- 投資詐欺の約9割がポンジスキームであり、名称の由来は1920年代に約4万人を騙した詐欺師チャールズ・ポンジだ。
- ポンジスキームの仕組みは「後から入った人のお金を先に入った人への配当に回す」だけで、いずれ必ず破綻する。
- 騙され続ける理由は手口の巧妙さだけでなく、「自分だけは大丈夫」という楽観バイアスが人間に備わっているからだ。
「必ず儲かる」「元本保証」——こういった言葉を見たとき、冷静でいられる自信はありますか。ニュースで投資詐欺の報道を目にするたびに「なぜ引っかかるんだろう」と思う人は多いはずです。でも実は、騙される側に落ち度があるとは言い切れません。
この記事では、投資詐欺の代名詞であるポンジスキームの仕組みと、その名の由来となったチャールズ・ポンジという人物の波乱の生涯を追います。手口を知るだけでなく、「なぜ賢い人でも騙されるのか」という心理的な理由まで掘り下げていきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
チャールズ・ポンジとはどんな人物だったのか
チャールズ・ポンジは、1882年にイタリアで生まれた人物で、投資詐欺の総称として世界中で使われるようになった「ポンジスキーム」という言葉の由来となった詐欺師です。彼の人生は、野心と犯罪と失墜が交互に訪れる、ある意味で壮絶なものでした。
アメリカへの移民としての出発
ボストンやニューヨークでウェイターや皿洗いとして働きながら英語を習得しましたが、ウェイター時代に釣り銭をごまかして解雇された記録も残っています。これが彼の最初の詐欺といわれています。
その後、カナダのモントリオールに移り、チャールズ・ビアンキと名前を変えて銀行員として働き始めました。この銀行こそが、後にポンジの運命を大きく変える場所となります。
その後、カナダのモントリオールに移り、チャールズ・ビアンキと名前を変えて銀行員として働き始めます。この銀行が後にポンジの運命を変えることになります。新規顧客の預金で既存顧客への利息を支払う自転車操業を間近で見たポンジは、「破綻する前に逃げれば儲かる」という発想を身につけてしまいました。やがて小切手偽造で逮捕・服役し、釈放後もアメリカで不法移民として拘束されるなど、失敗を重ねていきます。
切手の価格差に目をつけた瞬間
アメリカに戻ったポンジは結婚し、義父の食料品輸出入事業を引き継ぎますが、これも失敗に終わります。そんな行き詰まった状況で彼が目をつけたのが、国際返信切手券(IRC)という郵便制度のすき間でした。
当時、IRCはイタリアで約1セント相当の価値しかなかったにもかかわらず、アメリカでは3ドル30セント分の切手と交換できました。つまり海外でIRCを大量に買いアメリカで換金すれば、計算上は230%もの利益が出ることになります。ポンジはこれを投資家への説明に使いました。
ポンジ事件の全容:7ヶ月で約4万人を巻き込んだ詐欺
ポンジスキームの実態は、新しく集めたお金を古い出資者への配当に回す「横流し」です。実際の運用益は存在せず、最初から破綻が約束された仕組みです。
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1919年12月投資会社を設立ボストンで「セキュリティ・エクスチェンジ・カンパニー(SEC)」を設立。90日で40%、45日で50%という驚異的な利回りを謳い、投資家を募集し始める。当時の銀行預金利息は5%だったため、話題は瞬く間に広がった。
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1920年前半数百万ドルを集金警察官、聖職者、ブルーカラーの労働者まで幅広い層が殺到。会社設立から数ヶ月で350万ドルを集め、1921年には3時間で100万ドルが集まる日もあった。初期の投資家には約束通り配当を支払い、信用を積み上げていった。
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1920年7月新聞報道で疑惑が浮上事務用品をレンタルしていた業者が「儲かっているはずなのに、なぜ事務用品を買わないのか」と疑問を持ち当局に通報。ボストンポスト紙がポンジへの疑惑を取り上げ始める。ポンジは余裕の態度で返金にも応じ続けた。
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1920年8月詐欺の実態が発覚・逮捕8月2日に切手取引の実態がないことが暴露され、8月12日に政府がポンジの破産を正式通告。負債は推計500万~1,000万ドル。被害者は約4万人にのぼり、ポンジは詐欺罪で連邦刑務所に収容された。
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1949年1月ブラジルで死去服役後も1934年にフロリダで不動産詐欺を働き、アメリカ市民権を剥奪されてイタリアへ強制送還。その後ブラジルへ渡り、1949年1月18日、リオデジャネイロの慈善病院で失明状態のまま生涯を終えた。晩年は無一文だったとされる。

