- 不法行為とは、わざと、またはうっかりで他人の権利や利益を傷つけた者が、その損害を金銭で償う責任を負うという、民法の基本ルールだ。
- 詐欺や事故、誹謗中傷などで被害を受けた人が、加害者の故意や過失を示すことで、財産的な損害だけでなく精神的苦痛への慰謝料まで賠償を求められる仕組みになっている。
- これを知っておけば、詐欺被害で契約を取り消すだけでなく、受けた損害そのものの賠償も請求できるとわかる。
【深掘り】これだけは知っておけ
不法行為は、民法709条に定められた制度で、条文は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。故意とはわざと、過失とはうっかり(注意すれば避けられたのに怠ったこと)を意味します。よそ見運転で歩行者にけがをさせる、他人の物を壊す、うそで人をだまして財産を奪うといった行為が典型例です。損害賠償が認められるには、一般に次の要件を満たす必要があります。加害者に責任能力があること、故意または過失があること、加害行為に違法性があること、実際に損害が発生していること、そして加害行為と損害との間に因果関係があることです。
賠償の対象は、治療費や修理費といった財産的な損害にとどまりません。民法710条により、精神的苦痛に対する慰謝料など財産以外の損害も賠償の対象になります。詐欺被害でいえば、だまし取られたお金そのものに加え、被害によって受けた精神的ダメージも含めて請求できる可能性があるわけです。ここで重要なのが時効です。不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年のうち、いずれか早いほうの経過で時効消滅します(民法724条。人の生命・身体を害する場合は3年が5年に伸びる特則があります)。つまり、誰がやったか分かっていながら3年放置すると、請求できなくなる恐れがあります。なお、未成年者などに責任能力がない場合は、本人ではなく親などの監督義務者が責任を負うことがあります(民法714条)。これらは2017年の民法改正でも整理が図られた分野です。
不法行為は、詐欺・恐喝といった財産犯の被害から、交通事故、ネット上の誹謗中傷によるプライバシー侵害や名誉毀損まで、幅広い被害の救済の土台となります。注意したいのは、故意・過失の立証責任が原則として請求する側(被害者側)にある点です。相手の故意や過失、損害額、因果関係を証拠で示せなければ、賠償は認められません。だからこそ、被害に遭ったら、契約書・振込記録・やり取りのメッセージ・診断書など、損害と加害行為を裏づける証拠を早期に確保することが何より重要です。時効も進行するため、被害に気づいたら証拠を整え、できるだけ早く法テラスや弁護士に相談して、損害賠償請求の道筋を立てましょう。
不法行為による損害賠償の5つの要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 責任能力 | 自分の行為の善悪を判断できる能力(おおむね12歳前後以上)があること。 |
| 故意または過失 | わざと、または注意を怠った落ち度があること。 |
| 違法性 | 正当な行為ではなく、法的に許されない行為であること。 |
| 損害の発生 | 財産的損害や精神的損害が現実に生じていること。 |
| 因果関係 | 加害行為と損害との間に原因と結果のつながりがあること。 |
典型的なフレーズ・文脈

損害賠償だなんて、証拠でもあるんですか。私がわざとやったなんて証明できないでしょう。立証はそっちの仕事だ。証拠がなければ裁判をやっても無駄ですよ。泣き寝入りするしかないんじゃないですか。
立証責任が被害者側にあることを逆手に取り、損害賠償の請求を諦めさせようとする加害者の発言です。だからこそ、被害の証拠を早期に確保しておくことが反撃の鍵になります。

裁判所は、虚偽の投資話で資金を集めた業者に対し、民法の不法行為に基づく損害賠償を命じました。判決では、だまし取った元本に加え、被害者が受けた精神的苦痛への慰謝料の支払いも認められています。
投資詐欺をめぐる損害賠償訴訟の判決を伝える報道番組のキャスターを想定した表現です。

損害賠償を請求するには、相手の故意過失や損害額を被害者側が証拠で示す必要があります。振込記録ややり取りのメッセージは消さずに残してください。請求権は相手を知ってから3年で時効にかかるので、放置は禁物です。早めにご相談を。
弁護士が、不法行為に基づく損害賠償について、証拠保全と時効という法的手段の要点を助言する場面を想定しています。
困ったときの相談窓口
詐欺やトラブルで損害を受け、賠償請求を検討する場合は、以下の窓口に相談できます。
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 対応内容 |
|---|---|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 0570-078374 | 平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00 | 損害賠償請求の法的相談・費用立替 |
| 消費者ホットライン | 188 | 地域の窓口に準ずる | 悪質商法・被害回復の相談 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる) | 詐欺・恐喝など犯罪被害の相談 |
【まとめ】3つのポイント
- 損害を加害者に負わせる土台:不法行為は、故意や過失で他人を傷つけた者に、損害を金銭で償わせる民法の基本ルールです。
- 慰謝料まで含めて請求できる:財産的損害だけでなく、精神的苦痛への慰謝料も対象です。詐欺被害では取消しや不当利得とは別ルートになります。
- 立証と時効が勝負どころ:故意過失の立証は被害者側の責任で、請求権は知った時から3年で時効消滅。証拠を残し、早めに法テラスへ相談を。
よくある質問
-
Q詐欺の被害で、だまし取られたお金以外も請求できますか?
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A
請求できる場合があります。不法行為に基づく損害賠償では、だまし取られた金額本体に加え、民法710条により精神的苦痛への慰謝料も対象になります。事案によっては弁護士費用の一部が損害として認められることもあります。契約の取消しや不当利得返還だけでなく、不法行為による賠償も視野に入れると、回復できる範囲が広がる可能性があります。
-
Q損害賠償を請求するのに、こちらが証拠を集める必要がありますか?
-
A
はい。不法行為では、相手の故意または過失、損害の発生、両者の因果関係を、原則として請求する側が証拠で立証する責任を負います。つまり、被害者が動かなければ賠償は認められません。振込記録、契約書、メッセージのやり取り、診断書など、被害と加害行為を裏づける資料を、できるだけ早く確保しておくことが決定的に重要です。
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Q不法行為の損害賠償は、いつまで請求できますか?
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A
損害と加害者の両方を知った時から3年、または不法行為があった時から20年のうち、早いほうの経過で時効消滅します。とくに、加害者が誰か分かっている場合の3年は意外と短いので注意が必要です。時効が迫っているときは、内容証明郵便での催告や訴訟提起などで時効の進行を止める手立てがあるので、早めに専門家に相談してください。
-
Q不法行為と不当利得返還請求との違いは何ですか?
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A
請求の狙いどころが違います。不法行為は、加害者の故意や過失を前提に、生じた損害(慰謝料を含む)の賠償を求めるものです。不当利得返還請求は、相手の故意過失を問わず、法律上の原因なく得た利益の返還を求めるもので、立証は比較的シンプルです。詐欺被害では両方が成り立つことが多く、慰謝料まで取りたいなら不法行為、確実に元本回収を狙うなら不当利得、と使い分けや併用が検討されます。
【出典】参考URL
https://www.adire.jp/lega_life_lab/affair/infidelity-other/column137/:民法709条の条文・損害賠償の5要件・責任能力の根拠
https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20317/:故意過失・権利利益の侵害・710条の精神的損害の根拠
https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20105/:724条の時効(知った時から3年・行為時から20年)・不当利得との選択の根拠
https://www.daylight-law.jp/songaibaisho/qa/qa7/:一般不法行為と特殊不法行為・714条の監督義務者責任の根拠


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