アダム・ニューマンとは?WeWork470億ドル崩壊の全貌

詐欺事件
アダム・ニューマンとは?WeWork470億ドル崩壊の全貌を3行で要約
  • イスラエル出身のアダム・ニューマンはコワーキングスペースWeWorkを創業し、テック企業を装った不動産賃貸業をソフトバンクなどの投資家に売り込み、評価額を470億ドルまで膨らませた
  • 自社が賃借するビルを自ら所有して賃料を得る、Weの商標権を590万ドルで会社に売却するなど露骨な利益相反行為が発覚。2019年のIPO申請で財務状況が明らかになり、上場は撤回された
  • ニューマンは退任時に株式2億4500万ドル、現金2億ドルなどの退職パッケージを受け取った。WeWorkは2023年に破産申請し、1万2000人以上が職を失った

彼らはミレニアル世代の資本主義の救世主を信じたかったのだ。そして救世主は監査されない――。WeWorkの後期ラウンドに参加したある投資家はそう振り返りました。コワーキングスペースの賃貸業を世界を変えるテクノロジー企業として売り込み、投資家を熱狂させ、そして会社が崩壊した後も億万長者であり続けた男。それがアダム・ニューマンです。

この記事では、ビジョナリーな創業者という神話がいかにして投資家の判断を曇らせ、数百億ドルの価値を消失させたかを解説します。

WeWorkのビジネスモデルと過大評価

WeWorkのビジネスモデルの本質は、長期でオフィスを賃借し、短期でサブリースする不動産業でした。

ニューマンはこのビジネスをテクノロジー企業として投資家にプレゼンしました。コミュニティを作り上げるプラットフォームであり、単なるオフィス賃貸ではないと主張したのです。テック企業というラベルは重要でした。テック企業であれば不動産業よりもはるかに高い評価倍率が正当化されるからです。

2016年の時点で、WeWorkは4億4600万ドルの収益に対して4億2900万ドルの損失(収益の90%以上を失う状態)を出していました。しかし投資家はニューマンのカリスマ性に魅了され、損失を無視してさらに資金を注入。ソフトバンクを筆頭とするベンチャーキャピタルは評価額を2019年に470億ドルまで押し上げました。

ニューマンの利益相反行為

ニューマンが行った自己取引(セルフ・ディーリング)は多岐にわたります。

まず自分が所有する不動産をWeWorkに賃貸し、会社から賃料収入を得ていました。さらに会社が買収する可能性のある物件を6件以上個人で所有していたことがIPO申請書類で明らかになっています。

次に、Weという商標権を590万ドルでWeWorkに売却しました。この商標は実質的にニューマン個人が取得したものであり、自分の会社に自分の商標を売るという露骨な自己取引でした(後にこの支払いは株式で返還されています)。

また1株あたり20票の議決権を持つ特殊株式を保有しており、取締役会を事実上支配していました。会社のプライベートジェットを私的に使用し、社内では大学のフラタニティパーティのような雰囲気でアルコールが振る舞われていたとも報じられています。

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ニューマンの事件で最も衝撃的なのは、刑事訴追されていないという点です。セラノスのエリザベス・ホームズやFTXのサム・バンクマン=フリードは詐欺で有罪判決を受けましたが、ニューマンは法的には罪に問われていません。WeWorkの評価額が470億ドルから5900万ドルに崩壊し、1万2000人以上が職を失ったにもかかわらず、ニューマン個人は22億ドルの資産を持つ億万長者であり続けています。合法と不正の境界線がいかに曖昧かを示す事例です。

IPO失敗、破産、そしてニューマンの再起

2019年8月、WeWorkがSECにIPO申請書類を提出したことで、財務状況と利益相反行為が初めて一般に公開されました。

投資家は膨大な損失と自己取引の数々に衝撃を受け、IPOは数週間で撤回されました。ニューマンはCEOを辞任しましたが、ソフトバンクからの救済パッケージとして株式2億4500万ドル、現金2億ドル、4億ドル以上の債務リファイナンスを受け取っています。

WeWorkはその後SPACを通じて2021年に上場しましたが、株価は下落を続けました。2023年8月にはゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)への疑義が表明され、同年11月に破産申請を行っています。評価額は470億ドルから5900万ドルに崩壊しました。1万2000人以上の従業員が職を失い、低い給与の代わりに受け取っていたストックオプションは無価値となりました。

一方のニューマンは2022年にアンドリーセン・ホロウィッツから3億5000万ドルの出資を受け、新しい不動産ベンチャーFlowを設立しています。Forbesによれば2023年時点のニューマンの純資産は約22億ドルです。

まとめ

  • ニューマンは不動産賃貸業をテック企業として売り込み、評価額を470億ドルまで膨張させた。しかしIPO申請で財務の実態が露呈し、上場は撤回された
  • WeWorkは2023年に破産。1万2000人以上が職を失ったが、ニューマン個人は数十億ドルの退職パッケージを受け取り億万長者であり続けている
  • カリスマ的創業者のビジョンだけで投資判断をしてはならない。財務諸表の検証とガバナンス構造の確認が不可欠だ

よくある質問

Q
ニューマンは逮捕されたのですか?
A

いいえ、ニューマンは刑事訴追されていません。WeWorkの崩壊は数百億ドルの価値を消失させましたが、法的には詐欺として立件されていないのです。ニューマンの行為は利益相反やガバナンスの不備であっても、詐欺罪の立証には至らなかったとされています。これがセラノスのホームズやFTXのバンクマン=フリードとの最大の違いです。

Q
なぜ投資家は明らかに赤字の企業に投資し続けたのですか?
A

テック企業への投資では、成長性を重視して赤字を許容するのが当時の常識でした。AmazonやUberも長年赤字でした。しかしWeWorkの場合、ビジネスモデル自体がテック企業ではなく不動産業であり、規模が拡大するほど損失も拡大する構造でした。ニューマンのカリスマ性がこの本質的な問題を覆い隠してしまったのです。

Q
WeWork事件を題材にした作品はありますか?
A

Apple TV+のドラマシリーズWeCrashed(2022年)が代表的です。ジャレッド・レトがアダム・ニューマン、アン・ハサウェイがその妻レベッカを演じています。またHuluのドキュメンタリーWeWork: Or the Making and Breaking of a $47 Billion Unicorn(2021年)も事件の全容を詳細に記録しています。

【出典】参考URL

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