- 被害総額約650億ドル、日本円で7兆円
- 首謀者のバーナード・マドフは、元NASDAQ会長
- 手口は投資家からお金を集めて実際は運用しない投資詐欺のポンジ・スキーム
投資詐欺事件は被害額が大きく、日本でも多数起きていますが、被害額の単位が兆になる事件はないのではないでしょうか。アメリカでもこれほど被害額が大きい事件はないはず。記事を書く前の調査段階で、このマドフ事件が目に入り驚きました。
事件の内容の前に、この事件のキーワードになる元ナスダック会長とポンジ・スキーム。この2つを説明します。
NASDAQは、1971年に設立された、アメリカ最大の株式市場です。代表的な上場企業には、Microsoft、Apple、Amazon、Googleがあります。そこの元会長ですから、投資に関してものすごい信頼度が高かったでしょう。日本でいえば東証の社長や会長が詐欺をしてるようなものです。
ポンジ・スキームは、新規投資家から集めた資金を既存の投資家への支払い、一定期間はまともに運用されてると信じ込ませる詐欺の手口のことです。
詐欺師は資金運用者として高利回りを約束して投資家から資金を集める。実際には投資はほとんどせずに、新規投資家からの資金で既存投資家に利益を支払う。さらに新規投資家を集めて、その資金で更に支払いを続ける。結果として、後から入った投資家の資金が前の投資家の利益に回る状態になる。
この手口は、現金がなくなり支払いができなくなれば、詐欺が発覚するため、常に新規投資家を集め続ける必要があります。イタリア生まれの詐欺師チャールズ・ポンジが20世紀初頭にこの手口を使ったことから「ポンジ・スキーム」と呼ばれるようになりました。
以上の点を踏まえ、本題に入ります。
2008年、ベルナード・マドフによる史上最大の詐欺事件が明るみに出され、金融業界に衝撃が走る。この「世界史上最大のポンジ・スキーム」と呼ばれる事件では、被害総額が7兆円にも上り、多くの人々が破産に追い込まれました。本記事では、マドフ事件の実態とその背景に迫ります。
マドフ事件の概要
マドフの投資会社は1960年に設立され、初期から高い利回りを投資家に約束。しかし、その高い利回りはまったくの嘘で、新たな投資家から集めた資金を既存の投資家に支払い、一見投資は成功しているように見えるが、実際は運用などしておらず、やっていたのはポンジ・スキームだった。2008年の金融危機で多くの投資家が一斉に出金を求めた結果、資金が底をついて支払いができずに詐欺が発覚。マドフ事件の被害総額は約650億ドル(約7兆円)に上り、世界中の多くの投資家や団体が巻き込まれる結果に。
マドフ事件の時系列
- 1960年マドフがマドフ投資顧問会社を設立
- 1980年代後半マドフがポンジスキーム詐欺を開始したと見られている
- 1990年マドフがNASDAQ取引所会長に就任
- 2000年代初頭ヘッジファンド運用を開始し、投資家から多額の資金を集める
- 2008年12月元従業員の通報でマドフ詐欺が発覚
2008年12月11日、マドフの会社の元従業員が連邦捜査当局に対して、マドフの違法行為を通報したことが、マドフ詐欺事件の発覚のきっかけとなる。当時、世界的な金融危機の影響で多くの投資家がマドフの会社から資金引き揚げを求めたが、マドフはそれに応えられずにいた。その姿を見て元従業員がマドフの手法が不正であると確信し、通報を行う。
- 2009年3月マドフが有罪を認める
- 2009年6月マドフに150年の禁固刑が言い渡される
- 2014年9月マドフの長男アンドリューがリンパ腫で死去
- 2021年4月マドフが82歳で獄中死
マドフの詐欺は長年にわたって行われており、1980年代後半から始まり、2008年の金融危機でようやく発覚したと考えられている。発覚後、有罪判決を受け、150年の刑を宣告され、マドフは獄中で最期を迎えた。
マドフ事件の手口
マドフがNASDAQの会長に就任したのは1990年だが、彼のポンジスキーム詐欺の開始時期は1980年代後半であると推測されている。その高い地位と人脈を活かし、有力者、セレブ、富裕層に投資話を持ちかける。そして初期に集まった投資家たちからの口コミと紹介で新規投資家を集め、その資金で既存投資家への支払いをする。
