預貯金詐欺は高齢女性8割超|手口別の被害者性別

預貯金詐欺は高齢女性8割超|手口別の被害者性別を3行で要約
  • 令和7年の確定値で預貯金詐欺の被害者の83.1%が65歳以上の女性だと分かった
  • 逆に架空料金請求詐欺は65歳以上男性の割合が女性を上回るという真逆の傾向だ
  • 実家に注意喚起するなら、手口ごとに刺さる相手が違うことを前提に伝えるべきだ
預貯金詐欺で高齢女性が自宅を訪れた男にキャッシュカードと暗証番号を渡し、預金を引き出されるまでの流れを描いた4コマ漫画
①口座が悪用されていると告げる電話が自宅にかかる。②訪れた男にキャッシュカードと暗証番号を渡す。③記帳した通帳で預金の消失を知る。④賠償罪子が手口の冷徹な設計を断じる。

この4コマで描いたのは、統計上もっとも女性に偏っている手口である預貯金詐欺の典型的な流れです。犯人は最初から金を要求せず、まず口座が悪用されているという不安だけを植え付けます。この段階で被害者は、自分がお金を取られる場面ではなく、自分の財産を守る場面に立っていると認識してしまいます。

次に登場するのが、自宅まで来る訪問者です。キャッシュカードと暗証番号は、本来なら他人に渡してはいけない情報の代表格ですが、直前の電話で守るための行動という文脈が作られているため、渡す行為が親切な手続きにすり替わります。金融機関や警察の職員が自宅にカードを取りに来ることは制度上ありません。

そして被害が発覚するのは、たいてい通帳を記帳した後です。カードと暗証番号がそろった時点で引き出しは即座に実行されるため、気づいた時には残高が消えています。だからこそ実家に伝えるべき一次防衛は、カードと暗証番号は誰が来ても渡さないという一点に絞るのが現実的でしょう。

実家の親や祖父母に詐欺の注意喚起をするとき、なんとなく怪しい電話に気をつけてね、で終わっていないでしょうか。統計を見ると、この伝え方はかなり効率が悪いと分かるでしょう。

警察庁が令和8年(2026年)5月22日に公表した令和7年(2025年)の確定値によると、特殊詐欺の被害者に占める高齢者の割合は、手口によって性別の偏り方がまるで違っていました。ある手口は圧倒的に女性が狙われ、別の手口では男性の割合が女性を上回ります。

この記事では、警察庁の統計表をもとに手口ごとの高齢被害者の性別傾向を整理し、その数字が何を意味しているのか、そして実家に何を伝えるべきかまでを解説します。統計の母数の読み違いが起きやすい箇所なので、そこも丁寧に扱っていきましょう。

手口別に見た高齢被害者の割合(令和7年確定値)

預貯金詐欺は被害者の83.1%が65歳以上の女性、架空料金請求詐欺は男性が女性を上回ります。同じ特殊詐欺でも、手口ごとに狙われる層がはっきり分かれているということです。

警察庁の資料にある高齢被害者の割合(法人被害を除く)の表を、そのまま整理したのが以下の数値です。すべて令和7年(2025年)の確定値になります。

手口 65歳以上・男性 65歳以上・女性 高齢者計
特殊詐欺全体 18.5% 32.8% 51.3%
オレオレ詐欺 13.9% 31.5% 45.4%
預貯金詐欺 15.7% 83.1% 98.8%
キャッシュカード詐欺盗 23.2% 75.7% 98.9%
還付金詐欺 35.5% 45.7% 81.1%
架空料金請求詐欺 21.4% 11.9% 33.2%
その他の手口 16.0% 4.9% 20.9%
この表の母数は、各手口の総認知件数(法人被害を除く)です。男性の欄と女性の欄を足すと、いちばん右の高齢者計と一致します。つまり65歳以上の被害者の中での男女構成比(合計100%になる内訳)ではありません。預貯金詐欺の15.7%+83.1%が98.8%にとどまるのは、残り(100%−98.8%=1.2%)が65歳未満の被害者だからです。

