- 米国最大のリハビリテーション病院チェーン「ヘルスサウス」が約27億ドル(約3,000億円)の売上を水増ししていた
- CEO リチャード・スクルーシーが粉飾を指示したとされたが、刑事裁判では無罪となり大きな議論を呼んだ
- その後の別の贈収賄裁判では有罪となり禁錮約7年の判決。民事訴訟でも巨額の賠償を命じられた
27億ドルの粉飾決算を行った会社のCEOが、刑事裁判で「無罪」になる。信じられますか?
ヘルスサウス(HealthSouth)は、米国最大のリハビリテーション病院チェーンです。2003年、SECの調査により、ウォール街のアナリスト予想を達成するため長年にわたり収益を水増ししていたことが発覚。幹部15人が有罪になったにもかかわらず、CEO スクルーシーだけは刑事裁判で無罪を勝ち取りました。
ヘルスサウスとは
ヘルスサウスとは、1984年にリチャード・スクルーシーがアラバマ州バーミンガムで設立したリハビリテーション医療サービス企業です。外来リハビリ施設や入院リハビリ病院を全米に展開し、約1,800の施設と約5万人の従業員を擁する医療サービスの巨人に成長しました。
粉飾の手口:アナリスト予想を達成するための数字合わせ
ヘルスサウスの粉飾は、ウォール街のアナリストの収益予想を達成することが至上命題になっていたことから始まりました。
四半期ごとに発表される収益がアナリスト予想を下回ると株価が下落します。スクルーシーはこれを避けるため、CFOや会計部門の幹部に対し、実際の収益とアナリスト予想のギャップを「埋める」ための架空の仕訳を入力するよう指示していたとされます。
この「ギャップを埋める(fill the gap)」作業は四半期末に毎回行われ、積み重なった水増し額は最終的に約27億ドルに達しました。
CEOの無罪:なぜスクルーシーだけ逃げられたのか
2003年の発覚後、ヘルスサウスの幹部15人が有罪判決を受けました。しかし、粉飾を主導したとされるCEOスクルーシーは、2005年の刑事裁判で36の訴因すべてについて無罪となりました。
無罪の主な理由は以下の通りです。
- 部下の証言の信頼性:検察側の証人は全員が自身の罪を認めた上で司法取引に応じた幹部であり、弁護側は「自分の刑を軽くするために上司に責任を転嫁している」と主張
- 直接証拠の欠如:スクルーシーが直接「数字を改ざんしろ」と指示した文書やメールなどの物的証拠が不足していた
- 地元アラバマでの裁判:スクルーシーはバーミンガムの著名な慈善家であり、地元での知名度と好感度が陪審員に影響を与えた可能性が指摘されている
ただし、スクルーシーは後にアラバマ州知事への贈賄事件で有罪となり、禁錮約7年の判決を受けています。また、SECの民事訴訟でも巨額の賠償金支払いを命じられました。

27億ドルの粉飾を指示した疑いがありながら無罪。検察にとっては「企業トップの犯罪を立証することの困難さ」を突きつけられた事件です。直接的な証拠がなければ、部下の証言だけでは有罪にできないという現実があります。
事件の全貌
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1996〜2002年約27億ドルの収益水増し四半期ごとにアナリスト予想との差を架空仕訳で「埋める」作業を繰り返す。累計約27億ドルの粉飾に。
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2003年3月SECが提訴・スクルーシー解任SECがヘルスサウスとスクルーシーを提訴。CFOが検察に協力を申し出、社内の不正が次々と明るみに。
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2005年スクルーシーに刑事無罪判決36の訴因すべてで無罪。幹部15人が有罪なのにCEOが無罪という結果に衝撃が走る。
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2006年贈収賄で再逮捕・有罪アラバマ州知事への贈賄事件で有罪。禁錮約7年。結局スクルーシーは別の罪で服役することに。
まとめ
- ヘルスサウスはアナリスト予想を達成するため約27億ドルの売上を水増ししていた
- CEOスクルーシーは幹部15人が有罪になる中で刑事裁判では無罪となり、「トップの責任立証の難しさ」を露呈させた
- ウォール街の短期的な株価至上主義が粉飾の動機を生む構造は、複数の企業不正に共通する根本原因だ
よくある質問
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Qヘルスサウスは今も存在していますか?
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A
ヘルスサウスは事件後も事業を継続し、2017年に社名を「Encompass Health」に変更しました。現在も米国最大のリハビリテーション病院チェーンとして運営されています。
【出典】参考URL
- SEC – HealthSouth提訴:SECの公式訴追記録
- HealthSouth – Wikipedia:事件の全体像、裁判の経緯


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