- 公的機関(市役所、税務署、年金事務所など)の職員を装う
- 「医療費や保険料、税金の還付金(払い戻し)がある」などと嘘の電話をかける
- 被害者をATMに誘導し、指示通り操作させ、実際には犯人の口座へ送金させる

もっとくわしく知りたい方は続きをどうぞ!
還付金詐欺をわかりやすく
還付金詐欺とは
還付金詐欺は、公的機関の職員などを騙り、「払い過ぎた医療費や保険料、税金などが戻ってくる」という、あたかも正当な理由でお金を受け取れるかのように信じ込ませる詐欺の手法。その主な目的は、被害者に自動預け払い機(ATM)を操作させ、巧みな指示によって被害者自身の口座から犯人が用意した口座へとお金を振り込ませることにある。
この詐欺の根幹には、「公的機関からの連絡である」という信頼性と、「お金が返ってくる」という期待感を悪用する点が存在する。犯人は、被害者がお金を受け取れるものと誤信し、指示に従いやすい心理状態を作り出す。専門用語を避け、丁寧な口調で説明しつつも、「手続きには期限がある」などと焦らせることで、被害者が冷静に考える時間を与えないように仕向けるのが特徴。重要なのは、公的機関が還付金の手続きでATMの操作を指示することは絶対にない、という事実。
還付金詐欺の具体的な例
ある日、高齢のAさんの自宅の固定電話に、市役所の健康保険課職員を名乗る男から電話がかかってきた。「Aさん、先日お送りした医療費の還付金に関する緑色の封筒はご確認いただけましたか?約3万円の還付金がありまして、手続きの締め切りが本日までなのですが、まだ申請がないようです」。Aさんは封筒に心当たりがなかったが、「今日まで」という言葉に焦りを感じた。「それは大変。見落としたかもしれない」。男は、「大丈夫です。今から近くのスーパーのATMに行けば、簡単な操作で受け取れます。キャッシュカードと携帯電話を持って行ってください。着いたらこちらの番号に電話をください。提携している銀行の者が操作をご案内します」と指示した。
AさんがATMに着き、指定された番号に電話すると、今度は銀行員を名乗る男が出た。「では、還付金をお振り込みしますので、画面の指示に従ってください。まず『お振込み』ボタンを押してください」。Aさんは「還付金を受け取るのに、なぜ振込ボタンを?」と一瞬疑問に思ったが、男は「システム上、一度こちらで受け取る口座を登録する必要があるのです。次に、整理番号を入力しますので、『998255』と入力してください」と淀みなく指示を続けた。Aさんが言われるままに操作を終えると、男は「手続きは完了しました。後ほどご確認ください」と言って電話を切った。しかし、Aさんの口座から約100万円が、犯人の口座に振り込まれてしまっていたの。これは、犯人がATMの振込限度額に近い金額を「整理番号」と偽って入力させた典型的な例。
還付金詐欺が発生する手順
- 1ターゲット選定と事前調査
犯人グループは、名簿業者などから入手した情報に基づき、主に高齢者世帯をターゲットとして選定する。事前に氏名や家族構成などを把握している場合もある
- 2初期接触(電話)
市役所、税務署、年金事務所などの職員を名乗り、ターゲットの自宅固定電話に電話をかける。非常に丁寧な口調で、「医療費」「保険料」「税金」などの還付金があると伝える。時には「以前に書類(例:緑色や青色の封筒)を送ったが返信がない」などと、もっともらしい理由をつける。
- 3信頼獲得と焦燥感の醸成
正確な氏名を呼びかけたり、具体的な還付金額(例:2万3220円、3万5400円)を提示したりして、話を信じ込ませようとする。同時に、「今日が締め切り」「今すぐ手続きが必要」などと期限を強調し、冷静な判断をさせないように急かす。
- 4ATMへの誘導
「手続きはATMで簡単にできる」と説明し、携帯電話とキャッシュカードを持って、近くのATM(特に銀行窓口のないスーパーやコンビニのATMを指定することが多い)へ行くよう指示する。ATMに到着したら、指定の電話番号にかけるよう伝える。
- 5電話による操作指示
被害者がATMに着いて電話をかけると、銀行員などを名乗る別の犯人が応答し、ATMの操作方法を指示し始める。被害者には「還付金を受け取るための操作」と思わせるように、「まず『お振込み』を押してください」などと、実際には送金手続きとなる操作をさせる。
