少額訴訟とは?60万円以下を自分で回収する方法

法規・刑罰・代償
少額訴訟制度とは?ざっくりと3行で
  • 少額訴訟制度とは、60万円以下のお金の支払いを求めるときに、簡易裁判所で原則1回の審理だけで決着をつけられる、個人でも使えるスピード重視の裁判のことだ。
  • 貸したお金が返ってこない、敷金が戻らないといった少額のトラブルで泣き寝入りしそうな人が弁護士を立てず数千円の費用で迅速に勝訴判決と強制執行への道を得られる仕組みになっている。
  • この制度を知っておけば、詐欺被害や未払いトラブルで少額だからと諦めず、自力で回収に動けるようになる。

【深掘り】これだけは知っておけ

少額訴訟は「60万円以下」「原則1回の審理で即日判決」が二大原則です。通常の裁判のように何度も期日を重ねる必要がなく、その日のうちに結論が出るため、少額トラブルの泣き寝入りを防ぐ強力な武器になります。

少額訴訟制度は、民事訴訟法368条以下に定められた特別な裁判手続きです。対象は60万円以下の金銭の支払い請求に限られ、建物の明け渡しや物の引き渡しといった金銭以外の請求には使えません。最大の特徴は、原則として1回の口頭弁論期日で審理を終え、その場で判決が言い渡される点にあります。証拠書類や証人は審理の日にすぐ調べられるものに限られるため、契約書・領収書・やり取りの記録など、手元の証拠で勝負が決まる比較的シンプルな争いに向いています。

知っておくべき制約もあります。判決に不服があっても控訴はできず、同じ簡易裁判所への異議申立てが1回だけ認められる仕組みです。また、被告(訴えられた側)が通常訴訟での審理を希望すれば、その時点で通常訴訟へ移行してしまいます。さらに、同じ簡易裁判所で1人が利用できるのは年10回までと制限されており、これは一部の貸金業者などが取り立て目的で制度を独占するのを防ぐためのものです。勝訴して判決が確定すれば、その判決をもとに相手の給料や預金を差し押さえる強制執行へ進めます。費用は申立手数料が数千円程度と、弁護士に通常訴訟を依頼する場合と比べて格段に安く済みます。

注意したいのは、相手が「通常訴訟に移行したい」と申し出ると、こちらの意向にかかわらず手続きが長期化することです。また、判決が出ても相手に差し押さえられる財産がなければ、現実に回収できないこともあります。訴える前に、相手の勤務先や口座といった財産の手がかりを把握しておくことが回収成功のカギになります。

少額訴訟は、副業の報酬未払い、フリマアプリでの代金トラブル、敷金返還、貸したお金の回収など、身近な金銭トラブルで広く活用できます。詐欺的な商法で少額をだまし取られたケースでも、相手の身元が特定できていれば請求の選択肢になり得ます。とはいえ、相手が所在不明だったり、争点が複雑で証拠が揃わなかったりする場合は、支払督促や通常訴訟など別の手段が適していることもあります。まずは簡易裁判所の窓口や法テラスで、自分のケースに少額訴訟が向いているかを相談してみるとよいでしょう。

少額訴訟と通常訴訟の比較

項目少額訴訟通常訴訟
対象金額60万円以下の金銭請求金額・内容の制限なし
審理回数原則1回・即日判決複数回・数か月〜年単位
控訴不可(異議申立て1回のみ)可能
利用回数同一簡裁で年10回まで制限なし

手続きの基本ステップ

ステップ内容
①訴状の提出相手の住所地を管轄する簡易裁判所に少額訴訟の訴状と証拠を提出する。
②期日の指定裁判所が審理の日を指定し、双方に通知する。
③審理・判決原則1回の期日で双方の言い分と証拠を調べ、その日に判決または和解となる。
④強制執行判決確定後も支払いがなければ、給料や預金の差し押さえを申し立てる。

典型的なフレーズ・文脈

少額訴訟を悪用して根拠のない請求で相手を脅す悪質業者のイラストアイコン
詐欺師

少額訴訟を起こしますよ。裁判所から呼出状が届けば、あなたは1回の審理で負ける。控訴もできない仕組みなんです。今ここで和解金を払えば取り下げてあげますよ。裁判沙汰になる前に、穏便に解決しましょう。

架空請求業者が「少額訴訟」「即日判決」「控訴できない」といった制度の言葉を断片的に使い、相手を脅して和解金名目の金銭を払わせようとする場面です。実際には根拠のない請求に判決は出ません。

少額訴訟制度の使い方を紹介するニュースキャスターのイラストアイコン
キャスター

60万円以下の金銭トラブルなら、簡易裁判所の少額訴訟が利用できます。原則1回の審理で即日判決が出るのが特徴で、申立費用も数千円程度です。本物の裁判所からの呼出状か不安な場合は、最寄りの簡易裁判所に直接確認しましょう。

