クヒオ大佐とは?偽米軍人の結婚詐欺の全貌

詐欺事件
クヒオ大佐とは?偽米軍人の結婚詐欺の全貌を3行で要約
  • 自称ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐は、カメハメハ大王の末裔で米空軍大佐、エリザベス女王の親戚と名乗り、日本人女性に結婚を持ちかけた結婚詐欺師である
  • その正体は北海道網走市出身の純日本人・鈴木和宏。髪を金髪に染め、整形手術で鼻を高くし、カタコトの日本語で外国人を装った。被害総額は約1億円に上る
  • 1970年代から1990年代まで詐欺を繰り返し逮捕歴10回以上。2009年に堺雅人主演で映画化され、2020年代に入っても80代で現役という報道がある

自分はプリンス・ジョナ・クヒオといい、米空軍大佐だ。英国のエリザベス女王は双子で、その妹の方が私の母だ――。この荒唐無稽な自己紹介を信じる人がいるのかと思うかもしれません。しかし実際には、この嘘で約1億円を騙し取った男がいます。しかも彼は、身長160センチの純日本人でした。

この記事では、1970年代から半世紀にわたり偽の米軍人として結婚詐欺を繰り返してきた伝説の詐欺師の手口と、なぜ女性たちが騙されたのかを解説します。

クヒオ大佐の正体

クヒオ大佐の正体は、第二次世界大戦中に北海道網走市で生まれた日本人・鈴木和宏です。

中学校卒業後に地元の職業訓練学校に入学し、卒業後に上京。元自衛官でもあります。顔立ちが外国人に似ていたことに加え、整形手術で鼻を高くし、髪を金髪に脱色。ハワイで150ドルで購入した軍服のレプリカを身にまとい、カタコトの外国人風の日本語で偽の米軍人を演じ始めました。

クヒオという名前は、旧ハワイ王国の王子の名前に由来しています。自らをカメハメハ大王の末裔と称し、さらにエリザベス女王の親類でもあるという設定を作り上げました。英語はほとんど話せませんでしたが、外国人風のイントネーションの日本語に英単語を交えることでそれらしく見せていたのです。

結婚詐欺の手口

クヒオ大佐の手口は、米軍の特殊部隊パイロットという肩書きと結婚話を組み合わせて女性から金を騙し取るというものでした。

ターゲットは主に中年の独身女性や未亡人です。友人からの紹介やイベントで知り合い、米空軍大佐としての華やかな経歴と、カメハメハ大王やエリザベス女王の血筋という架空の家柄を披露します。そして結婚を前提とした交際を持ちかけ、結婚費用や軍の活動に関連する名目で金銭を要求しました。

さらに巧妙だったのは、電話での演出です。ある被害者には、今イスラエル上空の戦闘機内にいる、横田基地を中継して電話していると連絡し、傍に置いた録音機から爆音を流すという手の込んだ芝居を見せています。

金を騙し取った後は、また最前線に赴かなくてはいけなくなった、もし私が戦死してもキミには軍から莫大な功労金が支給されると言い残して姿を消します。被害者がここでようやく詐欺だったと気づくのです。

1984年の最初の大規模な逮捕では、自宅からワルサー22口径の拳銃1丁と実弾23発も押収されています。取り調べた警察官でさえ本物のアメリカ人と見間違えるほどだったと報じられました。

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クヒオ大佐の事件で最も重要な教訓は、荒唐無稽な設定であっても、相手を一度信じてしまうと、そこから抜け出せなくなるという人間心理です。エリザベス女王は双子だとか、カメハメハ大王の末裔だとか、冷静に考えれば明らかに嘘ですが、好意を持った相手の話は疑いにくいのです。これは現代のSNSロマンス詐欺にも全く同じ構造で当てはまります。

繰り返される逮捕と現在

クヒオ大佐の最も異常な点は、逮捕されても刑期を終えるとすぐに同じ手口を繰り返すことです。

1970年代から詐欺を開始し、1984年の逮捕時にはすでに同様の手口で7回検挙されていました。その後も逮捕と出所を繰り返し、逮捕歴は10回以上。被害総額は約1億円に達したとされています。

1999年にも再び逮捕されましたが、その後も活動を続けていることが報じられています。2016年にはTBSのテレビ番組がクヒオ大佐と思われる人物が都内に出没していると報道し、芸人に対して米大使館での運転手の仕事を持ちかけた事例も確認されています。

さらに2022年頃には、婚活アプリを通じて長野県在住の60代女性に接触したとする報道がありました。80代にして名前をアーサー・ウィンストン・ジュニアに変え、秘書役の人物を同伴させ、エリザベス女王からお祝い金1億円が届く、天皇陛下に結婚のご挨拶に行くなどと語っていたとされています。女性の友人がインターネットでクヒオ大佐の記事を見つけて気づかせたことで被害は未遂に終わりました。

2009年には堺雅人主演で映画クヒオ大佐が公開されています。共演に松雪泰子、満島ひかり、安藤サクラという豪華な顔ぶれで、実在の詐欺師のコミカルかつ哀愁漂う姿が描かれました。

まとめ

  • クヒオ大佐の正体は北海道出身の純日本人。整形と金髪と軍服で外国人を装い、カメハメハ大王の末裔を名乗って結婚詐欺を繰り返した
  • 逮捕歴10回以上、被害総額約1億円。80代でもなお現役という報道があり、半世紀にわたり同じ手口を続けている
  • 荒唐無稽な設定でも好意を持った相手の話は疑えないという心理は現代のロマンス詐欺にも共通する。交際相手の経歴は必ず第三者の目で確認すべきだ

よくある質問

Q
なぜ被害者は明らかに嘘だと分かる設定を信じたのですか?
A

心理学的には、いったん相手を信じてしまうと一貫性の原則が働き、矛盾する情報を無視しやすくなります。また孤独な女性にとって、外国の王族や軍の高官と結婚できるという夢のような話は、信じたいという気持ちが疑いを上回ってしまいます。クヒオ大佐本人は実際に結婚した妻までもが逮捕まで彼を本物の米軍人だと信じ込んでいたと報じられており、演技の説得力は想像以上だったようです。

Q
映画クヒオ大佐はどのような作品ですか?
A

2009年に公開された堺雅人主演の日本映画です。吉田和正の小説を原作とし、吉田大八が監督しました。堺雅人が特殊メイクで鼻を高くして偽米軍人を演じ、松雪泰子、満島ひかり、中村優子が騙される3人の女性を演じています。コメディとドラマの中間のトーンで、詐欺師の滑稽さと哀しさを同時に描いた作品です。

Q
現代でも同じ手口の詐欺はありますか?
A

クヒオ大佐の手口は、現在のSNS型国際ロマンス詐欺の原型です。SNSやマッチングアプリで米軍関係者を装い、戦地にいるため直接会えないと偽り、軍を抜けるための費用や医療費の名目で金銭を要求する手口が急増しています。2023年には福岡県の50代女性が偽の米軍関係者に数百万円を騙し取られる事件が報じられています。外国の軍人や富裕層を名乗るSNS上の相手には特に警戒が必要です。

【出典】参考URL

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