- ケフィア事業振興会は干し柿やメープルシロップなど食品の「オーナー制度」を展開。1口数万円で商品のオーナーになれば半年後に元本+約10%の利息で買い取ると約束していた
- 高齢者を中心に4万人超から約2200億円を集めたが、資金の多くは新規出資者への配当に回す自転車操業だった。2018年9月にグループ28社が破産
- 2020年2月に元代表の鏑木秀彌ら9名が出資法違反で逮捕。2022年2月に懲役7年・罰金300万円の判決。被害弁護団は「被害の重大性を反映していない」と批判した
「柿のオーナーになりませんか?半年後に10%の利息をつけて買い取ります」――。新聞の通販広告でヨーグルトや健康食品を購入した高齢者のもとに、月に何度もダイレクトメールが届きました。干し柿、メープルシロップ、オマールロブスター、果物ジュース。商品は違えど、仕組みはすべて同じ「オーナー制度」でした。
ケフィア事業振興会は、この仕組みで4万人超の会員から約2200億円を集め、そのほとんどを運用せずに別の出資者への配当に回す自転車操業を行っていました。2018年9月に破産したとき、負債は約1300億円に達しています。
この記事では、ケフィア事業振興会のオーナー商法の手口と破綻の経緯、そして「預託商法(オーナー商法)」に騙されないための知識を解説していきます。
ケフィア事業振興会とは
ケフィア事業振興会とは、1992年に設立された東京都千代田区の通信販売企業です。当初はケフィアヨーグルトのたね菌の普及・販売を目的としていました。会員制通販サイト「ケフィアカルチャー」で食品や健康食品を販売し、公称会員数は220万人に上りました。
グループ企業は約40社に及び、かぶちゃん農園(食品製造)、かぶちゃんメガソーラー(太陽光発電)、水晶山温泉ランド(観光施設)など多角的に事業を展開。代表の鏑木秀彌は「かぶちゃん」の愛称で親しまれ、シルク・ドゥ・ソレイユの貸切公演に最大2905人を招待するなど、派手な顧客囲い込みを行っていました。
オーナー制度の手口
ケフィア事業振興会の「オーナー制度」は、商品の買い戻し特約付き売買契約という形態をとっていました。
仕組みは単純です。消費者が1口数万円で干し柿やメープルシロップなどの商品の「オーナー」になり、ケフィアが約半年後にその商品を元本+約10%の利息を上乗せした金額で買い取るという約束です。年利に換算すると約20%以上となります。
通販広告で獲得した顧客リストに対し、頻繁にオーナー制度の案内DMを送付。高齢者を中心に、老後の資金を預ける人が続出しました。「食品」という身近な商品を投資対象にすることで心理的ハードルを下げ、銀行預金では得られない高利回りで引きつけるという巧みな手口でした。
しかし実態は、集めた資金を実際の商品運用に充てるのではなく、新規出資者の資金で既存出資者への配当を支払う自転車操業でした。売上高は2013年の65億円からわずか4年で約1004億円まで急膨張しましたが、これは事業の成長ではなく、出資金の流入額が膨らんだ結果に過ぎません。

