レセプト不正請求とは?歯科・整骨院で横行する医療詐欺の実態

詐欺事件
レセプト不正請求とは?歯科・整骨院で横行する医療詐欺の実態を3行で要約
  • レセプト不正請求とは、実際には行っていない施術を保険に請求したり、施術内容を水増しして診療報酬を騙し取る詐欺行為だ
  • 会計検査院の調査では、整骨院のレセプト請求の過半数に慢性症状を急性症状と偽って保険請求する行為が確認されている
  • 発覚すれば詐欺罪で最大10年以下の懲役、保険医登録の取消し、不正請求額の返還に加え40%の加算金が科される

整骨院や歯科に通ったとき、月初めに白紙の用紙にサインを求められた経験はないでしょうか。あるいは、健康保険組合から届いた医療費通知に、記憶にない施術や通院回数が記載されていたことはないでしょうか。

それは、あなたが知らないうちにレセプト不正請求に巻き込まれている可能性を示しています。レセプトとは、医療機関が保険者(健康保険組合など)に提出する診療報酬の請求書のことです。ここに虚偽の内容を記載して保険金を騙し取る行為が、全国の歯科医院や整骨院で組織的に行われています。

この記事では、レセプト不正請求の具体的な手口と、患者として不正に巻き込まれないための対策を解説します。

レセプト不正請求の仕組み

レセプト不正請求とは、医療機関が虚偽の診療報酬請求書を保険者に提出し、本来受け取れない金額の診療報酬を詐取する行為です。刑法246条の詐欺罪に該当します。

保険診療の仕組みをまず理解しましょう。整骨院や歯科で保険適用の施術を受けると、患者は窓口で自己負担分(通常は3割)を支払います。残りの7割は、医療機関が保険者にレセプトを提出して請求する仕組みです。

不正請求は、このレセプトに嘘を書くことで成立します。実際には行っていない施術を記載したり、施術回数や部位を水増ししたり、保険適用外の症状を適用内の傷病名に偽ったりすることで、本来より多い金額を保険者から受け取るのです。

不正請求の5つの代表的パターン

レセプト不正請求には、架空請求、部位水増し、振替請求、受傷理由の改ざん、部位転がしという5つの代表的なパターンがあります。

パターン1:架空請求

患者が来院していない日に施術したことにして保険を請求するパターンです。たとえば月に5回しか通院していないのに、10回通院したことにしてレセプトを提出します。患者側は窓口で支払う金額が変わらないため、気づかないことが多いのが特徴です。

パターン2:部位水増し

実際に施術した部位に加えて、施術していない部位も治療したことにして請求するパターンです。腰の痛みで来院した患者に対して、肩と腕も同時に施術したことにする手口が典型例です。

パターン3:振替請求

実際に行った施術よりも保険点数の高い施術に振り替えて請求するパターンです。安い施術を行って高い施術の点数で請求することで、差額分を不正に得ます。

パターン4:受傷理由の改ざん

整骨院・接骨院で保険が適用されるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった急性かつ原因が明確なケガのみです。慢性的な肩こりや腰痛は保険の適用外ですが、これを急性の打撲や捻挫と偽って保険請求するケースが非常に多く報告されています。

会計検査院の調査によれば、接骨院・整骨院のレセプト請求の過半数において、慢性的な症状を急性の捻挫や打撲と偽って保険請求する行為が確認されたとされています。

パターン5:部位転がし

施術箇所を転々と変えながら、長期にわたって保険請求を続ける手口です。1箇所の施術期間に上限がある場合、期間が終わる前に請求部位を変更することで、事実上の無期限請求を実現します。

これらの手口は単独で行われる場合もありますが、複数のパターンが組み合わされて行われることも少なくありません。特に受傷理由の改ざんと部位水増しの組み合わせは、整骨院・接骨院で最も多い不正パターンとされています。

