- コロンビア生まれの孤児ジニャックがサウジアラビアのハリド・ビン・アル・サウド王子を30年にわたり演じ続けた
- 偽の外交ナンバー、高級車、ブランド品を駆使して投資家から810万ドルを詐取。12歳から王族のなりすましを開始していた
- イスラム教徒のはずの王子がレストランで豚肉を注文したことが疑惑の発端となり、2019年に禁固18年超の判決を受けた
マイアミの高級リゾートに暮らすサウジアラビアの王子。外交ナンバーのついた高級車を乗り回し、サウジアラムコの株式を特別価格で提供すると投資家に持ちかけていました。しかしこの王子は、レストランで豚肉を注文するという致命的なミスを犯します。
アンソニー・ジニャック――本名ホセ・モレノ――は、コロンビア生まれの孤児でありながら、30年にわたりサウジアラビアの王子を演じ続けた詐欺師です。12歳の時にメルセデスのディーラーで試乗するために王子の息子を名乗ったのが最初のなりすましでした。
30年にわたるなりすましの歴史
ジニャックの王族なりすましは、12歳から始まり30年間にわたって続いた異例の長さです。
1970年にコロンビアでホセ・モレノとして生まれ、幼い頃に孤児となりました。6歳でアメリカのミシガン州の中産階級の家庭に養子として迎えられています。12歳の時にメルセデスのディーラーでサウジ王子の息子と名乗り試乗するという最初のなりすましを行いました。
1988年以降、サウジ王族を装った詐欺で11回逮捕されています。当初はアドナン・カショギ(実在のサウジの武器商人)を名乗り、後にハリド・ビン・アル・サウド王子のペルソナに落ち着きました。ある時は実在のアル・サウド王子の名義でアメリカン・エキスプレスに連絡し、カードを紛失したと主張して2億ドルの与信限度額のプラチナカードを発行させるという離れ業まで成功させています。
810万ドルの投資詐欺
ジニャックの最大の詐欺は、サウジアラムコの株式を特別価格で提供するという架空の投資話でした。
マイアミのフィッシャー島の高級マンションのペントハウスに住み(実際は賃貸)、偽の外交ナンバーをつけた高級車を乗り回し、サウジ王家の巨額の資産を背景とした投資機会を提供すると持ちかけました。サウジアラムコのIPO前に株式を割引価格で取得できるとして、投資家から810万ドルを集めています。
2017年、マイアミのフォンテンブロー・ホテルへの大規模投資を持ちかけた際、ホテルのオーナーであるビリオネアのジェフリー・ソファーがジニャックの正体を疑い始めました。きっかけは、イスラム教徒のはずの王子がレストランで豚肉を注文したことです。ソファーは民間調査会社に調査を依頼し、最終的にFBIへの通報につながりました。

ジニャックの事件は、どんなに精巧な偽装も、小さなディテールの矛盾から崩壊するという教訓を示しています。レストランでの豚肉という些細な行動が、810万ドルの詐欺を崩壊させました。なりすましは完璧に見えても、本来の自分を完全に消すことはできないのです。
2017年に逮捕された際、45万ドル相当のジュエリー、8万ドルの現金、ボクシングの伝説モハメド・アリのサイン入り写真などが押収されています。2019年3月、詐欺、身分窃盗、外国外交官のなりすましの罪で禁固18年超の判決を受けました。
まとめ
- ジニャックは12歳から30年間サウジ王子を演じ続け、偽の外交ナンバーやアメックスのプラチナカードまで入手した
- サウジアラムコ株を餌に810万ドルを投資家から詐取。しかしイスラム教徒の王子が豚肉を注文するという矛盾で崩壊した
- どんな精巧な偽装も小さなディテールの矛盾から崩壊する。投資相手の言動に矛盾がないか、常に注意を払うべきだ
よくある質問
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Q外交ナンバーはどうやって入手しましたか?
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A
ジニャックのビジネスパートナーがeBayで偽の外交ナンバープレートを購入していたことが判明しています。フィッシャー島の高級マンションも、全54室のコンドミニアムを所有していると主張していましたが、実際にはペントハウスを賃貸しているだけでした。
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Qなぜ11回も逮捕されて同じ詐欺を続けられたのですか?
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A
ジニャックが受けた刑罰が比較的軽く、出所のたびに同じ手口に戻ったためです。また名前や場所を変えて活動していたため、過去の逮捕歴と結びつけることが困難だったケースもあります。2017年の逮捕時にFBIが彼の手口をすぐに認識できたのは、長年の犯罪歴の蓄積によるものです。
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Qこの事件は映像化されていますか?
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A
CNBCの番組 American Greed で The Fake Prince’s Royal Scam として放送されたほか、ドキュメンタリーシリーズ Generation Hustle やポッドキャスト Scamfluencers、Swindled でも取り上げられています。
【出典】参考URL
- Wikipedia (English): Anthony Gignac:経歴全体、詐欺の手口、逮捕・判決
- CNBC:How fake Saudi Prince Anthony Gignac conned investors


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