暮らしの法律情報を扱う番組のキャスターが、少額訴訟の使い方とあわせて、偽の呼出状による架空請求への注意を呼びかける場面を想定しています。

少額訴訟の準備を助言する司法書士のイラストアイコン
専門家

少額訴訟は本人だけでも進められますが、勝敗は当日提出する証拠で決まります。契約書や振込記録、やり取りのメッセージを時系列で整理しておきましょう。訴状の書き方は簡易裁判所の窓口でも教えてもらえますし、費用が心配なら法テラスの無料相談を使う手もあります。

簡易裁判所での手続き支援を行う司法書士が、少額訴訟を起こす前の証拠準備という予防的な観点から助言する場面を想定しています。

少額訴訟制度の歴史

少額訴訟制度は、海外の簡便な訴訟制度を参考に、少額トラブルでの泣き寝入りをなくすために導入され、その後利用しやすく拡充されてきました。歩みを振り返ります。

出来事
1996年民事訴訟法の全面改正により少額訴訟制度が創設される。当初の対象は30万円以下の金銭請求だった。
1998年新しい民事訴訟法の施行とともに、少額訴訟制度の運用が始まる。
2003年民事訴訟法の一部改正により、対象金額が30万円以下から60万円以下に拡大される。
現在身近な金銭トラブルの解決手段として定着し、本人による申立てを支える書式や案内も整備されている。

困ったときの相談窓口

少額のお金のトラブルや、訴訟の進め方に不安がある場合は、以下の窓口に相談できます。

窓口名電話番号受付時間対応内容
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374平日 9:00〜21:00/土曜 9:00〜17:00法的トラブルの相談・弁護士費用の立替
消費者ホットライン188地域の窓口に準ずる契約トラブル・架空請求の相談
警察相談専用電話#9110平日 8:30〜17:15(各都道府県で異なる)架空請求・詐欺被害の相談

【まとめ】3つのポイント

  • 少額トラブルの即決ルート:少額訴訟は60万円以下の金銭請求を、原則1回の審理で即日決着させる泣き寝入り防止の特急券のような制度です。
  • スピードと引き換えの制約:控訴ができず、相手が通常訴訟を望めば移行する、年10回までという制限があり、シンプルで証拠の揃った争いに向いています。
  • 使う前に証拠と相手の財産を確認:勝敗は当日の証拠で決まり、回収には相手の財産情報が要ります。迷ったら法テラスや簡易裁判所の窓口で相談しましょう。

よくある質問

Q
少額訴訟は弁護士なしで自分一人でもできますか?
A

はい、本人だけで手続きできるように設計された制度です。簡易裁判所の窓口に申立用紙と記入例が備え付けられており、書き方も教えてもらえます。ただし勝敗は当日に提出する証拠で決まるため、契約書や振込記録などの準備は欠かせません。費用が心配なら法テラスの無料相談も利用できます。

Q
勝訴したのに相手が払わない場合はどうなりますか?
A

判決が確定しても自動でお金が戻るわけではありません。相手が任意に支払わない場合は、その判決をもとに相手の給料や預金を差し押さえる強制執行を別途申し立てる必要があります。つまり、相手にどんな財産があるかを把握できているかどうかが、最終的な回収を左右します。

Q
少額訴訟の呼出状が届いたのですが、身に覚えがありません。詐欺ですか?
A

本物の裁判所からの書類を無視すると、出席しないまま不利な判決が確定する危険があるため、まず真偽の確認が最優先です。書類に記載された裁判所に、自分で調べた代表電話から連絡して事件番号を照会してください。SMSやメールで「裁判」「差し押さえ」をうたい、特定の電話番号や支払いを促すものは架空請求の疑いが濃厚です。

Q
少額訴訟と支払督促との違いは何ですか?
A

どちらも簡易裁判所を使う簡易な手続きですが、入口が異なります。少額訴訟は審理の期日が開かれ、裁判官の前で双方が主張して即日判決をもらうミニ裁判です。支払督促は審理を開かず、書類審査だけで裁判所が相手に支払いを命じる手続きで、相手が異議を出すと通常訴訟へ移行します。相手の反論が見込めないなら支払督促、争いがありそうなら少額訴訟が向いています。

【出典】参考URL

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_02/index.html:少額訴訟の定義・1回審理・強制執行の根拠
https://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/syougakusosyou/index.html:60万円以下の対象・控訴不可・通常訴訟移行の根拠
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E9%A1%8D%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E5%88%B6%E5%BA%A6:制度創設の経緯・海外制度モデルの根拠
https://www.yokohama-roadlaw.com/glossary/cat2/post_686.html:民訴法368条・30万円から60万円への拡大の根拠
https://www.tou-an-kyo.or.jp/soudanjirei/8_list_detail.html:年10回までの利用回数制限の根拠

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