詐欺の規模が拡大するにつれ、より多くの投資家から資金を集める必要があったマドフは、毎年10~20%の高利回りと危険性の低い投資として宣伝をし、高利回りと安全運用のイメージ付けに成功。投資家はに富裕層や有名投資家、金融機関以外にも年金基金や慈善団体からも多額の資金を獲得した。
マドフ事件の被害者
マドフ事件の被害者数は正確には分かってないが、数万人から10万人以上に上ると推定されている。詐欺の被害にあったのは、一般の個人投資家から富裕層、ポールソン元財務長官、スピルバーグ監督、俳優のジョン・メイジャーなどの著名人。フェアフィールド・グリニッチ・グループなどヘッジファンド、金融機関。ニューヨークに本拠を置く老舗の慈善財団エルマン・カミンスキー財団など。
エルマン・カミンスキー財団はマドフ事件により約2億4500万ドルを預け、その結果ほぼすべての資産を失う被害にあい、事件後は財団の人員削減と資金売却をすることになる。
マドフ事件で最大被害額は、フェアフィールド・グリニッチ・グループの約74億ドル。事件により運用資産の半分を失い、グループに資産を預けた投資家から集団訴訟を起こされなど、グループ解体の危機にあった。
投資家以外にマドフの家族も被害者といえる。彼の家族も事件により大きな影響を受け、その中でも息子のマーク・マドフは、事件のストレスから自殺を選んだ。もう一人の息子アンドリューはリンパ腫で2014年に亡くなり、その母親ルースは社会から孤立した生活を送ることになった。
マドフの動機
NASDAQの会長にまでなったマドフの動機はなんだったのか。2つの可能性が指摘されている。
マドフが最初から詐欺の意図があったわけではなく、投資の失敗をごまかすうちに、次第にポンジスキームに走ったとする説と富と名声を求めた結果 マドフが富と名声を求め、高利回りを約束して投資家から資金を集め、その資金で贅沢な生活を送っていたとする説。
どちらにしてもマドフ自身の高価で豪華なものをものを求める生活欲やNASDAQの会長まで登りつめたプライドが、事件の主な動機だったのではないかと推測されている。
マドフ事件まとめ
- 元NASDAQ会長のバーナード・マドフが起こした被害総額約650億ドル、日本円で7兆円の世界史上最大のポンジ・スキーム
- NASDAQ会長という高い地位を利用して、個人投資家、著名人、富裕層、ファンド、金融機関、慈善団体まで元従業員が通報するまでバレなかった
- マドフの欲望のせいで、多くの人の人生が狂い、マドフの家族も大きい影響を受け、最終的にマドフは150年の刑を受け獄中死
マドフ事件からの教訓
- 過剰な利回りの約束には慎重になる マドフが約束した10~20%もの高い利回りは、あまりにも良すぎる条件で不自然です。そういった過剰な利回りを約束するものには警戒をしましょう。
- 投資先の実態をしっかり確認する マドフの詐欺が長年に渡り見抜けなかったのは、投資先の実態を確認せずに盲目的に信じ込んでいたためです。投資の実態を綿密にチェックすることが重要になります。
- 高い地位だからといって信じ込んではいけない マドフはNASDAQ会長という高い地位にあり、多くの投資家が信用していました。しかし、そういった肩書きや評判だけを鵜呑みにしてはいけません。
- 詐欺をすると被害者だけでなく、自分の家族も不幸になる マドフの詐欺により、多くの投資家が被害を受けましたが、マドフ自身の家族も深い苦しみを味わうことになりました。詐欺には必ず代償が伴います。
マドフ事件とそこからの教訓、投資へのリスク認識についてご理解いただけましたでしょうか。わからないことや疑問点があれば、ぜひコメント欄で質問してください。より適切な情報を提供できるように、記事を読んだ生の声を聞かせていただきたいです!
以上、被害総額7兆円のマドフ事件についてでした。この世界最大詐欺事件から学ぶべき点は多くあります。コメント欄にご意見ご感想、詐欺の体験談などを心よりお待ちしております!!
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