- 本名シモン・ハユット。イスラエルのダイヤモンド王の息子を装い、マッチングアプリTinderで出会った女性から2017〜2019年だけで推定1000万ドルを詐取した
- プライベートジェットや五つ星ホテルで信頼を築いた後、敵に追われていると偽り、女性たちに借金をさせて金を送らせる手口だった
- 2019年に逮捕されたがわずか5ヶ月で釈放。ロマンス詐欺としては起訴されておらず、被害女性たちは今も借金を返済中だ
マッチングアプリで出会った相手がプライベートジェットで迎えに来てくれたら、あなたはどう感じるでしょうか。ロールスロイスに乗り、五つ星ホテルでディナーを共にし、深紅のバラの花束を贈られたら――普通の人なら、この相手は本物のお金持ちだと信じてしまうはずです。
サイモン・レヴィエフはまさにその演出で女性たちを騙しました。イスラエルの著名なダイヤモンド商の御曹司を装い、Tinderで出会った女性から推定1000万ドル(約14億円)を詐取した人物です。その手口はNetflixのドキュメンタリーTinder詐欺師:恋愛は大金を生むで世界中に知られることになりました。
この記事では、レヴィエフの手口の全貌と、なぜ被害者たちが騙されたのか、そしてマッチングアプリ時代のロマンス詐欺から身を守る方法を解説します。
サイモン・レヴィエフの正体
サイモン・レヴィエフとは偽名であり、本名はシモン・イェフダ・ハユット。1990年にイスラエルのブネイ・ブラクで生まれた人物です。
10代の頃からクレジットカード詐欺を繰り返しており、2011年にはイスラエルでの窃盗や詐欺、文書偽造の罪で起訴されています。15歳でニューヨークのブルックリンに移住した後、レヴ・アヴネロヴィッチ・レヴィエフというイスラエルの実在するダイヤモンド商の名前を拝借し、その息子であると名乗り始めました。
サイモン・レヴィエフの他にも、Mordechai Nisim Tapiro、Michael Bilton、Avraham Levy、David Sharonなど多数の偽名を使い分けていたことが判明しています。
詐欺の手口:3段階の罠
レヴィエフの手口は、豪華な演出で信頼を築き、危機を演出し、借金をさせるという3段階で構成されていました。
第1段階:豪華な演出で信頼を構築
Tinderでマッチした女性に対して、プライベートジェットでの送迎、五つ星ホテルでのディナー、深紅のバラの花束といった圧倒的な豪華さで信頼を構築しました。SNSにはロールスロイスや高級オフィスでのミーティング、派手なパーティーの写真が投稿されており、プロフィールに虚偽がないことを裏付けるかのような演出が施されていたのです。
第2段階:危機の演出
信頼関係が構築されると、レヴィエフはダイヤモンドビジネスの敵に追われていると偽り始めます。専属運転手が殴られて血だらけになっている写真を送り、トラブルでクレジットカードが一時的に使えなくなったと訴えます。安全のために名前の追跡ができないクレジットカードが必要だと主張するのです。
第3段階:借金をさせて搾取
女性たちに自分の名義でクレジットカードを作らせたり、個人ローンを組ませたりして金を送らせます。すぐに返すからと約束しますが、もちろん返済されることはありません。被害女性の1人セシリー・フィエルホイさんは、約25万ドル(約3500万円)もの借金を背負わされました。

レヴィエフの事件で最も理不尽なのは、被害女性たちが今も借金を返済し続けている一方で、レヴィエフ本人はロマンス詐欺としては起訴すらされていないことです。犯罪が複数の国にまたがっていたため、どの国の司法が管轄するかが定まらず、結果として法の隙間に落ちてしまいました。
逮捕とその後
レヴィエフは2019年7月にギリシャで偽造パスポートの使用により逮捕されましたが、Tinderでのロマンス詐欺については一切起訴されていません。
イスラエルに送還された後、国内での窃盗、詐欺、文書偽造の罪で禁固15ヶ月の判決を受けましたが、これはTinderでの詐欺とは無関係の罪でした。さらにコロナウイルス感染症の流行を理由に、わずか5ヶ月で釈放されています。
釈放後のレヴィエフはイスラエルで高級車を乗り回し、以前にも増して贅沢な生活をSNSで発信し続けています。ビジネスアドバイスのオンラインサロンを立ち上げるなど、新たなビジネスにも着手している状況です。
現代に通じる教訓
レヴィエフの事件は、マッチングアプリ時代のロマンス詐欺がいかに巧妙化しているかを示す象徴的な事例です。
ロマンス詐欺は恋愛感情を利用して金銭を搾取する犯罪であり、日本でも被害が急増しています。レヴィエフの手口から学べる防御策は3つあります。第一に、出会ったばかりの相手にどれだけ豪華な生活を見せられても、金銭の貸し借りには絶対に応じないこと。第二に、相手がどんな理由をつけても、自分名義でローンを組ませようとする行為は詐欺の典型的サインだと認識すること。第三に、追われている、トラブルに巻き込まれたといった緊急性を演出する話は、冷静な判断力を奪うための手口だと理解することです。
まとめ
- レヴィエフはダイヤモンド王の息子を装い、豪華な演出→危機の演出→借金の強要という3段階でTinderの女性から推定1000万ドルを詐取した
- 犯罪が複数国にまたがるためロマンス詐欺として起訴されず、被害女性は今も借金を返済中。法の隙間を突いた構造的問題がある
- 出会ったばかりの相手に金銭を貸したり自分名義のローンを組んではならない。どんな理由があっても、これは詐欺の最も明確なサインだ
よくある質問
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Qレヴィエフはなぜロマンス詐欺で裁かれなかったのですか?
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A
犯罪がイスラエル、ヨーロッパ各国にまたがっていたため、どの国が管轄権を持つかが定まらなかったことが最大の理由です。また、レヴィエフが女性たちに直接暴力を振るったり脅迫したわけではなく、恋愛関係の中での金銭のやり取りという形式を取っていたため、立証が困難でした。
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Q日本でも同様のロマンス詐欺は発生していますか?
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A
急増しています。警察庁の統計によれば、SNS型ロマンス詐欺の被害は年々増加しており、マッチングアプリだけでなくInstagramやLINEを入口とする手口も一般的です。日本国内のケースでは、米軍関係者や海外の投資家を装い、輸送費や投資資金の名目で送金させるパターンが多く報告されています。
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Qロマンス詐欺に遭わないためにはどうすればいいですか?
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A
最も確実な防御策は、実際に会ったことがない相手、あるいは出会って間もない相手に金銭を渡さないことです。相手がどんな理由をつけても、送金やローンの依頼には応じないでください。また、プロフィール写真をGoogle画像検索にかけると、別人の写真を流用しているケースを発見できることがあります。


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