披露宴と被害
2003年4月6日、東京・青山のイベントホールで有栖川宮記念祝晩餐会と銘打った偽の結婚披露宴が開催されました。
北野は旧軍の大礼服を模した衣装を身にまとい、坂本は妃殿下として振る舞いました。招待客は約400人に上り、芸能人では石田純一、エスパー伊東、ダイアモンド☆ユカイ、デーブ・スペクター夫人らも出席しています。
被害額は祝儀約1200万円と額付絵画1枚をあわせて計約1509万円相当とされています。坂本は事前にご祝儀は1名10万円は固いと見込んでいましたが、実際には1人当たり約3万6000円程度でした。
ダイアモンド☆ユカイは後にテレビ番組で当日の様子を振り返り、ギャラを受け取りに行ったホテルでは無造作に札束がばらまかれており、祝儀からそのまま支払われた印象だったと語っています。石田純一は後に警察から広告塔の疑いで取り調べを受けたことを明かしています。

皇族の名を騙る詐欺は、日本では戦後も繰り返し起きています。偽の朝香宮がブラジルの日系人社会に現れた事件(1954年)など、権威への信頼を悪用する手口は時代を問いません。
竹田恒泰氏は、旧皇族や祭祀継承者を名乗って近づいてくる人物は間違いなく偽物だと断言しています。本物であれば自らをアピールしてビジネスに利用するはずがない、というのがその理由です。身分や権威を前面に出して近づいてくる人物には常に警戒が必要です。
逮捕・裁判・その後
2003年10月21日、警視庁公安部は北野康行と坂本晴美、およびイベント企画会社役員の計3名を詐欺罪で逮捕しました。
初公判で北野は、あえて皇族を装ったことはない。有栖川と名乗っただけだと起訴事実を否認。坂本も夫と結婚して知人を招待しただけですと無罪を主張しました。しかし共犯のイベント会社役員が皇族があんな安物の靴をはいているわけがないと語っていたという供述調書が読み上げられるなど、ニセ皇族と認識していた証拠が積み上がりました。
2006年9月11日、東京地裁は北野と坂本にともに懲役2年2月の実刑判決を言い渡しています。
しかし驚くべきことに、2008年の朝日新聞の報道によれば、出所した北野は再び有栖川宮として活動を再開しています。2007年には京都府宇治市に政治団体有栖川宮記念を新規設立し、代表者として有栖川識仁の名前が登録されました。服役しても反省せず、同じ手口を繰り返す――まさに筋金入りの詐欺師と言えるでしょう。
まとめ
- 大正時代に断絶した有栖川宮を騙り、約400人を集めた偽の結婚披露宴で約1509万円を詐取。石田純一ら芸能人も騙された
- 犯行の中心は八百屋の息子がニセ皇族を演じた男と、偽物と知りながら披露宴を企画した女のコンビだった。ともに懲役2年2月の実刑判決
- 権威ある身分を名乗って近づいてくる人物には常に疑いの目を持つべきだ。自らの身分をアピールしてビジネスに利用する本物の皇族・旧皇族は存在しないという事実を知っておくことが防衛策となる
よくある質問
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Qなぜ400人もの人が騙されたのですか?
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A
主な原因は3つあります。第1に、有栖川宮記念公園という有名な公園が存在するため、有栖川宮が現存していると誤解する人が多かったこと。第2に、芸能人や元政治家が出席していたことで信頼性が高まったこと。第3に、政治団体を設立し、右翼団体の名誉総裁に就任するなど、長年にわたって皇族としての活動基盤を構築していたことです。
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Q皇室を騙る詐欺は他にもありますか?
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A
日本では戦前から皇室詐欺が繰り返されています。戦後の混乱期には自称天皇が複数出現し、1954年にはブラジルで偽の朝香宮が日系人社会を騙す事件も起きています。皇族や旧皇族を自称して接近してくる人物は、ほぼ確実に偽物であると考えるべきです。現在の皇族は法律で厳密に定められた6宮家のみです。
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Qこの事件を題材にした作品はありますか?
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A
テレビ演出家・作家の久世光彦による小説『有栖川の朝』(2005年、文藝春秋)が、この事件を元に書かれたフィクション作品として知られています。また、テレビのワイドショーやバラエティ番組でも繰り返し取り上げられており、ダイアモンド☆ユカイが当時の体験を語った番組が話題になりました。
【出典】参考URL
- Wikipedia:有栖川宮詐欺事件:事件の全容、犯人の素性、判決
- 竹田恒泰公式サイト:皇族の視点からの事件分析
- DTI:犯人の経歴と裁判の詳細
- デイリースポーツ:ダイアモンド☆ユカイの回顧談


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