VISION預託商法事件とは?2万人被害1800億円の全貌

詐欺事件
VISION預託商法事件とは?2万人被害1800億円の全貌を3行で要約
  • VISIONはカード型USBメモリを約60万円で販売し海外にレンタルして月2万円の配当を支払うと謳ったが、実際の運用収益はほぼゼロだった
  • 売上の約99%は新規会員の購入代金であり、典型的な自転車操業。被害者は43都道府県で約2万人、被害総額は1800億円を超える
  • 消費者庁から計3回の行政処分を受け、広島・岡山・宮城県警が合同で家宅捜索。実質的幹部が特定商取引法違反および詐欺容疑で相次いで逮捕・起訴された

カード型USBメモリを購入して会社に預ければ、毎月2万円が36回入ってくる。投資額60万円に対して受取総額72万円、差額の12万円が確実に儲かる。こんな話を持ちかけられたら、あなたはどう判断しますか。

VISION(ビジョン)の預託商法事件は、この単純な仕組みで日本全国に被害を広げた事件です。しかし実際にはUSBメモリの運用事業はほとんど行われておらず、新規会員の購入代金が既存会員への配当に回される自転車操業でした。被害者は北海道から沖縄まで43都道府県にわたり約2万人、被害総額は1800億円を超えるとみられています。

この記事では、VISIONの預託商法の手口、消費者庁の3回にわたる行政処分、そして預託商法を見抜くための具体的なポイントを解説します。同種の詐欺に騙されないための知識を身につけてください。

VISIONの前身であるWILLについての詳細は、関連記事WILL事件とは?テレビ電話預託商法とVISIONへの変遷をご参照ください。

VISION預託商法の仕組み

VISIONの預託商法は、USBメモリの販売と預託を組み合わせた販売預託商法と呼ばれるスキームです。

具体的な流れは次の通りです。まず、VISIONがライセンスパックと呼ばれるカード型USBメモリを約60万円で顧客に販売します。このUSBにはIP電話、カラオケ、ゲームなど複数のアプリが入っているとされています。

次に、顧客は購入したUSBメモリをVISIONに預けます(預託)。VISIONはこのUSBメモリを海外の顧客にレンタルし、その収益から月額2万円のレンタル料を36回(3年間で計72万円)支払うと約束します。投資額60万円に対して受取額72万円で、差額の12万円が利益になるという計算です。

実態は自転車操業

しかし消費者庁の調査で、VISIONの前身であるWILLの総売上高の約99%はUSBメモリの販売収入であり、海外レンタル事業の収益はほぼ存在しなかったことが判明しています。

つまり、既存会員に支払われる月2万円のレンタル料は、USBメモリの運用収益ではなく、新しく入会した会員の購入代金から支払われていたのです。新規会員が増え続ける限り配当は維持できますが、入会ペースが落ちた瞬間に資金は枯渇します。

消費者庁によると、VISIONは2020年2月までの1年5か月間で少なくとも674億円を集金していました。北海道から沖縄まで全国にセミナー会場を設け、年間数百億円規模の集金を行う極めて大規模な組織的活動を展開していたのです。

セミナーでは実質的トップとされる大倉満が登壇し、ウィルフォン(テレビ電話機)の時代から海外レンタル事業が成功していると語っていました。しかし消費者庁の調査では、レンタル事業を行っていた事実は確認されていません。大倉は海外の利用者が月35ドルでUSBメモリを借りていると説明していましたが、その利用者の存在すら一切証明されていないのです。これはポンジスキームと本質的に同じ構造であり、破綻は時間の問題でした。実際にVISIONの前身であるWILLは2015年10月から2019年6月までの間、どの会計年度でもUSBメモリの販売収入が総売上高の約99%を占めており、運用事業による収益はほぼゼロであったと消費者庁が認定しています。

VISIONの前身であるWILLの関連法人は、消費者庁の調査によるとUSBメモリの運用事業を行っていた事実がないと認定されています。海外レンタル事業の実態がないにもかかわらず、セミナーでは海外の顧客がUSBメモリを月35ドルで借りているという説明が繰り返されていました。

