- 世界の主要銀行(バークレイズ、UBS、ドイツ銀行等)が基準金利LIBORを意図的に操作し、自社のデリバティブ取引で有利な利益を得ていた
- LIBORは数百兆ドル規模の金融商品(住宅ローン、企業融資、デリバティブ等)の基準金利として使われていたため、不正の影響は全世界に及んだ
- 関与した銀行は合計で数十億ドルの制裁金を支払い、LIBOR自体も2023年に廃止された
世界中の住宅ローン金利、企業の借入金利、年金の運用リターン。これらすべてに影響する「基準金利」を、世界中の銀行幹部が裏で操作していたとしたら?
LIBOR(ライボー:London Interbank Offered Rate)は、ロンドンの銀行間取引金利で、世界中で約350兆ドルの金融商品の基準として利用されていました。2012年の調査で、この基準金利を世界の主要銀行が組織的に不正操作していたことが発覚。金融の信頼を根本から揺るがす史上最大級のスキャンダルとなりました。
LIBORとは何か?
LIBOR(ライボー)とは、ロンドンの主要銀行が「他の銀行からいくらの金利で借りられるか」を自己申告し、その平均値から算出される基準金利です。
この金利は次のような金融商品の基準として使われていました。
- 住宅ローン(変動金利型)
- 企業融資の金利
- 金利スワップやデリバティブ取引
- 学生ローン
- 各国の中央銀行の金融政策の参考指標
問題は、LIBORが「各銀行の自己申告」に基づいていた点です。実際の取引データではなく、各銀行のLIBOR提出担当者が「この金利で借りられると思う」と申告する数字の平均でした。ここに不正介入の余地がありました。
不正操作の手口
トレーダーによる利益操作
銀行のデリバティブトレーダーは、自分のポジション(保有している金融商品)の利益を最大化するために、LIBOR提出担当者に「今日の金利はこの水準にしてくれ」と依頼していました。チャットやメールでの依頼記録が大量に残っており、これが動かぬ証拠となりました。
金融危機時の信用偽装
2008年のリーマンショック前後、銀行は市場から「資金調達に困っている」と見られることを避けるため、実際より低い金利を申告していました。高い金利を申告すると「この銀行は信用がない(高い金利でしか借りられない)」と市場に判断されるためです。
主要銀行への制裁
| 銀行 | 制裁金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| バークレイズ | 約2.9億ポンド | 2012年6月に最初に発覚。CEO辞任 |
| UBS | 約15億ドル | 2,000件超の不正レート変更依頼が判明 |
| ドイツ銀行 | 約25億ドル | LIBOR・EURIBORの操作。記録的な制裁金 |
| JPモルガン | 数億ドル | 複数通貨のLIBOR操作に関与 |
| シティグループ | 数億ドル | 日本円LIBORの不正にも関与 |

「世界の基準金利が操作されていた」というのは、サッカーの審判全員が八百長をしていたようなもの。個別企業の不正とは次元が違う、金融システムそのものへの裏切りです。
LIBORの廃止と現在
不正操作スキャンダルを受け、LIBOR自体の信頼性が根本的に疑問視されました。その結果、当局は段階的にLIBORを廃止し、実際の取引データに基づいた代替金利への移行を決定しました。
米国ではSOFR(担保付翌日物資金調達金利)、英国ではSONIA(スターリング翌日物銀行間平均金利)などが新たな基準として導入され、2023年にLIBORは正式に廃止されました。
まとめ
- 世界の主要銀行が基準金利LIBORを組織的に操作し、数百兆ドル規模の金融商品に影響を与えていた
- 不正の原因は「自己申告」という脆弱な仕組みにあった。トレーダーの依頼でレートが日常的に改ざんされていた
- 事件を受けてLIBORは2023年に廃止。実取引データに基づく新たな基準金利に移行した
よくある質問
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QLIBORの不正で一般の住宅ローン利用者にも影響がありましたか?
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A
影響がありました。変動金利型の住宅ローンや学生ローンはLIBORに連動していたため、不正操作により本来あるべき金利より高い(または低い)金利が適用されていた可能性があります。ただし個人レベルの影響額は算出が極めて困難です。
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Q日本の銀行もLIBOR不正に関与していましたか?
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A
日本円LIBORの不正操作には複数の海外大手銀行(シティグループ等)が関与しており、日本の金融市場にも影響がありました。日本の銀行については直接的な制裁の対象にはなりませんでしたが、日本円TIBORの改革も実施されています。
【出典】参考URL
- LIBOR scandal – Wikipedia:不正操作の全体像、各銀行の処分
- FCA(英金融行動監視機構):バークレイズへの処分とLIBOR改革


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