ケフィアのオーナー制度は、安愚楽牧場(和牛オーナー)やジャパンライフ(磁気ネックレスレンタル)と同じ「預託商法」の典型です。商品は違えど構造は同じ。「モノのオーナーになって利益を得る」という話が来たら、まずその商品が本当に運用されているかを確認してください。
破綻から逮捕・判決まで
- 2011年頃オーナー制度を本格展開干し柿やメープルシロップなど食品のオーナー制度を開始。新聞の通販広告で獲得した顧客リストにDMを頻繁に送付し、高齢者を中心に出資者を拡大。
- 2017年11月頃配当の支払いが滞り始めるオーナー制度の利息・元本の支払いが遅延。一部顧客が返金を求め提訴する事態に発展した。
- 2018年7月被害弁護団が結成紀藤正樹弁護士を団長とする「ケフィアグループ被害対策弁護団」が結成。消費者庁も8月に数百億円の支払い遅延として異例の注意喚起を発出した。
- 2018年9月破産申立て(グループ28社、負債約1300億円)ケフィア事業振興会と関連3社が東京地裁に破産申立て。その後も関連会社が次々と破産し、最終的にグループ28社が破産開始決定。負債総額約1300億円、債権者3万人超。代表の鏑木秀彌・武弥も個人破産。
- 2019年2月家宅捜索後、長男が自殺警視庁が出資法違反容疑で旧本社を家宅捜索。その約1週間後の2月14日、鏑木武弥(長男)が自宅で自殺した。
- 2020年2月元代表ら9名を逮捕警視庁が鏑木秀彌元代表ら9名を出資法違反(預かり金の禁止)の疑いで逮捕。詐欺容疑も視野に捜査を進めた。
- 2022年2月元代表に懲役7年・罰金300万円東京地裁が鏑木秀彌被告に詐欺と出資法違反で懲役7年・罰金300万円の判決。裁判長は「大規模な犯行で悪質性は高い。老後の生活資金をだまし取られた被害者もいる」と指摘した。弁護団は「被害の重大性を反映していない」と批判。
現代に通じる教訓:預託商法(オーナー商法)を見破る
ケフィア事件を受けて、2021年に預託法(特定商品等の預託等取引契約に関する法律)が改正され、預託商法(オーナー商法)は原則として禁止されました。
しかし、名称や形態を変えた類似の手口は今後も登場する可能性があります。「モノのオーナーになって利益を得る」という話が来たら、以下を確認してください。商品が実際に製造・運用されているか確認できるか。年利10%以上の利回りは銀行預金の数百倍であり現実的ではない。運用の実績報告書を第三者が監査しているか。そして「元本確保」「必ず儲かる」という言葉が出たら詐欺の可能性が極めて高いと考えてください。

ケフィアの被害者の多くは高齢者で、新聞広告を入口に信頼を得ていました。新聞に広告が載っている=安全、というわけではありません。新聞社は広告の掲載基準で審査していますが、事業の健全性を保証するものではないことを覚えておいてください。
まとめ
- ケフィア事業振興会は食品のオーナー制度で4万人超から約2200億円を集め、自転車操業の末にグループ28社が破産。負債約1300億円
- 元代表の鏑木秀彌に懲役7年・罰金300万円の判決。長男は家宅捜索後に自殺。被害者の多くは老後の資金を失った高齢者だった
- 2021年の法改正で預託商法は原則禁止に。「モノのオーナーになって利益を得る」という話が来たら、まず運用実態の確認を
よくある質問
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Qオーナー商法(預託商法)は現在も合法ですか?
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A
2021年の法改正により、預託商法(オーナー商法)は原則として禁止されました。ケフィア事業振興会、ジャパンライフ、安愚楽牧場など、預託商法による巨額被害が相次いだことを受けた規制強化です。ただし、形態を変えた類似の手口は出現する可能性があるため、引き続き注意が必要です。
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Qケフィアの被害者にお金は戻りましたか?
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A
破産管財人が本社ビルなどの資産処分を進め、一部の会社では配当が実施される見込みですが、回収率は極めて低い水準にとどまっています。グループ28社のうち14社は破産費用すら不足し、破産手続き自体が廃止されました。被害総額に対する回収率は数%程度と考えられています。
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Q安愚楽牧場やジャパンライフとの共通点は?
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A
3社はいずれも「預託商法(オーナー商法)」と呼ばれる手口で共通しています。安愚楽牧場は和牛、ジャパンライフは磁気ネックレス、ケフィアは食品と、対象商品は異なりますが、「商品のオーナーになれば高利回りで買い戻す」という基本構造は同じです。いずれも被害額は1000億円を超え、高齢者が主な被害者でした。
【出典】参考URL
- ケフィア事業振興会 – Wikipedia:グループ28社の破産経緯、オーナー制度の仕組み、鏑木武弥の自殺、家宅捜索
- 東京商工リサーチ:4万人超から約2200億円を集めた、鏑木秀彌ら9名逮捕(出資法違反)
- 通販新聞ダイジェスト:負債総額1053億円、債権者3万人超、売上高4年で15倍に急膨張
- 日本経済新聞:懲役7年・罰金300万円の判決、被害弁護団の批判声明


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