3回の行政処分と刑事捜査

この事件の特徴は、消費者庁から3回もの行政処分を受けながら名前を変えて勧誘を続けた点にあります。

VISION(旧WILL)事件の時系列
  • 2018年12月
    第1回処分:WILLに15か月の取引停止
    テレビ電話のライセンス販売に関するマルチ商法(連鎖販売取引)で、重要事項を告げずに勧誘したとして消費者庁がWILLに取引停止命令(15か月)を発令。
  • 2019年7月
    第2回処分:WILLと関連7社に2年の業務停止
    USBメモリの勧誘時に虚偽の説明をしたとして、WILLおよびレセプション等の関連会社7法人に業務停止命令(2年)が発令された。しかしWILLは事業をVISIONに承継し、実質的に営業を継続した。
  • 2021年3月
    第3回処分:VISIONに2年の業務停止
    消費者庁がVISION(WILLの承継会社)に対して業務停止命令(24か月)を発令。実質的トップの大倉満と幹部の赤﨑達臣にも業務禁止命令が出された。消費者庁はVISIONが1年5か月間で少なくとも674億円を集金していたことを把握していた。
  • 2022年1月
    広島県警などが合同で家宅捜索
    広島、岡山、宮城各県警が特定商取引法違反容疑でVISION本社など複数の関係先を家宅捜索。自転車操業状態を隠して新規会員を募り、違法に集金した疑い。
  • 2022年〜2025年
    幹部の逮捕・起訴・判決
    実質的幹部が業務禁止命令違反および詐欺容疑で逮捕・起訴。広島地裁で有罪判決(執行猶予付き)。また別の幹部が約1億3700万円の詐欺容疑で逮捕された。2025年5月には熊本地裁が被害者11人に対して約1億4000万円の賠償を命じた。
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WILL→VISIONの手口で最も悪質な点は、行政処分を受けるたびに社名を変えて営業を再開したことです。WILL、VISION、レセプション、ピクセル&プレス、LINK、ホームセキュリティなど、実に10社を超える多数の法人名が使い分けられていたことが確認されています。消費者が過去の処分歴を検索しても、新しい社名ではヒットしない仕組みになっていたのです。

預託商法とは何か

預託商法とは、商品を販売した上で預けさせ、運用や第三者へのレンタルで利益が出ると約束して定期的に配当金を支払う商法です。

代表的な被害事例としては、安愚楽牧場(和牛への投資)、ジャパンライフ(磁気治療器のオーナー商法)、ケフィア事業振興会(干し柿のオーナー商法)などがあります。いずれも商品の実際の運用収益が配当を賄えず、新規出資者の資金で既存出資者への配当を回す自転車操業に陥って破綻しました。

これらの事件を受けて、2021年6月に改正預託法が成立しました。この改正により、販売預託商法は原則として禁止され、消費者庁の審査を経ずに無許可で営業した個人は5年以下の懲役か500万円以下の罰金が科されることになりました。VISION事件は、この法改正のきっかけの一つとなった事件です。

預託商法を見抜くための3つのポイント

預託商法に引っかからないための確認ポイントは以下の3つです。

第一に、商品の運用実態を具体的に確認することです。VISIONの場合、海外の誰がUSBメモリを借りているのか、レンタル料の総額はいくらなのかといった基本的な情報が一切開示されていませんでした。運用の具体的なデータを示せない業者は疑うべきです。

第二に、配当の原資が何かを確認することです。配当が新規会員の購入代金から支払われている場合、それは投資のリターンではなく、ポンジスキームの配当です。配当の原資について業者が明確に説明できない場合は、参加を見送るべきでしょう。VISIONの場合、配当の原資が新規会員の購入代金であったことは消費者庁の調査で明確に認定されています。

