シーメンス贈賄事件とは?世界9カ国で8億ドルの賄賂をばらまいた巨大企業

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シーメンス贈賄事件とは?世界9カ国で8億ドルの賄賂をばらまいた巨大企業を3行で要約
  • ドイツの総合電機企業シーメンスが、イラク・アルゼンチン・中国・ロシアなど世界9カ国でプロジェクト受注のために外国公務員に組織的に賄賂を支払っていた
  • 2001年から2007年の間に総額8億ドル超の不正支払いが行われ、17以上のオフショアのペーパーカンパニーを使って隠蔽された
  • 2008年に米独当局と和解し、罰金総額は史上最高の16億ドル。内部調査には1億ドル超、弁護士費用は5億ユーロ以上を要した

2008年12月、ドイツの総合電機企業シーメンスが米国と独の当局に支払った罰金の総額は16億ドル。腐敗防止に関する罰金としては当時も現在も史上最高額です。“贈賄のパターン”は“規模の面でも地理的範囲の面でも前例がない”と評されました。

シーメンスは世界9カ国で外国公務員に組織的に賄賂を支払い、17以上のペーパーカンパニーを使って隠蔽していました。この記事では、FCPA(海外腐敗行為防止法)史上最大の事件となったシーメンス贈賄事件の全貌を解説します。

事件の規模と手口

米国司法省の略式起訴状によれば、シーメンスとその子会社は2001年から2007年の間に各国の公務員に対して総額8億ドルを超える不正支払いを行いました。

対象国はイラク、アルゼンチン、バングラデシュ、ベネズエラ、中国、イスラエル、メキシコ、ロシア、ベトナムの9カ国。アルゼンチンでは国民IDカード作成の10億ドル規模の契約獲得のために約1億ドルの賄賂が支払われました。数百万ドルの現金を国境を越えて輸送したり、17以上のオフショアのペーパーカンパニーを経由したりと、隠蔽手法も組織的でした。

罰金16億ドルと大改革

シーメンス贈賄事件の時系列
  • 2001年〜2007年
    世界9カ国で8億ドル超の賄賂
    シーメンスとその子会社が外国公務員に組織的に賄賂を支払い、プロジェクトを受注。ペーパーカンパニーや現金輸送で隠蔽された。
  • 2006年
    ドイツ当局の捜査が開始
    ドイツのミュンヘン検察が不正支払いの疑いでシーメンスの捜査を開始。米国司法省とSECも調査に着手した。
  • 2008年12月
    米独当局と和解、罰金16億ドル
    米司法省に罰金4.5億ドル、SECに不当利益返還3.5億ドル、ドイツ当局に罰金を支払い、総額16億ドルで和解。FCPA史上最大の事件に。
  • 2008年〜
    経営陣の大幅入れ替えとコンプライアンス改革
    大部分の経営層を入れ替え、コンプライアンス体制を抜本的に強化。内部調査では1750回超のヒアリング、1億以上の文書を収集、延べ150万時間の弁護士・会計士作業を要した。
  • 2011年12月
    元幹部8名がFCPA違反で起訴
    和解から3年後、米司法省がシーメンスの元幹部と代理人8名をFCPA違反の共謀で起訴。当初の和解では個人の刑事責任が問われていなかったことが上院で批判されていた。
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シーメンスの内部調査は凄まじい規模でした。1750回のヒアリング、1億以上の文書の収集と検索、弁護士・会計士延べ150万時間の作業。調査費用だけで1億ドルを超え、弁護士費用は5億ユーロ以上かかったとされています。罰金16億ドルに加えてこの費用ですから、賄賂の“代償”は想像を絶する規模でした。

現代に通じる教訓

シーメンス事件は、海外事業での贈賄リスクは企業規模に関係なく存在することを示しました。

シーメンスは世界有数の優良企業でしたが、その内部に組織的な贈賄文化が根付いていました。FCPA違反は米国企業だけでなく、米国で上場している外国企業や、米国の銀行を通じて送金を行った企業にも適用されます。日本企業でも日揮やブリヂストンがFCPA違反で巨額の罰金を支払った事例があり、海外事業を行うすべての企業にとって他人事ではありません。

まとめ

  • シーメンスが世界9カ国で8億ドル超の組織的贈賄を実施。17のペーパーカンパニーで隠蔽していた
  • 米独当局に史上最高額の罰金16億ドルを支払い、経営層の大幅入れ替えとコンプライアンス改革を実施
  • FCPA違反は外国企業にも適用される。日本企業も含め、海外事業を行うすべての企業が対象となる

よくある質問

Q
FCPAとは何ですか?
A

FCPA(Foreign Corrupt Practices Act、海外腐敗行為防止法)は、外国公務員への贈賄を禁止する米国連邦法です。1977年に制定され、米国企業だけでなく、米国で上場している外国企業や、米国の銀行・通信手段を使った外国企業にも適用されます。違反した場合は巨額の罰金や禁固刑が科されます。

Q
シーメンスの経営者は逮捕されましたか?
A

2008年の和解時点では個人の刑事責任は問われませんでした。これに対して米上院から強い批判があり、3年後の2011年にシーメンスの元幹部8名がFCPA違反で起訴されました。シーメンス社内では大部分の経営層が入れ替えられています。

Q
日本企業にもFCPAは適用されますか?
A

はい。FCPAは米国上場企業のほか、米国の銀行を通じた送金や米国内での行為があった場合にも適用されます。実際に日揮がナイジェリアの公務員への贈賄で2億1880万ドル、ブリヂストンが2800万ドルの罰金を支払っています。また、日本にも不正競争防止法に外国公務員贈賄罪があり、違反すると5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されます。

【出典】参考URL

  • モリソン・フォースター:元幹部8名の起訴、アルゼンチンでの1億ドル贈賄、17のペーパーカンパニー
  • RIETI:和解金額16億ドル、弁護士費用5億ユーロ超、FCPA執行の高額化と国際化
  • 経済産業省:9カ国での8億ドル超の不正支払い、内部調査150万時間

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