特殊詐欺が1年で倍増|主犯はニセ警察詐欺だった

特殊詐欺が1年で倍増|主犯はニセ警察詐欺だったを3行で要約
  • 令和7年の特殊詐欺は被害総額が前年比プラス98.0パーセントとほぼ倍増し、確定値で1,423.1億円に達した
  • 警察庁がこの急増の主たる要因と名指ししたのがニセ警察詐欺で、全体の被害総額の39.6パーセントを占める
  • 件数は20代・30代の若い世代で急増しており、高齢者だけの問題ではなくなっている
警察を名乗る電話でニセ警察詐欺に遭う30代男性が現金とカードを渡し口座が空になる特殊詐欺の被害を描いた4コマ漫画
①警察を名乗る電話で口座が犯罪に使われたと告げられる。②捜査協力の名目で現金とカードを受け子に渡す。③通帳が空になり取り返しがつかないと知る。④賠償罪子が名前を信じた油断を断罪する。

この4コマは、令和7年の特殊詐欺急増を牽引したニセ警察詐欺の典型的な流れを1件の被害として描いています。犯人はいきなり金銭を要求しません。まず口座が犯罪に使われているという不安を植え付け、警察官という肩書きへの信頼を利用して抵抗感を溶かしていきます。

法的に見れば、本物の警察官が電話で暗証番号を確認したり、現金やキャッシュカードを対面で受け取ったりすることはありません。にもかかわらず被害が広がるのは、疑うと損をするという空気を犯人が先に作り上げているからです。捜査に協力しないと自分が疑われるという心理が、冷静な判断を奪います。

防ぐ鍵は、電話の相手が名乗る肩書きを信じないことに尽きます。少しでも公的機関を名乗る不審な電話を受けたら、いったん切って正規の窓口へかけ直す。この一手間だけで、受け子に現金を渡す最後の一線を踏み越えずに済みます。

2026年6月5日、警察庁が令和7年(2025年)の特殊詐欺の確定値を公表しました。そこで突きつけられたのは、被害総額が1年でほぼ倍になったという事実です。

数字だけを見ると単なる悪化ですが、中身を分解するとある新しい手口への置き換わりが進んでいたことが分かります。その手口の名前が、警察官を装って現金をだまし取るニセ警察詐欺です。

この記事では、警察庁の確定値をもとに、被害総額が倍増した本当の理由、そして被害の中心が若い世代へ広がっている現実を、25歳から35歳の読者が自分ごととして掴めるように翻訳していきます。

特殊詐欺の被害額はどれだけ増えたのか

令和7年(2025年)1月から12月の確定値で見ると、特殊詐欺は被害総額が前年比プラス98.0パーセントとほぼ倍増しました。金額は1,423.1億円に達しています。

認知件数も27,832件で、前年より6,789件、プラス32.3パーセントの増加でした。件数の伸びよりも金額の伸びが大きい、つまり1件あたりの被害が重くなっているのが今回の特徴です。

指標 令和7年(確定値) 前年比
認知件数 27,832件 +6,789件(+32.3%)
被害総額 1,423.1億円 +704.3億円(+98.0%)
1日当たり被害額 3.9億円 +1.9億円(+98.5%)
既遂1件当たり被害額 523.6万円 +173.3万円(+49.5%)

被害総額1,423.1億円と言われてもピンとこないかもしれません。1日当たりに換算すると3.9億円で、これも前年から倍近く(プラス98.5パーセント)に膨らんでいます。毎日3.9億円が知らない誰かの口座から消えていると考えると、規模の異常さが伝わるはずです。

もう一つ注目すべきは、予兆電話です。詐欺の前触れとされる不審な電話の把握件数は331,653件で、前年より138,178件、プラス71.4パーセント増えました。

これは1か月あたり平均27,638件にのぼります。犯人が電話をかけまくっている実態が、そのまま被害の急増につながっています。

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件数より金額が伸びている。これは1件で大金を抜く手口へ移ったサインです。以上です。

被害総額を倍増させた主犯はニセ警察詐欺

被害総額を押し上げた主たる要因は、警察官などをかたるニセ警察詐欺です。警察庁も、令和7年の総認知件数と被害総額が著しく増加した主たる要因としてこの手口を名指ししています。

