ニック・リーソンとは?名門ベアリングス銀行を破綻させた男

詐欺事件
ニック・リーソンとは?名門ベアリングス銀行を破綻させた男を3行で要約
  • 233年の歴史を持つ英国最古の商業銀行ベアリングスを、たった一人のトレーダーが破綻に追い込んだ事件だ
  • 損失を架空口座88888に隠し続け、取り返そうと賭けに出るたびに損失が膨張。最終的な損失額は約8.6億ポンド(約1380億円)に達した
  • 1995年の阪神・淡路大震災による日経平均の暴落が致命傷となり、ローグトレーダーという言葉の語源にもなった

女王陛下の銀行と呼ばれた英国最古の商業銀行。1762年の創業以来233年間、ルイジアナ購入の融資からエリザベス女王の資産管理まで、英国金融史と共に歩んできた名門中の名門でした。その名門が、シンガポール支店のたった一人のトレーダーによって消滅したのです。

ニック・リーソンは、不正取引で名門ベアリングス銀行を破綻させたトレーダーとして知られています。彼の手記はローグトレーダー(ならず者トレーダー)というタイトルで出版され、この言葉自体が不正トレーダーを指す一般名詞となりました。

リーソンの経歴と出世

ニック・リーソンとは、左官職人の息子から銀行の利益の1割を稼ぐスター・トレーダーに上り詰めた人物です。

1967年2月25日、英国ワトフォードで左官職人の長男として生まれました。1985年に18歳で学校を中退し銀行業界に入り、クーツ・アンド・カンパニーの事務員を経て、1987年にモルガン・スタンレーで先物オプション取引の決済事務に従事。1989年にベアリングス銀行に入行しています。

インドネシアのジャカルタ支店での債権処理を成功させたことで出世コースに乗り、シンガポール国際金融取引所(SIMEX)における先物取引部門の責任者に抜擢されました。赴任1年で日経平均と日本国債のデリバティブ取引を中心に1000万ポンド以上、ベアリングス銀行の利益の1割を稼ぎ出すまでになっています。

架空口座88888と損失の隠蔽

リーソンの不正の核心は、エラー口座88888を利用した損失の組織的な隠蔽でした。

SIMEXでは場立ちによる取引で売買の間違いが日常的に発生するため、エラー処理用の口座開設は通常の手続きでした。リーソンはこの口座を悪用し、損失を隠蔽しながら表面上の利益を水増しして報告したのです。買い注文は指値より安く買えたとし、売り注文は指値より高く売れたと約定を返し、差額はエラー口座に損失として放り込みました。

さらに問題だったのは、リーソンが取引の執行と清算業務の両方を担当していたことです。通常は分離されるべきこの2つの役割を一人が兼務したため、不正を監視する仕組みが機能しませんでした。いわばプレイヤーが審判を兼ねる状態だったのです。

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賠償罪子

リーソンの事件で最も重要な教訓は、職務分掌の欠如が致命的な結果を招くということです。取引の執行者と監視者が同一人物であれば、どんなに優秀な管理システムも意味がありません。企業の内部統制においても、チェック機能を担う人員は、チェック対象の業務から完全に独立していなければなりません。

阪神大震災と崩壊

1995年1月17日の阪神・淡路大震災が、リーソンの賭けに致命傷を与えました。

日経平均の下落を受けてリーソンは一日で5000万ポンドの損失を出しました。相場は持ち直すと楽観的に判断し、損失を一気に取り返そうとさらに大きなポジションを取りましたが、予想に反して相場は下げ止まりませんでした。架空口座88888の損失は加速度的に膨れ上がり、最終的には約8.6億ポンド(約1380億円)に達しています。これはベアリングス銀行の自己資本金750億円を遥かに超える額でした。

1995年2月24日(28歳の誕生日の前日)、リーソンは辞表を提出してシンガポールからボルネオに逃亡。週明け2月27日、イングランド銀行はベアリングス銀行の再建断念を発表しました。233年の歴史を持つ名門銀行が、オランダのINGグループにわずか1ポンドで買収されるという結末を迎えたのです。

リーソンは逃亡先のドイツのフランクフルト空港で逮捕され、シンガポールに引き渡されて懲役6年半の判決を受けました。服役中に結腸がんと診断され、最初の結婚も破綻しています。出所後は自伝を出版し、現在はアイルランドに住んでいます。

まとめ

  • リーソンは架空口座88888に損失を隠し、取引と監視の兼務という職務分掌の欠如が不正を可能にした
  • 阪神大震災による日経平均暴落が致命傷となり、損失は自己資本を超える約1380億円に膨張。233年の名門銀行が1ポンドで売却された
  • 内部統制における職務分掌の徹底が、不正トレーダーの暴走を防ぐ最も基本的な防御策だ

よくある質問

Q
リーソンの事件は映画化されていますか?
A

1999年にユアン・マクレガー主演でマネー・トレーダー 銀行崩壊(原題:Rogue Trader)として映画化されています。リーソン本人の手記私がベアリングス銀行をつぶしたが原作です。日本でも新潮社から翻訳出版されています。

Q
なぜ本社は損失に気づかなかったのですか?
A

複数の要因が重なっています。リーソンが取引と清算の両方を担当していたため、不正を内部的にチェックする仕組みがありませんでした。また、リーソンが銀行全体の利益の1割を稼いでいたため、本社は彼の取引に疑問を持たず、むしろ信頼していました。監査が入る際には損失を一時的に別の口座に避難させるという手口も使っていました。

Q
リーソンの現在はどうなっていますか?
A

出所後は自伝の出版や講演活動を行い、現在はアイルランドに住んでいます。2008年にソシエテ・ジェネラルのケルヴィエル事件が発覚した際にはBBCのインタビューに応じ、事件自体は珍しくないが損失の規模には衝撃を受けたとコメントしています。

【出典】参考URL

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