ポンジ本人は最後、失明して無一文でブラジルの慈善病院で亡くなっています。詐欺師の末路って、派手な人生の終わりにしては寂しすぎますよね。
ポンジスキームの仕組みをわかりやすく解説
ポンジスキームとは、新しく集めたお金を古い出資者への配当に回し続ける投資詐欺で、実際の運用益は存在しません。ウィキペディアをはじめ複数の資料によると、投資詐欺の約9割がこの手法で行われているとされています。
仕組みの正体は「自転車操業」
ポンジスキームの流れは次のとおりです。まず詐欺師が「元本保証・高配当」を謳って出資者を集めます。集まったお金の一部を初期の出資者へ配当として払い、「本当に増えた!」と思わせます。
喜んだ出資者が周囲に広め、さらに多くの人が参加します。そして新規参入者が増えなくなった瞬間、配当が払えなくなり、詐欺師はお金を持って姿を消します。
重要なのは、実際の投資や運用は一切行われていない点です。配当の原資は次の被害者が出した元本であり、後から参加した人ほど損害が大きくなる構造です。
| 見分けるポイント | 詐欺のサイン | 正常な投資 |
|---|---|---|
| 利回りの高さ | 年利10%超、月利5%などを保証 | リスクに見合った変動利回り |
| 元本保証 | 必ず元本保証と明言する | 預金・国債以外に元本保証なし |
| 運用の透明性 | どこに投資しているか説明できない | 運用先・方法を明確に開示 |
| 勧誘方法 | 知人経由の口コミが中心 | 金融庁登録の正規業者が対応 |
現代版ポンジスキームの姿
現代ではSNSや暗号資産を使った形に進化しています。警察庁によると、令和6年のSNS型投資詐欺の被害額は871.1億円にのぼっています。国内でも、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開したスマートデイズ社が新規投資家の資金で既存投資家への家賃保証を賄うポンジスキームを実行し、多くの投資家が多額の負債を抱えた事件として記憶に新しいでしょう。また史上最大のポンジスキームとして知られるバーナード・マドフ事件では、25年にわたって被害総額約6兆円規模の詐欺が続きました。
なぜ賢い人でも騙されるのか——楽観バイアスの罠
「自分は詐欺に引っかからない」と思っている人ほど危険です。これは心理学的に証明されている事実で、楽観バイアスと呼ばれる認知の偏りが原因となっています。
楽観バイアスとは、十分な根拠がないにもかかわらず「自分だけは大丈夫」とポジティブに捉えてしまう心理傾向のことです。
米国の大学入学試験協会が100万人の学生を対象に行ったアンケートでは、70%の学生がリーダーシップ能力は平均以上だと自己評価し、平均以下と答えたのはたった2%でした。数学的に不可能なこの結果が示すように、人間は自分を客観的に評価することが非常に苦手なのです。
詐欺師はこの心理を徹底的に利用します。「他の人は騙されても、自分は投資眼がある」「この話は本物に違いない」——そう思わせることが、ポンジスキームの本当の核心部分です。さらに、最初に実際の配当が振り込まれることで確証バイアスが強まり、「やっぱり本物だった」と信念が固まってしまいます。この段階になると、第三者がどれほど警告しても聞き入れられないことがほとんどです。

「自分だけは大丈夫」という感覚こそが、詐欺師が一番利用したい感情です。知識を持つことより、まず「自分も騙されうる」と認識することの方が、詐欺への防衛としては効果的だと思っています。
まとめ:ポンジスキームから身を守るために
- 投資詐欺の約9割を占めるポンジスキームは、新規出資者の金を既存出資者への配当に回すだけの仕組みで、必ず破綻する。
- 元本保証・高利回り・不透明な運用の三拍子が揃ったら、まず詐欺だと考えるべきだ。
- 騙される原因は知識不足だけでなく、楽観バイアスという人間に備わった認知の偏りにもある。
怪しい投資話を受けたときは、金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(平日10時〜17時)への相談をまず検討してみてください。相手が信頼できる知人であっても、お金の話は一度立ち止まって確認する習慣が身を守ります。
よくある質問
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Qポンジスキームとネズミ講の違いは何ですか?
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A
最大の違いは、出資者が人を勧誘するかどうかです。ネズミ講(無限連鎖講)は出資者自身が新たな参加者を勧誘してピラミッド構造を作りますが、ポンジスキームでは基本的に運営者と出資者の関係だけで成立します。ただし現代ではポンジスキームにマルチ的な勧誘要素が組み合わさったケースも多く見られます。
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Qポンジスキームに巻き込まれた場合、お金は戻ってきますか?
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A
回収できるケースは限られており、早期発覚・早期行動が鍵になります。詐欺が発覚した時点ですでに資金が散逸していることが多く、全額回収は現実的に困難なケースがほとんどです。被害に気づいたら、まず証拠(振込明細・契約書・チャット履歴など)を保全し、すぐに弁護士や消費生活センターへ相談することが重要です。
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Q暗号資産(仮想通貨)への投資はポンジスキームですか?
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A
暗号資産自体はポンジスキームではありませんが、暗号資産を使ったポンジスキームは非常に多く存在します。合法的な暗号資産取引所と詐欺的な案件の違いは、金融庁への登録の有無や、運用方法の透明性にあります。SNSで見知らぬ人から誘われた暗号資産への投資は、ほぼ詐欺と考えて差し支えありません。
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Qチャールズ・ポンジは最終的にどうなりましたか?
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A
服役後も詐欺を繰り返したため、アメリカ市民権を剥奪されてイタリアへ強制送還されました。その後ブラジルへ渡り、1949年1月18日、失明状態でリオデジャネイロの慈善病院にて無一文のまま死去しています。かつて豪邸や高級車を所有した詐欺師の晩年としては、あまりにも惨憺たる結末です。
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Q友人から紹介された投資話はどうやって見分ければいいですか?
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A
信頼できる知人からの紹介であっても、その知人自身が騙されている場合があるため安心できません。確認すべきは「金融庁に業者として登録されているか」「運用先を書面で説明できるか」「元本保証を謳っていないか」の3点です。これらを確認した上で、第三者(弁護士や消費生活センター)に相談してから判断する習慣を持つことが最大の防衛策です。
出典・参考リンク
- チャールズ・ポンジ – Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%82%B8
- ポンジ・スキーム – Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%A0
- 警察庁・令和6年SNS型投資詐欺被害状況(TRUST PROOFより引用):https://trust-proof.jp/investment-scam-schemes/
- 楽観バイアスと平均以上効果に関するデータ(日本チェンジマネジメント協会):https://change-management-japan.org/2021/05/06/cognitive-bias/
- 金融庁「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」:https://www.fsa.go.jp/




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