- 6送金操作の実行
振込先口座番号や、振込金額(しばしば「整理番号」「問い合わせ番号」などと偽って、ATMの限度額に近い数字を指示する)を巧みに伝え、入力させる。画面表示や操作に戸惑う被害者に対し、「エラーが出ている」「こちらで確認しながら進める」などと言って、最後まで操作を完了させる。
- 7手続き完了の偽装と発覚遅延
操作が終わると、「これで手続きは完了しました。後ほど入金を確認してください」などと言って電話を切り、被害者に送金したと気づかせないようにする。被害者はしばらくの間、還付金が振り込まれると思い込み、被害発覚が遅れることが多い。
- 8資金の引き出し
犯人グループは、被害者が振り込んだお金を、警察や金融機関が口座を凍結する前に、速やかに別の口座に移したり、「出し子」と呼ばれる役割の者が現金で引き出したりする。
還付金詐欺による事件
還付金詐欺は全国的に発生しており、特定の「有名な事件」として広く報道されるものは少ないが、各地で被害が報告されている。以下に報道された事例や、自治体が注意喚起している事例を挙げる。
- 三重県伊賀市の事例(2025年2月):60代女性宅に市役所職員を名乗る男から「保険料を払い過ぎている。3万5400円が返金される」と電話があった。女性は指示されるままショッピングセンターのATMへ行き、携帯電話で指示を受けながら操作。結果的に、指定された口座に約100万円を2回、合計約200万円を振り込んでだまし取られた。犯人はATMの振込上限額に近い金額(99万8255円)を指示していた。
- 静岡県沼津市の事例(報道日不明):沼津市在住の女性が「税金の還付金がある」という嘘の電話を受け、約190万円をだまし取られる被害に遭った。
- 奈良市の事例(2020年11月):市役所職員を名乗る男から「還付金があるので口座を教えてほしい」と電話があり、その後、金融機関職員を名乗る男から「キャッシュカードが古いので交換が必要。自宅に回収に行く」と電話を受け、訪問した犯人にキャッシュカードを渡してしまう詐欺被害が4件発生した。これは還付金詐欺を装った預貯金詐欺の手口。
- 大阪府八尾市の事例(複数):市内で保健センター職員や福祉部局職員、高齢福祉課職員などを名乗る者から、「高額療養費の還付金がある」「介護保険料の還付がある」「臨時福祉給付金が発生している」など、様々な名目での還付金詐欺(またはその予兆)電話が相次いで報告されている。いずれもATMでの手続きを指示する手口であったが、不審に思った本人や家族が市役所に確認したり、途中で止めたりしたため、未遂に終わったケースも含まれる。これらの事例は氷山の一角であり、同様の手口による被害は後を絶たない。警視庁などの警察機関も、医療費還付金名下の特殊詐欺事件として捜査を行っている。
還付金詐欺についてのよくある質問
- Q市役所や税務署から還付金のことで電話がかかってくることはあるか?
- A
原則としてない。公的機関が還付金について電話で連絡し、ATM操作を依頼することは絶対にない。還付手続きは通常、書類(通知)で行われる。
- Q「ATMで還付金を受け取れる」というのは本当か?
- A
絶対に嘘。ATMには、他人からお金を受け取る(返してもらう)機能はない。ATM操作を指示された時点で詐欺を疑うべき。
- Q怪しい電話がかかってきたらどうすればよいか?
- A
まず疑い、相手の言うことを鵜呑みにしないこと。すぐに電話を切り、一人で判断せず、家族や知人、警察(警察相談専用電話「#9110」)、または消費生活センター(消費者ホットライン「188」)に相談する。相手から教えられた電話番号にはかけ直さない。
- Q犯人に言われるがままATMを操作してしまった(お金を振り込んでしまった)場合はどうすればよいか?
- A
直ちに警察と、振込先の金融機関に連絡する。振り込め詐欺救済法に基づき、口座凍結や被害回復分配金の支払いを受けられる可能性がある。
- Q振り込んだお金は全額返ってくるのか?
- A
全額返ってくるとは限らない。犯人の口座に残っている残高が上限となり、被害者が複数いる場合は被害額に応じて分配される。残高が1000円未満の場合は対象外。
- Qネットバンキングで口座番号や暗証番号を教えてしまった場合は?
