- マレーシアのナジブ元首相が設立した政府系ファンド“1MDB”から、45億ドル以上(約4700億円)が不正に流用された
- ゴールドマンは1MDBの債券発行で6億ドル以上の手数料を獲得。東南アジア担当の元幹部が賄賂を認識しながら業務を獲得した
- ゴールドマンは創業以来初の子会社有罪認定。罰金総額は世界全体で50億ドル(約5200億円)を超えた
2020年10月、米金融大手ゴールドマン・サックスが創業以来初めて子会社の有罪を認めました。マレーシアの政府系ファンド“1MDB(ワン・マレーシア・デベロップメント)”を舞台にした汚職事件への関与をめぐり、罰金総額は世界全体で50億ドル(約5200億円)を超えました。
リーマンショック以降最悪とも言われたこの金融不祥事の背景と教訓を解説します。
1MDBとは何か
1MDBはマレーシアのナジブ元首相が設立した政府系ファンドです。インフラ整備などに投資する目的でしたが、実際には個人用不動産の購入、映画の製作、賄賂などに資金が流用されました。ナジブに近い華人実業家ジョー・ローが主導し、調達資金を不正に流用したとされています。
ゴールドマンの関与
ゴールドマンは2012年から2013年にかけて、1MDBの債券を約総額65億ドル(約7300億円)で1社で引き受けました。手数料収入は約6億ドルに上ります。東南アジア事業の責任者だったティム・ライスナーは不正を認識しながら引受業務を獲得し、資金流用を手助けしました。
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2009年〜2015年1MDBから45億ドル以上が不正流用ナジブ元首相とジョー・ローらが主導し、個人用不動産・宝飾品・映画製作・賄賂などに資金が流用された。
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2012年〜2013年ゴールドマンが債券引受で約6億ドルの手数料ゴールドマンの投資銀行部門が1MDBの債券約65億ドルを引き受け。元幹部ライスナーが不正を認識しながら業務を推進した。
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2018年11月米司法省が元幹部を贈賄禁止法違反で起訴ライスナーら元幹部2人とジョー・ローを海外腐敗行為防止法違反で起訴。ライスナーは起訴事実を認めた。
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2020年7月マレーシア政府と和解金39億ドルゴールドマンがマレーシア当局に25億ドルを支払い、14億ドル相当の差し押さえ資産の返還を保証することで和解。
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2020年10月罰金29億ドル、子会社が有罪認定米司法省など欧米アジアの規制当局が制裁金29億ドルを課す。アジア子会社が贈賄禁止法違反で有罪を認めた。創業以来初。CEOら幹部の報酬カット総額1.74億ドル。

マハティール元首相は“我々はゴールドマンにだまされた”と公に非難しました。ゴールドマン自身も“東南アジア拠点ではコンプライアンスより案件成立を優先する文化があった”と認めており、組織文化の問題を自ら認めています。
現代に通じる教訓
1MDB事件の教訓は、案件成立を優先する組織文化の危険性です。
ゴールドマンの内部管理部門にはライスナーが虚偽の報告を繰り返していたとされますが、そもそも数億ドル規模の手数料が発生する巨額案件に対して、コンプライアンス部門が十分に機能していなかったことが根本的な問題です。収益を生む部門がコンプライアンスを押しのける構造は、あらゆる金融機関に潜むリスクです。
まとめ
- マレーシアの政府系ファンド1MDBから45億ドル以上が不正流用。ゴールドマンは債券引受で6億ドルの手数料を得た
- 創業以来初の子会社有罪認定。罰金総額は世界で約50億ドルに達し、CEOら幹部の報酬もカットされた
- 案件成立を優先しコンプライアンスを軽視する組織文化の危険性を示した、リーマンショック以降最悪の金融不祥事
よくある質問
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Qナジブ元首相はどうなりましたか?
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A
ナジブ元首相は2018年の総選挙でマハティール率いる野党連合に敗れて退任。その後、複数の賄賂やマネーロンダリングの罪で有罪判決を受けています。個人口座に約数億ドルの資金が流入していたことが確認されています。
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Qゴールドマン本体は有罪になりましたか?
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A
有罪を認めたのはアジア子会社であり、米国本社は訴追延期合意(DPA)を結びました。一定の条件を満たせば本社は3年間起訴されない取り決めです。親会社レベルでの有罪を回避できたことで、事業への影響は軽微と見られています。
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Q不正流用された資金は何に使われたのですか?
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A
個人用不動産の購入、宝飾品、ハリウッド映画の製作(レオナルド・ディカプリオ主演“ウルフ・オブ・ウォールストリート”の製作費用にも流用されたとされる)、そして各国の政治家や官僚への賄賂に使われました。米司法省は史上最高額の16億ドルの贈収賄が絡んでいたと指摘しています。


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