ここが最も誤読されやすいポイントです。預貯金詐欺の83.1%という数字は、高齢被害者のうち83.1%が女性という意味ではなく、預貯金詐欺の被害者全体のうち83.1%が65歳以上の女性という意味になります。

そのうえで警戒すべきは、預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗が、被害者のほぼ全員(それぞれ98.8%、98.9%)を65歳以上が占める手口だという事実でしょう。この2つは事実上、高齢者専用に設計された手口だと考えて差し支えありません。

高齢被害者の中での男女比率に直すとどうなるか

読者が直感的に知りたいのは、高齢の被害者に限ったときの男女比のはずです。そこで上の生数値どうしを割り算し、編集部で高齢被害者の中での男女比率を算出しました。

手口 高齢被害者中の男性比率 高齢被害者中の女性比率
特殊詐欺全体 36.1% 63.9%
オレオレ詐欺 30.6% 69.4%
預貯金詐欺 15.9% 84.1%
キャッシュカード詐欺盗 23.5% 76.5%
還付金詐欺 43.8% 56.4%
架空料金請求詐欺 64.5% 35.8%
その他の手口 76.6% 23.4%
この表は、警察庁の一次資料に直接載っている数値ではなく、同じ資料内の男性割合・女性割合を高齢者計で割って編集部が算出した参考値です(例:預貯金詐欺は15.7÷98.8=15.9%、83.1÷98.8=84.1%)。四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。

こうして並べると、傾向は一目瞭然です。預貯金詐欺は高齢被害者の8割超が女性であるのに対し、架空料金請求詐欺とその他の手口では男性が多数派に逆転します。

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詐欺師は性別を単なる属性として見ていない。誰が口座を管理し、誰が昼間の電話に出るのかという生活導線を読んでいるだけだ。

その読みが数字に出ている。不気味なほど合理的だろう。

なぜ手口ごとに狙われる性別が変わるのか

手口が求める行動が違うからです。カードを手渡す対面型は女性に偏り、公的手続きを装って本人に操作させる型は男性の比率が上がります。

預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗は、いずれも犯人側が自宅や指定場所まで来て、キャッシュカードそのものと暗証番号を受け取る接触型の手口です。日中に自宅の固定電話に出て、来訪者に応対する導線に乗りやすい層が、結果として被害の中心になっています。

一方で架空料金請求詐欺は、未払い料金があるという通知に対して本人が支払い手続きを行う形が中心です。還付金詐欺も、本人がATMを操作する必要があります。この2つは高齢被害者中の男性比率がそれぞれ64.5%、43.8%と、預貯金詐欺の15.9%とは明確に異なる分布を示しました。

なお特殊詐欺全体では、最初の接触ツールの78.8%が電話です。オレオレ型特殊詐欺と還付金詐欺にいたっては電話が9割以上を占めています。性別による偏りの前に、まず入口は電話だという大前提を押さえておきたいところです。

令和7年の数字は前年と単純比較できない

令和7年からニセ警察詐欺が新設分類となり、オレオレ詐欺の数値は令和6年以前と単純比較できません。中身が実質的に入れ替わっているためです。

令和7年のオレオレ詐欺の認知件数は14,489件でしたが、そのうち74.9%にあたる10,859件をニセ警察詐欺が占めています。つまり令和7年のオレオレ詐欺という枠は、実質的にニセ警察詐欺で構成されていると言ってよい状態でした。

令和7年(2025年)から統計分類が再編され、ニセ警察詐欺が新設分類として個別集計を開始しました。副業詐欺も同様に令和7年からの新設項目です。したがって、本記事で示したオレオレ詐欺の性別データ(65歳以上男性13.9%/65歳以上女性31.5%)も新設分類の影響を強く受けた数値であり、令和6年以前のオレオレ詐欺の性別傾向とは同列に扱えません。なお、ニセ警察詐欺単体の65歳以上・男女別の内訳は本資料に記載がなく、取得できません

