- NYの高級ビーガンレストランPure Food and Wineのオーナー、サルマ・メルンガイリスが、詐欺師の夫に騙され店の資金を流出させた
- 夫アンソニー・ストランジスは愛犬を不老不死にできると主張し、2年間で約170万ドルを送金させた。従業員の給料は未払いとなり、店は崩壊した
- 2016年にテネシー州で逮捕。窃盗・詐欺・脱税の罪で有罪となり、約4ヶ月の禁固刑を受けた。Netflixのドキュメンタリーで世界的な話題となっている
セレブ御用達のビーガンレストランのオーナーが、愛犬を不死身にできるという荒唐無稽な話を信じて店を潰した――。にわかには信じがたいこの物語は、2022年にNetflixのドキュメンタリーシリーズBad Veganとして配信され、世界中で話題になりました。
この記事では、ビジネススクール卒の才女がなぜ詐欺師のパートナーに支配され、200万ドル以上を失うことになったのか、その経緯と操作の手口を解説します。
メルンガイリスの経歴とPure Food and Wineの成功
サルマ・メルンガイリスとは、1972年にアメリカで生まれたシェフ・料理書著者であり、NYのビーガン・ローフードレストランPure Food and Wineの共同創業者です。
マサチューセッツ州ニュートンで育ったメルンガイリスは、ビジネススクールの学位を持つ知性派でした。2004年、当時の恋人であるシェフのマシュー・ケニーとともに、マンハッタンのグラマシーパーク地区にPure Food and Wineをオープンしています。
Pure Food and Wineは、ズッキーニのラザニアやレタスラップなど、ローフードのビーガン料理を高級レストランのレベルに引き上げた先駆的な存在でした。ニューヨーク・マガジンのトップ100レストランに選出され、フォーブス誌のオールスター・ニューヨーク・イータリーズにも5年連続でランクイン。クリントン一家、トム・ブレイディとジゼル、オーウェン・ウィルソン、アレック・ボールドウィン、アン・ハサウェイなど、セレブの常連客が集うNYの人気店となりました。
2009年にケニーとの関係が悪化した後、メルンガイリスは投資家ジェフリー・ショドロウから210万ドルの融資を受けて事業を買い取り、単独オーナーとなっています。
詐欺師アンソニー・ストランジスとの出会い
事件の始まりは、2011年にメルンガイリスがアレック・ボールドウィンのTwitterのリプライ欄でアンソニー・ストランジスという男性を見つけたことでした。
ストランジスはジャンクフード好きのギャンブラーで、犯罪歴のある人物です。しかし彼は巧みにメルンガイリスの心に入り込み、やがて彼女の人生を完全に支配するようになりました。
ストランジスがメルンガイリスに信じ込ませた約束は、常軌を逸したものでした。彼女の借金を全て返済する、ビジネスを立て直す、そして最も奇妙なのは――愛犬のレオンを不老不死にすることができるというものでした。ストランジスは自分に特別な力があると主張し、メルンガイリスがその指示に従い続ける限り、全てが実現すると約束したのです。
Netflixのドキュメンタリーによれば、2年間にわたりメルンガイリスはストランジスに約170万ドルを送金しています。その資金源は、レストランの売上、投資家からの資金、そして従業員の給料に充てるべき金でした。

愛犬を不死身にできるという話を信じるなんてありえないと思うかもしれません。しかしこの事件は、支配的なパートナーによる心理的操作(コーアシブ・コントロール)の典型例として注目されています。知的な人であっても、段階的に判断力を奪われていく過程は、カルトの手口と本質的に同じです。
レストランの崩壊と逮捕
メルンガイリスが店の資金をストランジスに流し続けた結果、従業員への給料が1ヶ月分以上未払いとなり、スタッフが一斉にストライキを起こす事態に発展しました。
2015年1月、Pure Food and WineとOne Lucky Duckの従業員が給与未払いを理由に一斉に退職しています。これは1年以内に2度目の給与未払い問題でした。メルンガイリスは銀行の変更が原因だと従業員に説明しましたが、実際にはストランジスへの送金で資金が枯渇していたのです。
2015年4月にレストランは一時再開しましたが、大多数のスタッフは戻りませんでした。2015年7月、再び給与未払いが発生し、スタッフが完全に離脱。両店舗は永久に閉店となりました。
メルンガイリスとストランジスはニューヨークを逃亡し、偽名を使って10ヶ月間逃げ回りました。2016年5月12日、テネシー州セヴィアビルのホテルに潜伏していたところを逮捕されています。逮捕のきっかけは、ストランジスがドミノ・ピザを注文したことでした。ビーガンレストランのオーナーの夫が、ジャンクフードのピザで居場所を特定されたという皮肉な結末です。
裁判と現在
2017年、メルンガイリスは窃盗、詐欺共謀、脱税の罪で有罪答弁に応じました。
投資家から20万ドル以上を盗んだことを認め、約4ヶ月間ライカーズ島の刑務所で服役しています。出所後の2018年5月にストランジスとの離婚を申請しました。一方のストランジスは4件の窃盗罪で有罪となり、1年間の禁固刑と5年間の保護観察、84万ドルの賠償金支払いが命じられています。
2022年にNetflixで全4話のドキュメンタリーシリーズBad Vegan: Fame. Fraud. Fugitives.が配信され、事件は世界的な注目を集めました。メルンガイリス本人もドキュメンタリーに参加していますが、シリーズの内容については事実と異なる描写が多いと主張しています。
未払い給料については、ドキュメンタリーへの協力報酬を元従業員の弁護士への支払いに充て、一部を返済したと本人は説明しています。現在もInstagramでは愛犬レオンとの生活を投稿しており、レオンは12歳の誕生日を迎えています。
まとめ
- NYの人気ビーガンレストランのオーナーが、詐欺師の夫に約170万ドルを送金させられ、従業員への給料未払いで店が崩壊した
- 愛犬を不老不死にできるという荒唐無稽な約束で支配され続けた背景には、コーアシブ・コントロール(支配的な心理操作)があった
- 知性や社会的地位があっても心理的な操作からは逃れられない。パートナーから金銭を繰り返し要求される関係は、それ自体が危険のサインだ
よくある質問
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QPure Food and Wineは現在も営業していますか?
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A
営業していません。2016年に永久閉店しており、姉妹店のOne Lucky Duckも同時に閉店しています。従業員の給与未払い問題が直接の原因であり、メルンガイリスの逮捕後は再開されていません。
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Qメルンガイリスは被害者なのですか、加害者なのですか?
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A
法的には加害者です。窃盗、詐欺共謀、脱税で有罪判決を受けています。一方で、弁護側はストランジスによる心理的支配(コーアシブ・コントロール)を主張しており、メルンガイリス自身も被害者であるという側面が議論されています。ただし従業員の給料を長期間未払いにした責任は、動機に関わらず彼女にあります。
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Q愛犬レオンはどうなりましたか?
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A
レオンはメルンガイリスと一緒に元気に暮らしています。Netflixの公式サイトTudumのインタビューで、メルンガイリスはレオンが12歳の誕生日を迎えたことを報告しました。不老不死にはなりませんでしたが、メルンガイリスにとって今もかけがえのない存在であるようです。
【出典】参考URL
- Wikipedia:Sarma Melngailis:経歴、レストランの歴史、事件の詳細
- TODAY:Bad Veganの解説とメルンガイリスの現在
- South China Morning Post:事件の経緯と裁判結果
- Netflix Tudum:Bad Vegan公式ページ


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