デニス・ホープとは?月の土地を売る男の販売詐欺

詐欺事件
デニス・ホープとは?月の土地を売る男の販売詐欺を3行で要約
  • 元中古車セールスマンのデニス・ホープは、1967年の宇宙条約が国家の領有を禁じているだけで個人には言及していないという主張を根拠に、1980年から月の土地の販売を開始した
  • ルナ・エンバシー社を通じて月面6億1100万エーカー以上を販売。トム・クルーズやジョージ・ルーカス、元米国大統領を含む600万人以上の顧客を獲得し、1200万ドル以上の収益を上げた
  • 法律の専門家は購入した土地証書に法的効力は一切ないと断言しているが、ドイツやスウェーデンの詐欺訴追も管轄権の問題で失敗。ビジネスは現在も継続中である

バーに座って、コートのポケットから証書の束を取り出すんだ。何の仕事をしているか聞かれたら、月を売っていると答える――。デニス・ホープはそう語りました。冗談のように聞こえますが、この元中古車セールスマンは実際に月の土地を40年以上にわたって売り続け、1200万ドル以上を稼いでいるのです。

この記事では、宇宙条約の抜け穴を主張して月の不動産ビジネスを築いた男の手口と、購入した土地証書に本当に価値があるのかを解説します。

デニス・ホープの経歴と月の土地ビジネスの始まり

デニス・ホープとは、サンフランシスコ出身のアメリカ人起業家であり、月や惑星の土地を販売するルナ・エンバシー社の創設者です。

1980年当時、ホープは失業中で離婚も経験し、経済的に追い詰められていました。そんな中、1970年代後半のドライブ中にふと思いついたのが月の土地を売るというアイデアでした。

ホープは1967年の国連宇宙条約を調べ、第2条に注目しました。この条文は、宇宙空間は国家による領有の対象とならないと規定しています。ホープはここに抜け穴を見出しました。条約が禁じているのは国家による所有であり、個人については何も言及していないというのです。

ホープはサンフランシスコの登記所で月と太陽系の8つの惑星(地球と太陽を除く)の所有権を申請し、何度かの試みの後に受理されました。さらに国連本部とソ連政府に所有権の主張を書面で通知しています。どちらからも回答はありませんでしたが、ホープはこれを異議がなかったことの証拠と解釈しました。

ルナ・エンバシーのビジネスモデル

ホープのビジネスモデルは極めてシンプルで、月の土地1エーカーを約35ドルで販売するというものです。

当初はバーで知人に証書を売る程度でしたが、1990年代半ばにインターネットが普及するとMoonShopというウェブサイトを開設。世界中の顧客にリーチできるようになり、ビジネスは急速に拡大しました。購入者には金箔入りの証書、月面の地図、そしてホープが制定した規約の写しが届きます。

2025年時点でルナ・エンバシーが販売した面積は、月面6億1100万エーカー以上、火星3億2500万エーカー、金星・水星・木星の衛星イオを合わせて1億2500万エーカーに達しています。顧客数は190ヶ国以上の600万人以上にのぼり、トム・クルーズ、トム・ハンクス、ジョージ・ルーカス、クリント・イーストウッドなどのハリウッドスターや、レーガン、カーター、ジョージ・W・ブッシュの元大統領の名前も挙げられています。ヒルトンやマリオットなどの企業も購入者に含まれるとされています。

ホープはさらに2004年に銀河政府なるものを設立。独自の憲法、議会、通貨(デルタ)、さらには特許庁まで備えた自称国家です。月面の鉱業権も販売しており、利益の10%を銀河政府の人道的プロジェクトに支払うという条件が付いています。

月の土地の証書は、いかなる政府や国際機関にも認められておらず、法的効力は一切ありません。購入者が月を訪問したり、土地を開発したり、使用する権利は付与されません。国際宇宙法学会の会長は、ルナ・エンバシーが行っていることは、購入者に月の所有権を与えるものではないと明確に述べています。

法的な問題と訴追の試み

ほぼ全ての法律専門家は、ホープの主張は国際法上無効であると断じています。

宇宙条約の第2条は、個人と国家を区別するものではなく、宇宙空間を人類共通の遺産として保護する趣旨だという解釈が通説です。ジョージ・ワシントン大学の宇宙政策アナリスト、ヘンリー・ハーツフェルドは、条約は執行力がなくホープの主張に法的な対抗が困難であると指摘しつつも、だからといって主張が正当化されるわけではないと述べています。

ドイツとスウェーデンはホープを詐欺で起訴しようとしましたが、いずれも管轄権と執行の問題で訴訟が取り下げられています。中国ではルナ・エンバシーの活動が禁止され、営利目的と狂気の罪で摘発されました。

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ホープのビジネスは詐欺なのか、それとも巧みなノベルティ商品の販売なのか。多くの購入者はジョークグッズとして楽しんでいる一方で、証書に法的効力があると信じている人もいます。1エーカー35ドルという価格設定は巧妙で、損害が小さすぎて訴訟のインセンティブが働かないのです。しかし本質は、自分が所有していないものを売っているという点で、詐欺の構造と変わりません。

まとめ

  • ホープは宇宙条約の個人への言及がないという抜け穴を主張し、月の土地を40年以上にわたり販売。600万人以上に売却し1200万ドル以上を稼いだ
  • 法律の専門家は土地証書に法的効力は一切ないと断言しているが、管轄権の問題で訴追は困難。ビジネスは現在も継続中である
  • 自分が所有していないものを売るという詐欺の本質的構造は、価格が安くても変わらない。月の土地証書はノベルティとしては楽しめるが、投資価値は一切ないことを理解すべきだ

よくある質問

Q
月の土地を買っても本当に所有権はないのですか?
A

はい、所有権はありません。1967年の宇宙条約は宇宙空間を人類共通の遺産と定めており、いかなる国家も個人も天体の所有権を主張することはできないと解釈されています。購入した証書は純粋にシンボリックなものであり、土地を訪問、使用、開発する権利は一切付与されません。

Q
将来月に人が住むようになったら価値が出ますか?
A

その可能性は極めて低いです。月面での活動を規制する枠組みとして、2025年時点で50ヶ国がアルテミス合意に署名しており、将来の月面利用はこうした国際的な枠組みに基づいて決定される見込みです。ルナ・エンバシーの証書がこれらの枠組みで認められる可能性はほぼありません。

Q
なぜホープは逮捕されないのですか?
A

主な理由は管轄権と損害額の問題です。ドイツとスウェーデンが詐欺で起訴しようとしましたが、いずれも管轄権の壁にぶつかって訴追が取り下げられています。また1件あたりの被害額が35ドル程度と非常に小さいため、法執行機関が優先的に対処するインセンティブが乏しいのが実情です。

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