手口ごとの件数と被害額の動きも見ておきましょう。令和7年の確定値と前年比は次の通りです。

手口 認知件数(前年比) 被害額(前年比)
特殊詐欺全体 27,832件(+6,789件、+32.3%) 1,423.1億円(+704.3億円、+98.0%)
オレオレ詐欺 14,489件(+7,737件、+114.6%) 1,138.1億円(+679.7億円、+148.3%)
預貯金詐欺 1,707件(−569件、−25.0%) 21.7億円(−3.8億円、−15.0%)
キャッシュカード詐欺盗 1,243件(−142件、−10.3%) 14.4億円(−3.9億円、−21.2%)
還付金詐欺 3,179件(−891件、−21.9%) 61.9億円(−1.8億円、−2.8%)
架空料金請求詐欺 5,706件(−10件、−0.2%) 131.7億円(−2.1億円、−1.6%)

特殊詐欺全体の27,832件を1年365日で割ると、1日あたり約76件(27,832÷365。一次資料には直接記載のない編集部算出の参考値)のペースです。この急増を牽引したのがニセ警察詐欺で、認知件数11,014件、被害額1,005.0億円、特殊詐欺全体の総認知件数に占める割合は39.6%に達しました。資料でも、総認知件数と被害総額を前年比で著しく押し上げた主たる要因として明記されています。

高齢者の被害率が14.0ポイント下がった本当の理由

高齢者被害率は前年比で14.0ポイント低下しましたが、高齢者の被害が減ったわけではありません。実数はむしろ増えています。

令和7年の高齢者(65歳以上)被害の認知件数は14,273件で、前年から535件、率にして3.9%増加しました。被害額は841.1億円です。それでも総認知件数に占める割合は51.3%で、前年比マイナス14.0ポイントとなっています。

これは実数は増えているのにシェアだけが下がるというねじれです。ニセ警察詐欺の増加に伴い、高齢者だけでなく20代・30代を含む幅広い年代で被害が増え、分母である総認知件数が急膨張したため、相対的に高齢者の割合が下がりました。高齢者が安全になったという読み方は完全な誤りです。

実際、オレオレ型手口の年代別認知件数(法人被害を除く、令和7年)を見ると、20代1,759件、30代2,284件と、若年層にも相当数の被害が発生しています。80代以上の3,235件、70代の2,453件と比べても無視できない規模でしょう。

年代 認知件数 年代 認知件数
10代 49件 50代 1,423件
20代 1,759件 60代 1,639件
30代 2,284件 70代 2,453件
40代 1,645件 80代以上 3,235件
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高齢者の割合が下がったというニュースを、高齢者が守られ始めた話だと受け取るのは早計だ。分母が膨らんだだけで、実数は増えている。

そして増えた分は、この記事を読んでいる世代に乗っている。

実家に何を伝えるべきか

伝えるべき内容は相手によって変えるのが効率的です。母や祖母には接触型、父や祖父には公的手続きを装う型を伝えます。

母・祖母に伝えること

預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗は、被害者の75.7%から83.1%を65歳以上の女性が占める手口です。伝えるべきは抽象的な注意ではなく、カードを取りに来る人がいるという具体的な場面でしょう。

銀行協会や警察を名乗る人物が自宅にキャッシュカードを取りに来ることはありません。暗証番号を口頭で尋ねる手続きも存在しないので、この2点だけは例外なしと伝えておくのが有効です。

父・祖父に伝えること

還付金詐欺は高齢被害者中の男性比率が43.8%、架空料金請求詐欺は64.5%と、男性の存在感が大きい手口です。いずれも、公的な手続きや正当な請求であるかのような体裁を取ります。

