- 暗号資産取引所FTXの創業者SBFが、顧客資産80億ドルを姉妹会社アラメダ・リサーチに不正流用し、2022年11月に取引所が崩壊した
- 流用された資金は高リスク取引、政治献金、バハマでの贅沢な生活に使われた。暗号資産のバーナード・マドフと呼ばれた
- 2023年に7つの詐欺・共謀罪で有罪評決。禁固25年と110億ドルの資産没収が命じられた
FTXは大丈夫だ。資産は大丈夫。すべての顧客の保有資産をカバーするのに十分な資金がある――。2022年11月7日、FTXの創業者サム・バンクマン=フリードはSNS上でそう断言しました。しかしその数日後、FTXは経営破綻しました。顧客資産80億ドルが消えていたのです。
SBFの愛称で知られるバンクマン=フリードは、人類史上最速で資産100億ドルを超える大富豪となり、暗号資産業界のトップに君臨していました。しかしその裏では、顧客の預かり資産を姉妹会社に流用する巨大な詐欺スキームを運営していたのです。
SBFの経歴とFTXの急成長
バンクマン=フリードとは、スタンフォード大学の法学教授の両親のもとに生まれた天才トレーダーであり、効果的利他主義の信奉者でした。
名門量的取引会社ジェーン・ストリートでトップランクのトレーダーとして働いた後、2019年にFTXを設立。暗号資産取引所は爆発的に成長し、2021年には1500億円の売上を計上しました。SBFの個人資産は260億ドル(約4兆円)に達し、フォーブス誌の30歳以下の富豪ランキングでも常連となっています。
政治献金にも積極的で、2022年の米中間選挙では民主党を中心に数千万ドルを寄付。暗号資産業界のロビイストとしての顔も持っていました。
顧客資産80億ドルの不正流用
FTX崩壊の核心は、顧客の預かり資産を姉妹会社アラメダ・リサーチに不正流用していたことです。
アラメダ・リサーチはSBFが実質的に支配するヘッジファンドであり、FTXの顧客資産から約130億ドルを借り入れていました。この資金は高リスクの取引、投機的な賭け、債務返済、政治献金、さらにはバハマでの贅沢な不動産や生活費にも使われたのです。
2022年11月にメディアがアラメダの財務状況を報じたことで取り付け騒ぎが発生。顧客が一斉に引き出しを求めましたが、資金は既に流用されており、FTXは引き出しを処理できず崩壊しました。

SBFの事件で最も恐ろしいのは、崩壊の直前までFTXは大丈夫だと公に断言していたことです。顧客の資産が消えた後でこの発言が嘘だったと判明する――これは古典的な詐欺のパターンそのものです。暗号資産であろうと株式であろうと、取引所が大丈夫だと言っているから大丈夫、という思考は危険です。
裁判と判決
2023年11月、約1ヶ月にわたる裁判の末に7つの詐欺・共謀罪全てで有罪評決が下されました。
陪審はわずか5時間で評決を出しています。2024年3月28日にニューヨーク連邦地裁はSBFに禁固25年と110億ドル(約1兆6600億円)の資産没収を言い渡しました。メリック・ガーランド司法長官は、SBFは自分が法律を超越していると考えていた。今日の判決は彼が間違っていたことを証明しているとコメントしています。
FTXの元CTO、元エンジニアリング部長、元CEOの交際相手など、複数の幹部が検察側と司法取引に応じて証言に協力しました。破産手続きでは暗号資産価格の上昇により、債権者への全額返済の目処が立っているとされています。
まとめ
- SBFは顧客資産80億ドルをアラメダ・リサーチに不正流用し、高リスク取引や政治献金、バハマでの贅沢生活に使った
- 7つの詐欺・共謀罪で有罪となり禁固25年と110億ドルの資産没収が命じられた。暗号資産のマドフと呼ばれた
- 取引所が大丈夫だと言っても鵜呑みにしない。暗号資産であっても、顧客資産の分別管理と外部監査の確認が投資家を守る最低限の自衛策だ
よくある質問
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QFTXの顧客は資産を取り戻せましたか?
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A
破産手続きにおいて、暗号資産価格の急上昇により、債権者への全額返済の軌道に乗っていると報じられています。ただし、返済額は破綻時の評価額に基づいているため、その後の値上がり分は反映されず、全額回収に満足していない債権者もいます。
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Q効果的利他主義とは何ですか?
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A
できるだけ多くの善を行うために、最も効果的な方法で資金を稼ぎ、寄付するという哲学です。SBFはこの思想に共鳴し、大金を稼いで寄付に回すことが世界にとって最善だと主張していました。しかし裁判では、利他主義を隠れ蓑にした詐欺だったと検察側が主張し、有罪判決に至っています。
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Q日本の暗号資産取引所でも同様の事件は起きていますか?
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A
日本では2018年のコインチェックNEM流出事件(約580億円)などが発生しています。ただし日本では金融庁の規制により、暗号資産交換業者に顧客資産の分別管理が義務付けられています。FTX事件を受けて、世界各国で暗号資産取引所への規制強化が進んでいます。
【出典】参考URL
- Wikipedia:サム・バンクマン=フリード裁判:裁判の詳細、証言、判決
- WIRED:FTX創業者SBF、禁錮25年判決の重みとは
- Bloomberg:FTX創業者バンクマンフリード被告に禁錮25年


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