ニセ警察詐欺単体の数字を見てみましょう。認知件数は11,014件、被害額は1,005.0億円で、これは特殊詐欺全体の被害総額の39.6パーセントにあたります。つまり被害額の約4割が、この一手口だけで発生している計算です。

項目 ニセ警察詐欺(令和7年)
認知件数 11,014件
被害額 1,005.0億円
全体の被害総額に占める割合 39.6%
既遂1件当たり被害額 922.5万円

1件あたりの重さも際立ちます。ニセ警察詐欺の既遂1件当たり被害額は922.5万円で、ニセ警察詐欺を除いた特殊詐欺の256.7万円のおよそ3.6倍です(筆者算出:922.5万円÷256.7万円=約3.59倍。警察庁が公表した倍率ではありません)。少ない件数でも被害総額を大きく動かせる、破壊力の高い手口だと分かります。

ニセ警察詐欺は令和7年から独立した統計項目として集計が始まった新しい分類です。そのため、この手口単体での前年比のデータは存在しません。本記事で前年比を示せるのは、特殊詐欺全体やオレオレ詐欺など、従来から集計されてきた項目に限られます。ニセ警察詐欺の急増は、警察庁が明言した「増加の主たる要因」という定性的な評価として扱っています。
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公的な肩書きは、それ自体が武器になります。相手が信じたい安心を、警察という言葉で用意しているのです。

オレオレ詐欺という名前と実態のズレ

統計上はオレオレ詐欺という分類が急増しましたが、その中身の大半はニセ警察詐欺への置き換わりです。名前と実態がすでにズレはじめています。

手口分類上のオレオレ詐欺(単体区分)は、認知件数14,489件(前年比プラス114.6パーセント)、被害額1,138.1億円(前年比プラス148.3パーセント)と急増しました。ところが、このオレオレ詐欺の認知件数のうち74.9パーセント(10,859件)がニセ警察詐欺型です。つまりオレオレ詐欺が増えたという現象の正体は、実質的にニセ警察詐欺という新手口の拡大なのです。

区分 認知件数 前年比
オレオレ詐欺(単体区分) 14,489件 +7,737件(+114.6%)
うちニセ警察詐欺型 10,859件 全体の74.9%
オレオレ型特殊詐欺(3手口合算) 17,439件 +7,026件(+67.5%)

ここで数字の母数に注意が必要です。特殊詐欺全体で集計したニセ警察詐欺は11,014件、オレオレ詐欺の中の内数としてのニセ警察詐欺型は10,859件で、両者は数え方が異なります。

差の155件は、預貯金詐欺など別の手口区分に計上されたニセ警察詐欺型と考えられます。同じニセ警察詐欺でも、どの器で数えるかで件数が変わる点は押さえておきましょう。

オレオレ詐欺という名前は、身内を装う手口を連想させます。しかし令和7年の実態は、その7割超が警察官を装う手口に置き換わっています。分類名の古さが、かえって新しい手口の危険性を見えにくくしている状態です。
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オレオレ詐欺という言葉で身構えている限り、警察を名乗る電話には無防備になります。名前を信じた時点で、罠は半分成立しています。

被害は若い世代へ 件数と金額の二重構造

令和7年の大きな変化は、被害の中心が若い世代へ広がったことです。件数では20代・30代が急増し、高齢者だけの問題ではなくなりました。

オレオレ詐欺の年代別認知件数を見ると、20代は1,759件で前年比プラス361.7パーセント、30代は2,284件で前年比プラス329.3パーセントと、桁違いの伸びを示しました。オレオレ詐欺の認知件数に占める20代・30代の合計割合は27.9パーセントで、前年からプラス14.4ポイントです。

年代 オレオレ詐欺 認知件数 前年比
20代 1,759件 +1,378件(+361.7%)
30代 2,284件 +1,752件(+329.3%)
70代 2,453件 +1,011件(+70.1%)
80代以上 3,235件 +614件(+23.4%)

ニセ警察詐欺で見ても傾向は同じです。年代別の認知件数は30代が2,239件で最多、次いで20代が1,718件と、若い世代が件数の上位を占めます。高齢者が狙われるという従来のイメージが崩れているのです。