第三に、消費者庁や金融庁のウェブサイトで業者の処分歴を確認することです。VISIONのように社名を変えて処分を回避する業者もいるため、業者名だけでなく代表者の個人名でも検索することが重要です。

現代に通じる教訓

VISION事件の教訓は、元本を上回るリターンを保証する商品は原理的に存在しないという投資の基本原則に集約されます。

60万円を預けて72万円が返ってくる。利回りにすると3年間で20%、年率約6.7%です。銀行の定期預金の利率が0.1%にも満たず、国債の利回りも1%に届かない時代に、元本保証付きで年6.7%もの利回りが確実に得られるなら、銀行や機関投資家がこぞって買うはずです。個人にしか回ってこない時点で、その話がおかしいことに気づくべきでしょう。なぜプロの投資家や金融機関ではなく、一般の個人に対してだけこの好条件が提供されるのか。このごく単純かつ本質的な疑問を投げかけるだけで、多くの預託商法は矛盾が露呈します。

また、VISIONのように行政処分を受けても社名を変えて営業を続ける業者は今後も現れる可能性があります。投資の勧誘を受けた際は、業者名だけでなく代表者の名前でも検索し、過去のトラブルがないか確認する習慣をつけてください。

特に注意すべきは、知人や家族からの紹介による勧誘です。VISIONのようなマルチ商法型の預託商法では、既存の会員が紹介報酬を得るために身近な人を勧誘します。信頼する人からの紹介であっても、商品の運用実態と配当の原資を冷静に確認することが不可欠です。身近な人間関係を利用する勧誘こそ、最も断りにくく、被害額も大きくなりやすいのです。友人や親族から紹介された場合でも、必ず消費者庁のウェブサイトで業者の処分歴を確認し、判断に迷ったら消費者ホットライン(188)に電話してから回答するようにしてください。一度契約してしまうと解約が困難になるケースが多いため、契約前の段階での冷静な確認が最も効果的かつ確実な防御策です。

まとめ

  • VISIONはUSBメモリの預託商法で43都道府県・約2万人から1800億円超を集めたが、運用実態はなく自転車操業だった
  • 消費者庁から3回の行政処分を受けるたびに社名を変えて営業を再開。広島県警等の合同捜査で幹部が逮捕・起訴された
  • 元本保証付きの高利回り商品は原理的に存在しない。投資勧誘を受けたら、業者名と代表者名の両方で検索し、過去の処分歴を確認すること

よくある質問

Q
VISIONにお金を預けていますが、返金は可能ですか?
A

民事訴訟による返金請求は可能です。2025年5月には熊本地裁が被害者11人に対して約1億4000万円の賠償を命じる判決を出しています。ただしVISION側が口頭弁論に出廷していないケースもあり、判決が出ても実際に回収できるかは別問題です。消費者ホットライン(188)や弁護士に早期に相談することを強く推奨します。

Q
預託商法は現在も合法ですか?
A

2021年6月に成立した改正預託法により、販売預託商法は原則禁止となりました。消費者庁の審査を経ずに無許可で販売預託を行った個人は、5年以下の懲役か500万円以下の罰金が科されます。VISION事件や安愚楽牧場、ジャパンライフなどの大規模被害がこの法改正のきっかけとなりました。

Q
VISIONとWILLの関係は?
A

VISIONはWILLの事業承継会社です。WILLが消費者庁から2回の行政処分を受けた後、事業をVISIONに移管して実質的に営業を継続しました。消費者庁もこの実質的な同一性を明確に認識しており、VISIONへの処分を実質3回目の処分と位置づけています。レセプション、ピクセル&プレス、LINKなどの関連会社も確認されています。

【出典】参考URL

  • 消費者庁:VISIONおよびレセプションに対する行政処分の詳細
  • 日本経済新聞:VISION預託商法への業務停止命令、年間数百億円の集金
  • 中国新聞:広島県警の家宅捜索、1年5か月で674億円集金
  • 共同通信:熊本地裁の約1億4000万円賠償命令(2025年5月)

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