侮辱罪とは?SNSの悪口が最大1年の刑事罰になる理由

法規・刑罰・代償
侮辱罪とは?ざっくりと3行で
  • 侮辱罪とは、事実を示さなくても公然と人を侮辱した場合に成立する刑法231条の犯罪で、2022年の厳罰化により最大1年の拘禁刑または30万円以下の罰金が科せられる。
  • SNSで「死ね」「バカ」と書き込むだけで、具体的な事実を示さなくても公然と相手の名誉感情を傷つければ成立し告訴期間は3年(2022年改正後)に延長された
  • これを知っておけば、事実無根でなくても受けたSNSの侮辱的言葉を刑事告訴できる根拠を持てる

【深掘り】これだけは知っておけ

2022年7月7日施行の刑法改正で、侮辱罪の法定刑が「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」から「1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」へと大幅に引き上げられました。これに伴い公訴時効も1年から3年に延長され、SNS誹謗中傷への抑止力が強化されています。

侮辱罪は刑法231条に「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処する」と規定されています。名誉毀損罪(230条)との最大の違いは「事実の摘示が不要」な点で、バカ・気持ち悪い・死ね・クズといった抽象的な侮辱表現も対象になります。また、ある人物について障害や外見を侮辱するモノマネをする身体的な行為も侮辱に当たりうるとされています。侮辱罪も親告罪のため、被害者本人の告訴が必要です。2022年改正で公訴時効が3年になり、告訴から捜査・起訴まで時間的な余裕が生まれました。

侮辱罪が社会問題として注目を集めたきっかけの一つは、2020年のプロレスラー木村花さんのSNS誹謗中傷による死亡事件です。改正前の侮辱罪の法定刑が軽すぎて抑止力にならないという批判が高まり、2022年の改正につながりました。SNSは「公然」の場とみなされ、鍵付きアカウントの投稿でも閲覧者がいれば「公然」要件を満たすケースがあります。

侮辱罪と名誉毀損罪はしばしば混同されますが、被害者から見た使い分けは「相手の投稿が具体的な事実を示しているかどうか」です。「あの人は詐欺師だ」という事実の摘示がある投稿は名誉毀損罪、「あいつは最低な人間だ」という抽象的な侮辱は侮辱罪になります。実際の被害では両罪が競合することも多く、弁護士と相談してどちらで告訴するか判断するのが最善です。

侮辱罪被害への対処手順は名誉毀損罪と共通しています。まず投稿のスクリーンショットとURLを確保(削除前に必ず実行)し、弁護士に依頼してプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求で投稿者を特定します。特定後に被害者の居住地を管轄する警察署に告訴状を提出し、民事では慰謝料を含む損害賠償請求も検討できます。SNSプラットフォームの通報機能による投稿削除は補完的な手段として活用しつつ、法的手続きの証拠保全を最優先にしてください。

侮辱罪の2022年改正前後の比較

項目改正前(〜2022年6月)改正後(2022年7月7日〜)
法定刑拘留(30日未満)または科料(1万円未満)1年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金等
公訴時効1年3年
抑止力実質的に機能不全と批判懲役相当・罰金が選択肢に加わる

典型的なフレーズ・文脈

匿名でSNSに侮辱的なコメントを投稿する加害者のイラストアイコン
詐欺師

どうせ匿名だし、バカとかクズとか書いても科料で終わりでしょ。事実じゃないから名誉毀損にもならない。もう3年も前の投稿だから時効だ。

2022年改正前の古い認識に基づく誤解の典型です。改正後は最大1年の拘禁刑・時効3年に延長されており、「バカ」だけでも侮辱罪が成立します。

侮辱罪厳罰化の背景を解説するニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

2022年7月から施行された改正刑法により、侮辱罪の法定刑が引き上げられました。SNS上の誹謗中傷が深刻な社会問題となる中、抑止力の強化が急務とされ、罰金刑の新設と公訴時効の3年への延長が行われています。