還付金があるという電話でATMに向かわせる案内は、制度上ありえません。未払い料金の請求も、電話やメッセージで即日の支払いを迫ってくる時点で疑うべき状況です。

性別を問わず効く一次対策

最も汎用性が高いのは、電話という入口そのものを細くすることです。特殊詐欺全体の当初接触ツールは電話が78.8%を占めています。

警察庁は、国際電話番号を利用した特殊詐欺への対策として、国際電話不取扱受付センターへの申込みによる国際電話の着信休止(固定電話・ひかり電話)を案内しています。携帯電話については、国際電話着信規制アプリや警察庁推奨の無料特殊詐欺対策アプリの普及を、みんなでとめよう!!国際電話詐欺#みんとめとして推進中です。

水際での阻止も機能しています。令和7年はコンビニエンスストア店員や金融機関職員等の声掛け等により、17,962件(−2,005件、−10.0%)、152.7億円(+60.8億円、+66.2%)の被害が阻止されました。ただし阻止率は39.8%で前年から9.5ポイント低下しており、店頭でのブロックだけに頼れる状況ではありません。

このほか、犯行に利用された固定電話番号544件と050IP電話番号1,320件の利用停止、新たな固定電話番号等の提供拒否要請10件も令和7年に実施されています。幅広い年代への広報啓発としては、ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~(SOS47)のプロジェクトチームが活動を続けています。

まとめ

  • 令和7年確定値で預貯金詐欺の被害者の83.1%が65歳以上女性、架空料金請求詐欺は男性21.4%が女性11.9%を上回った
  • この表の母数は各手口の総認知件数であり、男女を足しても100%にはならない点を読み違えてはいけない
  • 高齢者被害率の14.0ポイント低下は実数増・シェア減のねじれであり、安全になった証拠ではない

次のアクションとして、実家の固定電話について国際電話不取扱受付センターへの着信休止の申込みを検討してみてください。手口ごとの注意喚起を伝えるより先に、入口を1本閉じるほうが確実です。

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よくある質問

Q
預貯金詐欺の83.1%は、高齢被害者の中での女性の割合ですか。
A

いいえ、預貯金詐欺の被害者全体(法人被害を除く)に占める65歳以上女性の割合が83.1%という意味です。母数は高齢被害者ではなく、その手口の総認知件数になります。

同じ手口の65歳以上男性は15.7%で、両者の合計98.8%が高齢者計にあたります。高齢被害者の中での女性比率に直すと84.1%ですが、これは編集部が一次資料の数値から算出した参考値です。

Q
ニセ警察詐欺の被害者は男女どちらが多いのですか。
A

ニセ警察詐欺単体の65歳以上・男女別の内訳は、今回の警察庁資料には記載がなく確認できません。独立項目としての性別データは公表されていない状態です。

参考として、ニセ警察詐欺はオレオレ詐欺の認知件数14,489件のうち10,859件(74.9%)を占めているため、オレオレ詐欺の性別データはニセ警察詐欺の影響を強く受けていると考えられます。

Q
高齢者の被害割合が下がったなら、実家の警戒は緩めてよいですか。
A

緩めるべきではありません。割合が51.3%へと前年比14.0ポイント下がった一方で、高齢者被害の認知件数は14,273件と前年比3.9%増えているためです。

割合の低下は、ニセ警察詐欺が20代・30代を含む幅広い年代に被害を広げ、分母となる総認知件数が急増したことによる相対的な変化です。

Q
令和7年のオレオレ詐欺の数字を、前の年と比べてもよいですか。
A

単純な比較はできません。令和7年からニセ警察詐欺が新設分類として個別集計を開始し、オレオレ詐欺の中身が実質的に入れ替わっているからです。

副業詐欺も令和7年からの新設項目です。認知件数や性別の傾向を前年と比べる際は、この分類再編を前提に読む必要があります。

出典・参考URL

  • https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値・令和8年5月22日公表)|警察庁

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