- ナイジェリア出身のラモン・アバス(通称ハッシュパッピ)は、Instagramのフォロワー250万人以上に豪華な生活を見せびらかすインフルエンサーだった
- その豪華な生活の資金源はビジネスメール詐欺(BEC)による資金洗浄。米国の法律事務所から約4000万ドル、マルタの銀行から1470万ドルを詐取するなど、18ヶ月間で3億ドル以上の洗浄に関与した
- 2020年にドバイでFBIの捜査により逮捕され、懲役11年と170万ドルの賠償金が科された。FBIは彼を世界で最も多産なマネーロンダラーの一人と評した
いつか、もっと多くの若者がこの道に加わってくれることを願っています――。ハッシュパッピはInstagramにそう投稿していました。札束を紙吹雪のようにばらまく動画、ベントレーやフェラーリが並ぶガレージ、グッチとルイ・ヴィトンに身を包んだ自撮り。250万人のフォロワーが憧れたその生活は、世界中の企業や個人から盗んだ金で成り立っていたのです。
この記事では、SNS時代が生んだ新型の詐欺師がいかにしてビジネスメール詐欺で巨額の資金を洗浄し、そしてFBIに捕らえられたのかを解説します。
ハッシュパッピの経歴
ラモン・アバスとは、1982年にナイジェリアで生まれたサイバー犯罪者兼Instagramインフルエンサーです。通称ハッシュパッピ、またはビリオネア・グッチ・マスターと名乗っていました。
ナイジェリアのラゴスで育ったアバスは、現地では古着の転売で生計を立てていたとされています。父親はラゴスのタクシー運転手でした。やがてサイバー犯罪の世界に足を踏み入れ、ナイジェリアでは地元の呼称でヤフーヤフーボーイ(サイバー犯罪者の俗称)として知られるようになりました。
2014年にマレーシアのクアラルンプールに移住し、2017年にはドバイに拠点を移しています。ドバイではパラッツォ・ヴェルサーチ・ホテルの1泊1000ポンドのスイートに暮らし、自らを不動産王と称してInstagramで豪華な生活を発信し続けました。
ビジネスメール詐欺(BEC)の手口
ハッシュパッピの犯罪の中核は、ビジネスメール詐欺(Business Email Compromise、BEC)と呼ばれるサイバー犯罪でした。
BECとは、企業のメールアカウントに不正アクセスし、正規の取引を装って送金先を犯罪者の口座にすり替える手口です。請求書が届いた際に、正規の送信元に酷似した偽のメールアドレスから修正版の請求書を送り、銀行口座の情報だけを自分たちのものに変えるのです。
ハッシュパッピが関与した主な詐欺事件は以下の通りです。
| 被害者 | 手口 | 被害額 |
|---|---|---|
| 米国の法律事務所 | 不動産取引の送金先を偽メールですり替え | 約4000万ドル(うち約92万ドルが実際に詐取) |
| マルタの銀行(バンク・オブ・バレッタ) | サイバー強盗で不正送金 | 1470万ドル |
| カタールの実業家 | 学校建設の融資を偽装し、ウェルズ・ファーゴの銀行員を装う | 110万ドル以上 |
| 英プレミアリーグのクラブ | 移籍金の送金に介入を試みる | 1億2400万ドル(未遂) |
検察は、アバスが18ヶ月間で3億ドル以上の資金洗浄に関与したと主張しました。ただし意図された損失の多くは実際には発生しなかったとも述べています。

BEC詐欺は日本でも急増しています。手口はシンプルで、取引先や上司のメールアドレスに酷似した偽アドレスから送金指示のメールを送るだけです。防御策も明確で、送金先の変更依頼があった場合は必ず電話で相手に直接確認すること。メールだけで送金先を変更してはいけません。
逮捕と判決
2020年6月、FBIの捜査に基づきドバイ警察がアバスのパラッツォ・ヴェルサーチの部屋を急襲し、フォックスハント2と名付けられた作戦で逮捕しました。
強制捜査では1億5000万ディルハム(約4000万ドル)以上の現金、高級車13台(約700万ドル相当)、ノートパソコン21台、スマートフォン47台、80万件の潜在的被害者のメールが押収されています。
2020年7月3日にアメリカに身柄が引き渡され、2021年7月28日にマネーロンダリングの共謀罪で有罪を認めました。その際、ナイジェリア警察の副長官アッバ・キャリを共犯者として名指ししたことも注目を集めています。
2022年11月8日、オーティス・ライト判事は懲役11年(135ヶ月)と170万ドルの賠償金を言い渡しました。FBIロサンゼルス支局長はアバスを世界で最も多産なマネーロンダラーの一人と評しています。アバスは現在ニュージャージー州のFCI フォートディックスに収監されており、2029年8月に釈放予定です。
まとめ
- ハッシュパッピはInstagramの豪華な投稿で250万人のフォロワーを獲得しながら、その裏でBEC詐欺による資金洗浄を行っていた
- 18ヶ月間で3億ドル以上の洗浄に関与し、FBIに世界最大級のマネーロンダラーと認定された。懲役11年の判決
- BEC詐欺から身を守る鉄則は、送金先の変更依頼は必ず電話で直接確認すること。メールだけで送金先を変更するのは最も危険な行為だ
よくある質問
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QBEC詐欺とは何ですか?
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A
ビジネスメール詐欺(Business Email Compromise)の略称で、企業のメールアカウントをハッキングまたは偽装し、正規の取引を装って送金先を犯罪者の口座にすり替える手口です。FBIによればBEC詐欺はアメリカで最もコストの高いサイバー犯罪であり、毎年数十億ドルの被害が発生しています。日本でも同様の手口が増加中です。
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QSNSで豪華な生活を見せる人は詐欺師ですか?
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A
全員が詐欺師というわけではありませんが、ハッシュパッピの事件は、SNS上の豪華な生活が犯罪収益に基づいている可能性があることを示しています。特に、具体的なビジネスの実態が不明確なのに極端に豪華な生活を見せびらかし、フォロワーに投資や参加を勧誘するアカウントには注意が必要です。
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Q北朝鮮との関連はありますか?
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A
FBIは、ハッシュパッピが関与したマルタの銀行からの不正送金について、北朝鮮の軍事情報機関のメンバー3人が2021年にサイバー強盗の罪で起訴されていることを明らかにしています。FBIはアバスと共犯者を、より大規模な国際的マネーロンダリングとサイバー犯罪のネットワークの一部と位置づけています。
【出典】参考URL
- Wikipedia:Hushpuppi:経歴、BEC詐欺の詳細、逮捕と判決
- CNN:懲役11年の判決報道
- CBS News:判決とBEC詐欺の解説


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