2022年の侮辱罪厳罰化を伝えるニュース番組のキャスターを想定した表現です。木村花さんの事件が改正の背景にあることも広く報道されました。

侮辱罪被害の対処手順を説明する弁護士のイラストアイコン
専門家

厳罰化で公訴時効が3年になりましたが、投稿者を特定するための発信者情報開示は時間との勝負です。投稿が削除されるとIPアドレスが取れなくなる。スクリーンショットを保全したら、すぐ弁護士に開示請求の依頼をしてください。侮辱罪と名誉毀損罪のどちらで告訴すべきかも一緒に検討します。

弁護士が、SNSで侮辱を受けた被害者に発信者特定の緊急性と告訴罪名の検討を助言する場面を想定しています。

困ったときの相談窓口

SNSでの侮辱・誹謗中傷被害に遭った場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
警察相談専用電話#9110平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる)侮辱・誹謗中傷被害の相談
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00告訴・損害賠償の法的相談
IPA安心相談窓口03-5978-7509平日 10:00〜12:00・13:30〜17:00ネット上の侮辱・サイバー被害の相談

【まとめ】3つのポイント

  • 事実なしでも罪になる:侮辱罪は「バカ」「死ね」などの抽象的な侮辱で成立し、具体的な事実の摘示は不要です。
  • 2022年改正で別物になった:法定刑が最大1年の拘禁刑、時効が3年に強化されました。「科料だから怖くない」という時代は終わっています。
  • 削除前のスクリーンショットが命綱:投稿が消えると発信者特定が困難になります。見つけた瞬間に保全し、すぐ弁護士へ。

よくある質問

Q
「バカ」「死ね」とSNSに書かれただけで、本当に刑事事件になりますか?
A

なります。2022年改正後の侮辱罪は、公然と人を侮辱する言葉であれば抽象的な表現でも対象になります。実際にSNS上の侮辱的コメントで書類送検・起訴に至った事例があります。ただし告訴が必要(親告罪)なため、被害者本人が動く必要があります。証拠を保全して弁護士に相談するのが最初の一歩です。

Q
侮辱罪の告訴は何年以内にしなければなりませんか?
A

2022年改正後は、犯人を知った日から3年以内です。改正前は1年と非常に短かったため、被害者が間に合わないケースが多々ありました。3年に延長されたことで告訴の機会が広がりましたが、発信者情報開示の手続きには時間がかかるため、気づいたら早めに動くことには変わりありません。

Q
LINEのグループで侮辱的なメッセージを送られました。これも侮辱罪になりますか?
A

グループの規模や状況によります。侮辱罪の「公然」要件は、不特定または多数の人が知りうる状態を指します。数人の閉じたグループでも、メンバーが多ければ「多数」として成立するケースがあります。一方で1対1のトークでは「公然」が認められにくいです。具体的な事実を示した侮辱なら名誉毀損罪になる場合もあり、弁護士に状況を説明して判断してもらうのが確実です。

Q
侮辱罪と名誉毀損罪との違いは何ですか?
A

具体的な事実を示すかどうかが分かれ目です。侮辱罪は事実の摘示なしに成立し、法定刑は最大1年の拘禁刑です。名誉毀損罪は公然と具体的な事実を示して社会的評価を下げることが要件で、法定刑は最大3年の拘禁刑です。具体的な事実を伴う中傷は名誉毀損罪のほうが成立しやすく、刑罰も重くなります。バカなど事実なしの悪口は侮辱罪、詐欺をしたなど事実を示した中傷は名誉毀損罪です。

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【出典】参考URL

https://tangram.gr.jp/blog/detail/20260325125005/:2022年改正・法定刑引き上げ・公訴時効3年への延長の根拠
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5875/:侮辱罪と名誉毀損罪の違い・成立要件の根拠
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202408_11.pdf:侮辱罪の事実摘示の有無による名誉毀損との区別の根拠
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00194.html:法務省による侮辱罪厳罰化のQ&Aの根拠

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