不正請求が発覚するきっかけ

レセプト不正請求は、保険者からの患者への照会、内部告発、レセプトの統計的分析の3つのルートで発覚することが多いです。

健康保険組合は定期的に被保険者に対して、医療費通知や施術照会の文書を送付しています。患者がこの文書を見て、記憶と異なる施術回数や内容に疑問を持ち、保険者に問い合わせたことが不正発覚のきっかけになるケースが多いのです。

内部告発も重要な発覚経路です。不正に加担させられることに不満を抱いた従業員や、退職した元スタッフが監督機関に情報提供するケースがあります。また、厚生労働省の各地方厚生局は、レセプトの統計的な分析を行い、1施術あたりの部位数が異常に多い施術所を抽出して個別指導や監査の対象としています。

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レセプト不正請求の厄介なところは、患者が知らないうちに加担させられている点です。月初めに白紙の用紙にサインするよう求められたら要注意。それは施術日数や部位を後から書き加えるための布石かもしれません。

発覚した場合の処分

不正請求が発覚した場合の処分は、刑事罰、行政処分、経済的制裁の3つが同時に課される可能性があります。

処分の種類 内容
刑事罰 詐欺罪(刑法246条):10年以下の懲役
行政処分 保険医登録の取消し、受領委任の取扱い中止
経済的制裁 不正請求額の返還+不正額の40%の加算金
社会的制裁 厚生局による施設名・不正内容の公表

不正請求額の返還に加えて40%の加算金が科されるため、仮に1000万円の不正請求が認定された場合、返還額は1400万円となります。さらに5年間にわたって保険診療ができなくなるため、事実上の廃業に追い込まれるケースがほとんどです。

患者として身を守る方法

患者が不正請求に巻き込まれないためには、領収書の確認と医療費通知のチェックが最も有効です。

施術を受けたら、必ず領収書を受け取り、施術日・施術部位・金額が正しいか確認してください。月初めに白紙の療養費支給申請書にサインを求められた場合は、内容を確認してからサインするか、施術のたびにサインする形式に変えてもらうよう依頼しましょう。

健康保険組合から届く医療費通知には、施術所名、通院日数、金額が記載されています。この内容が自分の記憶と異なる場合は、健康保険組合に問い合わせてください。単なる問い合わせであっても、不正請求の発覚につながる重要な一歩です。

また、慢性的な肩こりや腰痛で整骨院に通っている場合、保険でやっておきますねと言われたら注意が必要です。本来、慢性症状は保険の適用外であり、保険で処理するためには受傷理由の改ざんが行われている可能性があります。

まとめ

  • レセプト不正請求は架空請求、部位水増し、受傷理由の改ざんなど5つのパターンがあり、特に整骨院での慢性症状の偽装が過半数を占める
  • 発覚すれば詐欺罪(最大懲役10年)と保険医登録取消しの対象となり、不正額の140%を返還しなければならない
  • 患者は領収書の確認と医療費通知のチェックを徹底し、記憶と異なる記載があれば保険組合に問い合わせることが重要だ

よくある質問

Q
患者も不正請求で罰せられますか?
A

通常、患者が不正の事実を知らなかった場合は罰せられません。しかし、患者自身が架空の通院を依頼するなど、不正に積極的に加担していた場合は共犯として処罰される可能性があります。交通事故の施術で通院実績を水増しする保険金詐欺の事例では、患者と施術所が共に逮捕されたケースが報告されています。

Q
不正請求を見つけたらどこに通報すればいいですか?
A

まず加入している健康保険組合に連絡してください。組合が保険者として調査を行います。また、各都道府県の地方厚生局にも通報窓口があり、監査につながる可能性があります。不正に気づいた場合は、領収書や医療費通知など証拠を保管しておくことが重要です。

Q
整骨院で肩こりの施術に保険は使えないのですか?
A

使えません。整骨院・接骨院で保険が適用されるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった急性かつ原因が明確なケガに限られます。慢性的な肩こりや腰痛は保険適用外であり、自費での施術となります。保険でやっておきますねと言われた場合、受傷理由が改ざんされている可能性があるため注意してください。

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