ただし、被害額で見ると景色が変わります。ニセ警察詐欺の年代別被害額は70代が274.6億円で最大、次いで60代が256.3億円です。

件数は若者、金額は高齢者という二重構造が起きています。若い世代は数多く狙われ、高齢者は1件で大きな金額を奪われている、と読み解けます。

この結果、特殊詐欺全体に占める高齢者(65歳以上)の認知件数の割合は51.3パーセントで、前年からマイナス14.0ポイント低下しました。高齢者の被害が減ったわけではなく(認知件数は14,273件でプラス3.9パーセント)、若年層の被害が急増した分だけ、相対的に高齢者の比率が押し下げられた構図です。

20代・30代の被害が急増した要因について、警察庁の資料には分析の記載がありません。本記事では憶測での断定は避けています。以降で示す背景の読み解きは、事実ではなく賠償罪子の見立てとして区別しています。
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これは私の見立てです。自分は詐欺に強いという若い世代の自負が、警察を名乗る電話の前では逆に隙になっている。数字の順序がそう語っていると私は考えます。

今日からできるニセ警察詐欺の対策

結論から言えば、公的機関を名乗る電話でお金やカードの話が出たら詐欺を疑うのが正解です。この一点を徹底するだけで、被害の入り口を塞げます。

本物の警察官が、電話で口座の暗証番号を確認したり、現金やキャッシュカードの提出を求めたりすることは絶対にありません。ニセ警察詐欺は、不正利用口座の捜査協力やカードの交換といった名目で信頼させ、最終的に受け子を通じて対面で現金やカードを抜き取る流れが多いとされています。

身を守る3つの行動
1. 警察や公的機関を名乗る電話は、いったん切る。
2. 電話番号は相手が言った番号ではなく、自分で調べた正規の窓口へかけ直す。
3. 現金・キャッシュカード・暗証番号を求められた時点で詐欺と判断し、渡さない。

特に若い世代は、自分は大丈夫という感覚を一度手放してください。令和7年の統計は、20代・30代こそ件数で狙われていることを示しています。家族に高齢の親がいる読者は、警察を名乗る電話が来たら必ず切って確認するという約束を共有しておくと効果的です。

  • 令和7年の特殊詐欺は被害総額が前年比プラス98.0パーセントとほぼ倍増し、1日あたり3.9億円が奪われている
  • 倍増の主犯はニセ警察詐欺で、被害総額の39.6パーセントを占め、1件あたりの被害も突出して重い
  • 件数は若者、金額は高齢者という二重構造が進み、公的機関を名乗る電話はまず切って確認するのが唯一の防御だ

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よくある質問

Q
ニセ警察詐欺の被害はどのくらい増えたのですか
A

ニセ警察詐欺単体の前年比は算出できません。この手口は令和7年(2025年)から独立して集計が始まった新しい分類のため、比較対象となる前年のデータが存在しないからです。ただし警察庁は、令和7年の特殊詐欺の急増の主たる要因としてニセ警察詐欺を名指ししており、被害額は1,005.0億円で全体の39.6パーセントを占めています。

Q
1年で倍増というのは何が倍になったのですか
A

特殊詐欺全体の被害総額が倍増しました。令和7年の被害総額は1,423.1億円で、前年比プラス98.0パーセントとほぼ倍になっています。認知件数は27,832件でプラス32.3パーセントの増加なので、金額の伸びのほうが件数の伸びより大きいのが特徴です。

Q
若い世代も本当に狙われているのですか
A

件数では20代・30代が急増しています。オレオレ詐欺の年代別認知件数では20代がプラス361.7パーセント、30代がプラス329.3パーセントと大きく伸び、ニセ警察詐欺では30代が最多です。一方で被害額は70代・60代が大きく、件数は若者、金額は高齢者という二重構造になっています。

Q
警察官を名乗る電話が来たらどうすればいいですか
A

いったん電話を切り、自分で調べた正規の窓口へかけ直してください。本物の警察官が電話で暗証番号を確認したり、現金やキャッシュカードの提出を求めたりすることは絶対にありません。相手が言った番号にかけ直すのは避け、公式サイトなどで確認した番号を使うのが安全です。

出典・参考URL

  • https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260605/01.html 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値・2026年6月5日公表)|警察庁
  • https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/assets/img/new-topics/detail/260605/01/01.pdf 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)資料PDF|警察庁

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