- イタリアの乳業最大手パルマラットが約140億ユーロ(約1.8兆円)の債務超過を隠蔽していた
- バンク・オブ・アメリカのケイマン諸島口座に39億ユーロの預金があると偽造した書類を作成し、監査でも長年発覚しなかった
- 創業者カリスト・タンジが詐欺罪で有罪。「欧州版エンロン」と呼ばれ、EU全体のコーポレートガバナンス改革のきっかけとなった
牛乳パックの裏に隠された1.8兆円の嘘。パルマラット事件は、イタリアの国民的乳製品メーカーが約15年にわたって粉飾決算を続け、欧州金融市場を震撼させた事件です。
パルマラットは世界30ヶ国以上で事業を展開し、年間売上高は約75億ユーロに達していました。しかしその財務諸表の裏では、架空の銀行口座と偽造書類による巨額の粉飾が行われていました。
パルマラットとは
パルマラット(Parmalat)とは、1961年にカリスト・タンジがイタリアのパルマで設立した乳製品メーカーです。ロングライフ(常温保存可能)牛乳の製造で急成長し、欧州最大級の食品企業に成長しました。
1990年代にはミラノ証券取引所に上場し、積極的な海外M&Aで南米、オーストラリア、北米にも進出。売上高約75億ユーロ、従業員約3万6,000人のグローバル企業となっていました。
しかしこの急速な拡大の影で、M&Aによる巨額の負債と本業の利益率低下が進行していました。タンジ一族はこの事実を隠すため、組織的な粉飾決算に手を染めていきました。
粉飾の手口:偽造された39億ユーロの銀行口座
パルマラットの粉飾の中で最も衝撃的だったのは、バンク・オブ・アメリカのケイマン諸島支店に39億ユーロの預金があると偽造した確認書の存在です。
2003年12月、この預金の実在を確認するためにバンク・オブ・アメリカに照会したところ、「そのような口座は存在しない」と回答。39億ユーロの預金は完全な架空であり、パルマラットの財務諸表は根本から虚偽であることが判明しました。
その他の粉飾手口は以下の通りです。
- 架空の売上計上:子会社間の取引を水増しし、連結売上高を過大に表示
- 負債の隠蔽:オフショアのSPE(特別目的会社)に負債を移し、連結対象から除外
- 偽造書類:銀行の残高確認書や取引先との契約書を偽造
事件の全貌
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1990年代積極的M&Aと粉飾の開始世界各地でM&Aを実施し急拡大。しかし買収の失敗や業績低迷を隠すため、架空の資産計上や負債隠蔽が始まる。
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2003年11月社債の償還不能で経営危機表面化1.5億ユーロの社債の償還ができず、資金繰りへの疑念が浮上。投資家やアナリストが財務情報の精査を開始。
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2003年12月39億ユーロの架空口座が発覚バンク・オブ・アメリカへの照会で、ケイマン諸島口座の39億ユーロが架空であることが判明。パルマラットの財務が完全な虚偽と確定。
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2003年12月末経営破綻・タンジ逮捕パルマラットが経営破綻。負債総額は約140億ユーロ。創業者タンジが逮捕・起訴。イタリア政府が特別管財人を任命。
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2008〜2010年タンジに有罪判決複数の裁判で詐欺罪等が認定。タンジに禁錮刑(累計18年)の判決。パルマラットは再建され事業継続。

エンロン、ワールドコム、パルマラット。2000年代初頭に相次いだ粉飾決算事件は、世界中の会計基準と監査制度の大改革を引き起こしました。しかし20年後にはワイヤーカードで同じことが繰り返されています。制度は改善されても、人間の不正への誘惑は消えないということですね。
まとめ
- パルマラットは39億ユーロの架空銀行口座を含む組織的な粉飾で約140億ユーロの債務超過を隠蔽していた
- 「欧州版エンロン」としてEU全体のコーポレートガバナンス改革のきっかけとなった
- 大企業であっても銀行残高の架空計上という単純な手口が使われうる。投資家は監査報告書だけでなく、キャッシュフローの異常にも注目すべきだ
よくある質問
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Qパルマラットは現在も存在していますか?
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A
はい。パルマラットは経営破綻後に再建手続きを経て事業を継続しました。2011年にはフランスの乳製品大手ラクタリスに買収され、現在もラクタリスグループの一部としてパルマラットブランドの乳製品が販売されています。
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Qエンロンとパルマラットの共通点は?
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A
両社ともオフバランスのSPE(特別目的会社)を使った負債隠蔽、経営者の独裁的権力、監査法人の監視機能不全が共通しています。また両事件とも会計基準と監査制度の大改革を引き起こした点も同じです。
【出典】参考URL
- Parmalat – Wikipedia:事件の全体像、粉飾の詳細
- RIETI:パルマラット事件とEUのコーポレートガバナンス改革


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