エリザベス・ホームズとは?セラノス血液検査詐欺の全貌

詐欺事件
エリザベス・ホームズとは?セラノス血液検査詐欺の全貌を3行で要約
  • 19歳でスタンフォード大学を中退し、数滴の血液で200種以上の検査ができると謳うセラノスを創業。時価総額は最大9000億円に達した
  • しかし240種類の検査のうち自社技術で実施していたのはわずか15種類で、大半は他社の機器を使用。技術そのものが虚構だった
  • 2022年に禁固11年3ヶ月の判決を受け、2023年から服役中。次のスティーブ・ジョブズと称された女性起業家の転落劇だ

黒のタートルネックに身を包み、低い声でプレゼンテーションを行う若き女性CEO。彼女はスティーブ・ジョブズの再来と呼ばれ、世界最年少の自力女性ビリオネアとしてフォーブスの長者番付に名を連ねました。

エリザベス・ホームズが創業した血液検査ベンチャーセラノスは、指先から数滴の血液を採取するだけで200種類以上の疾患検査ができるという画期的な技術を掲げ、時価総額9000億円を記録しています。しかしその技術は、ほぼ全てが嘘でした。

この記事では、シリコンバレー史上最大の詐欺と呼ばれるセラノス事件の全貌と、なぜ世界中の投資家が騙されたのかを解説します。

エリザベス・ホームズの経歴

エリザベス・ホームズとは、19歳でスタンフォード大学を中退し、医療に革命を起こすというビジョンで世界を欺いた起業家であり詐欺師です。

1984年、ワシントンDCの公務員の家庭に生まれました。9歳のときに親戚に大きくなったら億万長者になりたいと語っていたとされ、幼少期から並外れた上昇志向を持っていたことが窺えます。スタンフォード大学で化学工学を専攻しましたが、2003年に2年生で中退しています。

中退の決断は、シンガポールのゲノム研究所でのインターン経験がきっかけでした。当時アメリカでは血液検査に約15万円がかかる状況であり、少量の血液で安価に検査ができれば医療が変わるというアイデアに確信を持ったのです。このアイデア自体は社会的に意義のあるものでした。問題は、そのアイデアを実現する技術がなかったことです。

セラノスの栄光と虚構

セラノスが世間に与えたインパクトは絶大でしたが、その核心にある技術は実現されていませんでした

セラノス事件の時系列
  • 2003年
    セラノスを創業
    19歳でスタンフォード大学を中退し、少量の血液で多数の検査ができる技術の開発を目指してセラノスを設立した
  • 2013年9月
    ドラッグストア大手ウォルグリーンズと提携
    通常の1000分の1の採血量で安価な臨床検査が可能と発表。セラノス・ウェルネス・センターの1号店をオープンし、一般消費者への検査提供を開始した
  • 2014年
    時価総額9000億円、最年少女性ビリオネア
    380億円超を調達し時価総額は9000億円に。株式の過半を保有するホームズは推定資産45億ドルとなり、フォーブスの米女性長者番付で1位に。役員にはキッシンジャー元国務長官も名を連ねた
  • 2015年10月
    WSJが不正を告発
    ウォール・ストリート・ジャーナルの記者ジョン・カレイロウが調査結果を発表。240種類の検査のうちエジソンマシンで実施されたのは15種類のみで、大半は他社機器を使用していたと暴露した
  • 2018年6月
    11件の詐欺罪で起訴
    司法省がホームズと元COOのバルワニを詐欺罪で起訴。ホームズはCEOを辞任した
  • 2022年1月
    4件の詐欺罪で有罪評決
    11件の罪状のうち投資家に関連する有線通信不正行為の4件について有罪評決。患者に関連する罪は無罪となった
  • 2022年11月
    禁固11年3ヶ月の判決
    カリフォルニア州の連邦地裁が禁固11年3ヶ月の判決を下した。弁護側は最長18ヶ月の自宅軟禁を求めていたが却下された
  • 2023年5月
    連邦刑務所に収監
    2人の子供を出産した後、テキサス州の連邦女性刑務所に収監された。2032年12月まで服役予定
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セラノス事件で最も恐ろしいのは、この詐欺が医療に関わっていたことです。不正確な血液検査の結果に基づいて治療判断が行われた可能性があり、命に関わるリスクがありました。

投資詐欺は金銭的な被害で済みますが、医療詐欺は人の命を危険にさらします。その意味で、ホームズの罪は金融詐欺の範囲をはるかに超えていたのです。

なぜ世界中が騙されたのか

世界中の投資家や専門家がセラノスに騙された最大の理由は、シリコンバレー特有のビジョン先行型の評価文化にあります。

シリコンバレーでは、不可能を認めないことで不可能を実現するという文化が根付いています。ホームズはこの文化を完璧に利用し、技術が未完成であっても大きなビジョンを語ることで投資を獲得しました。徹底した秘密主義と、ジョブズを彷彿とさせるカリスマ性が疑念を封じ込めたのです。

出資者にはメディア王ルパート・マードック、オラクル共同創業者ラリー・エリソンなどが名を連ね、役員にはキッシンジャー元国務長官が就任していました。これだけの有力者が関わっているのだから安全だという社会的証明が働き、投資家たちの独自の検証を妨げたのです。

現代に通じる教訓

セラノス事件は、革新的な技術を標榜するスタートアップの主張を、どこまで信じてよいのかという根本的な問題を提起しました。

投資判断において、ビジョンの壮大さと技術の実現可能性は全く別の問題です。ホームズのプレゼンテーションは感動的でしたが、独立した第三者による技術検証は一度も行われていませんでした。投資家は彼女のビジョンに感動し、技術の検証を怠ったのです。

技術系スタートアップへの投資を検討する際には、その技術が独立した専門家によって検証されているか、査読付き論文として発表されているかを確認してください。画期的すぎる技術の裏には、誰も検証していないという落とし穴が隠れている可能性があります。

まとめ

  • ホームズは数滴の血液で200種類以上の検査ができると偽り、時価総額9000億円のユニコーン企業を作り上げたが、技術の大半は虚構だった
  • シリコンバレーのビジョン先行型の評価文化と、有力者の参加による社会的証明が、投資家の独自検証を妨げた
  • 技術系投資では独立した第三者による技術検証の有無が最も重要な判断材料だ。ビジョンの壮大さだけで投資判断をしてはならない

よくある質問

Q
セラノスの技術は全くのデタラメだったのですか?
A

完全にゼロだったわけではありません。FDAは自社開発の血液採取装置ナノテイナーが単純ヘルペスウイルス検査に使用できることを認めています。しかし、240種類の検査のうち自社のエジソンマシンで実施されたのは15種類のみで、残りは他社の一般的な検査機器で行われていました。宣伝されていたような革新的技術は実現されていなかったのが事実です。

Q
ホームズの低い声は作り物だったのですか?
A

複数の元セラノス従業員が、ホームズの独特の低い声は意図的に作られたものではないかと証言しています。男性優位のスタートアップ業界で権威を示すために、意識的に低い声を使っていた可能性が指摘されています。裁判中の映像では、以前より高い声で話している場面も確認されています。

Q
少量の血液での検査は現在実現していますか?
A

部分的に実現しています。イスラエルのSight Diagnostics社は、2滴の血液で血液中の赤血球数、白血球数、血小板数などを調べることができる検査機Oloを開発しています。ただし、セラノスが謳っていたような200種類以上の疾患検査を数滴の血液で行う技術は、現時点ではまだ実現されていません。

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