- A
直ちに金融機関に連絡し、不正利用の可能性を伝え、指示を仰ぐ。絶対に口座番号や暗証番号を電話等で教えてはならない。
還付金詐欺が生まれた歴史や背景
還付金詐欺は、「特殊詐欺」と呼ばれる類型の一つであり、特に「振り込め詐欺」から派生・進化した手口。振り込め詐欺は、2000年代初頭から「オレオレ詐欺」などが社会問題化したが、その手口は時代とともに変化してきた。
還付金詐欺がいつ頃から始まったか、明確な起源を示す資料はないが、ATMが広く普及し、多くの人が日常的に利用するようになった社会背景と関連が深いと考えられる。当初はATMでの操作を指示する手口が主流だった。犯人側は、公的機関を装うことで被害者の警戒心を解き、ATM操作に不慣れな層を狙って、「還付」という名目で送金させる手口を編み出した。
2008年6月には、振り込め詐欺被害者の救済を目的とした「振り込め詐欺救済法」(正式名称:犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)が施行された。これは、還付金詐欺を含む振り込め詐欺による被害が深刻化していたことを示唆する。
しかし、法律による救済措置や、金融機関によるATMでの携帯電話使用自粛の呼びかけ、ATMの振込限度額設定などの対策が進むにつれて、犯人側も手口を巧妙化させてきた。近年では、ATMだけでなく、インターネットバンキングを悪用する手口が増加している。これは、スマートフォンやパソコンの普及、ネットバンキング利用者の増加という社会の変化に対応した動きであり、詐欺が常に社会情勢や技術の進展に合わせて変化し続けることを示している
還付金詐欺の被害にあってしまいやすい人物や状況
統計的に、被害者の多くは高齢者であり、特に60歳以上が全体の約95%を占めるという報告もある。これは、ATMやインターネットバンキングの操作に比較的慣れていない層がターゲットにされやすいことを示唆している。また、日頃から公的機関に対して信頼を寄せている人や、一人暮らしなどで身近に相談できる相手がいない人も、犯人の言葉を信じ込みやすい傾向があるかもしれない(家族への相談を促すアドバイスが多いことから推察される)
被害にあってる状況
- 予期せぬ電話で「お金が返ってくる」という話を持ちかけられた時。
- 「今日まで」「すぐに」などと手続きを急がされた時。
- 銀行窓口ではなく、スーパーやコンビニなどのATMへ行くよう指示された時。これは、行員による声かけや詐欺の阻止を避けるため。
- 携帯電話で通話しながらATMを操作するよう指示された時。
- 犯人が被害者の氏名や家族構成など、何らかの個人情報を知っており、それによって信用してしまった時。
- 実際に何らかの還付通知を受け取った直後など、還付金に対して心当たりがあるタイミングで電話がかかってきた時
還付金詐欺の心理的な作用
- 「お金がもらえる」という期待感が、詐欺ではないかという疑いを打ち消してしまう。
- 市役所職員、銀行員といった肩書に対する信頼感から、指示に従ってしまう。
- 手続きの複雑さや、急かされることによる焦りや不安感から、冷静な判断ができなくなる。
- 指示される操作の意味がよく分からなくても、「プロが言うのだから間違いないだろう」「無知だと思われたくない」と考え、疑問を口に出せない。
- 一度ATMへ向かうなど行動を起こしてしまうと、「せっかくここまで来たのだから」と、途中で引き返しにくくなる心理(サンクコスト効果)が働く可能性がある。
これらの点を理解し、自分自身や家族が該当する可能性がないか、日頃から意識しておくことが被害防止につながる。特に高齢者を狙った犯罪であるという認識は重要であり、単なる技術的な不慣れさだけでなく、世代的な権威への信頼感や社会的孤立といった要因が悪用されている可能性も考慮に入れる必要がある。
還付金詐欺のまとめ
- 公的機関職員等を名乗る「還付金がある」「ATMやネットバンキングで手続きできる」という電話連絡は、全て詐欺。公的機関がそのような方法で還付手続きを行うことは絶対にない
- 電話で「お金」の話が出たら、どんなに巧妙な口実であっても、すぐに電話を切り、決して指示に従ってはならない。一人で判断せず、必ず家族や警察(#9110)、消費生活センター(188)に相談すること
- 万が一、指示に従ってATMやネットバンキングを操作し送金してしまった場合は、諦めずに直ちに警察と振込先の金融機関に連絡する。 振り込め詐欺救済法に基づく被害回復の可能性があるため、速やかに相談することが重要

以上、還付金詐欺についてでした!これで、還付金詐欺はあなたの知識となりましたか?
被害にあわないように対策しましょう。まだまだ足りないという方は、コメントをぜひください。お待ちしております。
コメント